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【サッカーの影の支配者】私たちが知っておくべき代理人の5つのこと

2018 1/3 12:07dada
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1、移籍は選手本人だけが決めることではない

サッカー選手のキャリアで、必ずつきまとうのが移籍の問題だ。選手はキャリアのさらなるステップアップ、出場機会の確保や自分の好きな土地でプレーすることを求めて移籍を決断する。

しかし、その移籍に決断を下すのは選手本人だけではない。

選手にはそれぞれ「代理人」と呼ばれるスタッフが存在する。この代理人が選手の移籍先を斡旋したり、契約条件の調整等の事務的なサポートを行う。

仮に選手が移籍したいと願ったとしても、その選手の移籍先となるクラブの候補なくして移籍を検討することはできない。
そういった時に代理人がクラブに売り込みをかけたり、自身の顧客である監督のいるクラブに掛け合ったりすることがある。代理人は選手だけではなく監督も顧客に持つことがあるため、太いコネクションを持っているからだ。

だが、この代理人のコネクションは良い意味でも悪い意味でも「働いて」しまう。代理人はこのコネクションを武器にクラブを相手取り、選手の移籍金や給与のつり上げを行うといった所謂「ビジネス」を行う。クラブはクラブとしての伝統やポリシーを貫きづらくなるため、代理人の存在を嫌う傾向にある。

2、最も有名な代理人!メンデス&ライオラ

サッカー界で極めて著名な代理人が2人存在する。それがミノ・ライオラ氏(以下、敬称略)とジョルジュ・メンデス氏(以下、敬称略)だ。

ライオラはイタリア人の代理人で、イタリアにルーツを持つ選手を大勢顧客に持っている。ACミラン(以下、ミラン)で活躍したズラタン・イブラヒモヴィッチ選手、同じくミランでの将来が期待されているジャンルイージ・ドンナルンマ選手(以下、敬称略)、FCユヴェントスでブレイクしたポール・ポグバ選手もライオラの顧客だ。

代理人は多くのスター選手を顧客に持つことで、その選手たちがクラブと結ぶ契約に発生する高額の手数料を得る。その額は時として十数億円にもなる。

メンデスはポルトガル人の代理人で、やはりポルトガルにルーツを持つ選手を大勢顧客に持つ。リスボンで生まれた彼は、そのリスボンの地元クラブであるスポルティングCPの選手たちを手がけていった。クリスティアーノ・ロナウド選手はその筆頭だ。彼の他にもハメス・ロドリゲス選手やレナト・サンチェス選手、リカルド・クアレスマ選手などポルトガルのリーグに縁のあるスター選手が名を連ねる。

また、名将とされるジョゼ・モウリーニョ監督(以下、敬称略)を顧客に持っている。そのため、移籍市場が開かれればモウリーニョとメンデスの周辺は騒がしくなる。前述したように、彼らのコネクションを通じて、様々な選手の移籍が取り沙汰されるからだ。

3、ドンナルンマの移籍騒動にみるサッカーのマネー問題

2010年代前後からサッカー界では多くの金銭が動くようになった。スター選手や有望な若手の獲得に際しては、驚くほど高額の移籍金なくして獲得することは難しい。数十億円、あるいは百数十億円という金銭が動くことも珍しくはない。そして移籍金の高騰と同時に、選手自身が受け取る給与も高額となった。

ASローマで多くの時間を過ごしたフランチェスコ・トッティ氏は、「最近の選手たちは金のことばかりを考えている」と痛烈に批判。さらには「僕にとって大事なのは情熱。お金ではなくローマを愛し、ローマのユニフォーム着ていたい」とクラブを愛を語った。
だが、彼のような存在は稀有だ。高額の給与を求めて古巣を巣立つ選手は大勢いる。1つのクラブに10年以上も留まることはとても難しいが、それがサッカー界の現状だ。

ミランのドンナルンマは、10代でミランの正守護神となり一躍世界を代表するGKの1人となった。彼は2016-17シーズンのリーグ戦終了後に、契約延長の有無が大きく取り沙汰されるようになる。その騒動の裏には代理人ライオラの存在がいる。

彼らはミランを相手取って給与の大幅なアップを主張。大型の中国資本が導入されたミランであったが、それでも給与を一気に上げることは経済的に厳しい。しかし、ドンナルンマは今後10年以上は第一線で活躍するであろう逸材で、彼を必要とするクラブは大勢存在する。こういった背景をライオラはよく理解し、ミランの足元をみるような形で迫っていった。

一時、ミランはドンナルンマとの契約延長を断念したかに思えたが、2017年7月に年間8億円とされる給与で2021年6月までの新契約に合意。この契約にはジャンルイージ・ドンナルンマの兄である、アントニオ・ドンナルンマのミラン復帰も盛り込まれた。この兄は年間で約1億3000万円の給与を受け取り、弟の控えを務めることが予想される。

かくしてライオラのミランとの駆け引きは、ライオラ側の有利で終わった。

4、選手のキャリアに欠かせない代理人!得るのは名誉か金か

代理人は選手の持つクオリティや境遇を武器にとして、移籍金や給与の吊り上げの交渉をする。
ドンナルンマやその兄がミランと結んだ契約は、ミランにとっては苦渋の決断であっただろう。それでもミランの下した決断は賢明かもしれない。なぜならこの先ドンナルンマが再び移籍を決断したとしても、残りの契約期間が長ければその分だけ得られる移籍金も高額になる可能性があるからだ。ドンナルンマの慰留はクラブのクオリティを保つためだけではなく、これからの先行投資の意味合いもある。

代理人はこうしたクラブ事情をよく理解しており、選手を移籍させるにしても契約を延長させるにしても、代理人の立ち回り方次第でその金額は大きく変動する。そして、代理人はその手数料を得ることを仕事としているのだ。
そのせいでクラブやサポーターからひんしゅくを買うことも往々にしてあるが、よもや選手ひとりの力でその選手の客観的価値と状況を判断し、クラブと交渉することは難しい。選手にとって将来性を見極めた上で、クラブや選手の価値を引き上げてもらえることは、必要不可欠であるため、決して彼らの仕事を軽んじることはできない。

選手はキャリアを通じて、ステップアップによる名誉と多額の金銭を得ていく。その道のりは決して平坦ではなく、移籍も残留もタイミングを見誤れば、出場機会や選手としてのキャリアを失いかねない。選手はそういった失敗をしないためにも、代理人を盾にしてクラブとの交渉にあたる必要がある。

5、OBや顔馴染みの選手が代理人の役割を務めることもある?!

選手が移籍を考慮する際には代理人のアドバイスだけでなく、そのクラブのOBや現在進行形で所属する同胞のアドバイスを参考にすることがある。

特に自身のルーツのない他国へのリーグの移籍は、選手にとって一大決心だ。クラブの雰囲気だけでなく、その土地に馴染めるかどうかをよく考慮しなくてはならない。
そこにクラブのOBや同胞の選手が介入し、「うちは良いクラブだ。俺もいるし君もこっちに来たらどうだ?」、「大丈夫だよ。このクラブと監督には明確なビジョンがある。君もその一員にならないか?」などなど、たくみな言葉で足踏みする選手を誘っているのかもしれない。

クラブにとっては、こうしたアドバイスをしてくれる存在は心強い。彼らは時として代理人代わり、いやそれ以上の働きをすることがあるからだ。
移籍の決断理由が代理人の働きによるものなのか、それともOBや馴染みの選手のアドバイスの影響によるものなのか、いずれにせよ足踏みしていた選手が移籍を決断し、見事新天地で花開く。そんな未来が描かれることを願っている。