サッカーの試合時間はどう動く?アディショナルタイムはどう決まる?
時間帯別で試合が動くか説明する前に、まずはサッカーの試合時間がどのように推移するか解説する。サッカーは基本的に、前半45分後半45分からなり、間にハーフタイムが15分間設けられている。
カップ戦などで勝敗を決めなければならない場合だと、前後半それぞれ15分の延長戦も設けられる場合がある。
これら前後半の試合においては、それぞれアディショナルタイム(ロスタイム)と呼ばれる追加タイムもある。このアディショナルタイムは審判が何分にするのか決定するのだが、約3分が相場となっている。
ただし、前半のアディショナルタイムは短くなる傾向にあり、2分ほどで試合を打ち切ることも多い。
また、アディショナルタイムは試合中で起こったアクシデント(負傷、ファウル、選手間の衝突)により、多く見積もられることもある。これはアクシデントの処理で失ったプレー時間を、アディショナルタイムで取り戻すという目的があるからだ。
このような場合では相場3分だったアディショナルタイムが、約5分にまで伸びることもある。
このアディショナルタイムの増減によって、試合の行方は大きく変わることがある。そのため、観戦する際にはアディショナルタイムの分数、およびプレー中のアクシデントの有無にも注目しておきたい。
前半開始~15分!立ち上がりの展開でコンディションがわかる
まずは前半開始15分の時間帯に注目してみよう。この時間帯では、対戦するクラブの選手のコンディションをうかがい知ることができる。
ボールを持った時の選手の挙動、視線はもちろんのこと、ボールを持っていない時(オフザボール)の動きに意図が込められているかどうかも重要だ。あるいは、スピードに乗ることができているか、味方とのパス回しに参加できているかどうかも注目すべき点だろう。
立ち上がりだけに、この15分ですべてが決まるわけではなく、当然スロースターターな選手もいる。しかし、この15分には大きな意味があり、一方のクラブの選手があまりにも緩い試合の入り方をすれば、もう一方のクラブの選手がその隙を容赦なくついてくるからだ。
そして結局はその猛攻に押し切られる形で、前後半を通して負けのサッカーに終始することになる。
前半15~30分!立ち上がりから動きの変わった選手に注目せよ
前半15~30分ともなると、もうすでに得点が生まれていることもあるだろう。スロースターターだった選手でも、この時間帯の頃には調子を掴み始め動きが段々と良くなってくる時間帯だ。
負傷明けの選手の場合でも、離脱中のブランクが抜けてくる時間帯でもある。試合感、味方との連携、そして自身のプレーにリズムを取り戻し始める。
逆に言えば、この時間帯になってもパス回しに乱れがあるようだと困る。監督はキレのない選手の起用を後悔し始める時間とも言えるだろう。
ピッチ上で起こっている出来事、選手のプレー、得点や失点の数を加味し、後半に向けたプランを練り始めなくてはならない。早くもテコ入れの時間が近付いているというわけだ。
ハーフタイム!選手も監督も観戦者もおさらいする時間
ハーフタイムの15分は、選手も監督も、そして観戦している我々もおさらいをする時間だ。前半で上手くいっていたプレーや戦術、逆に上手くいかなかったことについて考えなくてはならない。
テレビなどで観戦している場合は、ハイライト映像とともに実況および解説者がその手助けをしてくれるはずだ。そのコメントを観戦する側が受け入れるもよし、「いやいや、それは違うのではないか?」とツッコミを入れるもよし。
そういった討論の場となり得る時間帯がハーフタイムだ。我々が討論を進めている間に、控室に戻った選手と監督が後半のプランを練っている。15分は我々にとっても選手や監督にとってもあっという間の時間だろう。
後半開始~30分!試合が一気に決するプレーが続出する可能性アリ
後半開始~30分の間には、試合が決まってしまうようなプレーが続出する可能性がある。ハーフタイムでプランの見直しを図り、選手の入れ替えも行われ、ピッチ全体のプレーの質が激変するからだ。
2016年のクラブワールドカップ準々決勝戦では、日本の鹿島アントラーズ(以下、アントラーズ)が勝利しているが、アントラーズが得点を決めたのは後半に入ってからのことだ。前半はアフリカ王者マメロディ・サンダウンズFCに一方的にやられる展開だったが、ハーフタイム直後から一気に状況は好転していた。
もちろん、ハーフタイムが間にあっても、前半と同じようなプランで臨む場合もある。そのような場合は前半のプレーが及第点であった場合や、下手にテコ入れすることで逆効果にならないことを防ぐためといった意図がある。
それぞれのクラブの動きを、この後半開始~30分の間で見極めたい。試合の終わりは刻一刻と近付いている。
後半終了間際!試合をひっくり返すアディショナルタイム
後半終了間際、たった数分のアディショナルタイム。この時間帯の双方のクラブの動きに注目していただきたい。
まずはその時点で負けている側のクラブから考えてみよう。負けている側のクラブは、何としても得点を奪わなくてはならない。その点数がたった1点であれば1点を返し、あわよくばもう1点を奪い、勝ち越すことを考えているだろう。
こういった状況下では、監督は攻撃的な選手を投入し、選手全員のポジションを高くとることも多い。
2014年の第92回全国高校サッカー選手権の決勝の富山第一高等学校がまさにそうだった。システムの変更、ポジションの底上げを図ることで、相手の守備に穴を開けた。
また、ドリブルやパスで少しずつゴールに迫るよりも、攻撃に人数をかけ、ロングパスを多用することにより、力づくで得点を狙うシーンも増えるだろう。
このようなダイレクトなプレーは、短い時間で多くの得点を奪い、格下でも格上をねじ伏せる可能性も出てくる。こういったケースは、フィジカルに優れる選手の多い、プレミアリーグでよくみられる。
逆に勝っている側のクラブは、無理に得点を奪う必要ない。本来攻撃的なポジションでも守備的な選手を投入することで、ピッチ全体の守備力を上げる傾向にある。
選手全員のポジションも低くとり、ゴール前で壁を築くシーンも増えてくる。このような状況を俗に「ゴール前にパスを停める」という。
ただ、勝っているからといって、得失点数が重要な試合では守りの姿勢に入ることなく、攻め切ろうとする場合も当然ある。得点が同数である場合では、クラブ同士の関係が格上か格下か、あるいはホームかアウェーかが重要になってくる。
格下やアウェーで試合をしているクラブであれば、勝ち点1も儲けものだからだ。逆に格上やホームで試合をするクラブにとっては、やはり勝ちが求められるため、攻めなくてはならないだろう。
このようにサッカーは、試合の時間帯によって状況は刻一刻と変化する。当たり前であるが、この変化を選手や監督は第一線で感じ取り、プレーや采配に活かしている。
しかし、観戦している我々にもこの変化を感じ取れないわけではない。よく試合を観察し、経過時間と照らし合わせることで選手や監督の意図が見えてくる。
そうして見えてきた意図を観戦している時の意識に落とし込むことで、もっとサッカー観戦は面白くなるだろう。