背番号とポジションの関係を探る
サッカーの強豪国では、選手のポジションの事を番号で表す事がある。
これは、1990年代に入るまで背番号が現在の様な固定番号制ではなく、先発の選手で1番から11番を振り分ける変動番号制だった事に由来している。今でもセンターフォワードの事を9番タイプという呼び方をする事もあるのはその名残りと言えるが、1990年代までは背番号は選手を表すものではなくポジションや役割を表すものだった。
しかし、この番号でポジションを表す方法は少し複雑である。というのも、この番号とポジションの関係が国によって異なるからだ。
これは、サッカーの進化の歴史によって起こった現象で、1800年代中盤にイングランドから世界中にサッカーという競技が伝わると、それぞれの国で独自に発展していった事の証拠でもある。
この国によって異なる番号とポジションの関係。これを各チームに落とし込むと、それぞれのチームや選手のルーツや歴史、影響を受けた国などが見えてくる。
サッカーの中心的なポジション守備的ミッドフィールダー
ボランチやピボーテなど様々な呼び名を使われる守備的ミッドフィールダーというポジション。
このポジションはチームの中心に位置することから、サッカーではとりわけ大切なポジションとも言われる。
2017年にJ1で戦う18チームは、この守備的ミッドフィールダーに何番をつけた選手を起用しているのだろう。
2017年のシーズン前半戦(第17節まで)で、各チームの守備的ミッドフィールダーとして半分以上となる9試合に先発出場した選手の背番号を調べてみる。
Football LAB(http://www.football-lab.jp)によると、センターハーフという分類で17試合以上に先発した選手は32人いる。
その中で2番から11番までの番号を付けている選手は19人。それぞれの番号に分けると
4番:2人、5番:1人、6番:4人、7番:4人、8番:4人、10番:4人
となっている。
10番を付けた守備的ミッドフィールダー
Jリーグには、北海道コンサドーレ札幌の宮澤裕樹選手、浦和レッズの柏木陽介選手、川崎フロンターレの大島僚太選手、セレッソ大阪の山口蛍選手と10番を付けた守備的ミッドフィールダーが4人いる。
ヨーロッパや南米では10番はアタッカー的なポジションをつける事がほとんどにもかかわらず、4人もいるというのはかなり特徴的なデータで、日本のサッカーを表しているのではないだろうか。
メンバーをみているとプレーメーカータイプの選手が多く、アタッカー出身の選手がほとんどだ。
日本では守備的ミッドフィールダーによるゲームメイクが重要視されているとも言えるのだが、意地悪な見方をすると、その分守備力を犠牲にしているとも言える。
世界的には数少ない7番を付ける守備的ミッドフィールダー
これもまたJリーグの特徴と言っても良いのが、7番を付ける守備的ミッドフィールダーが多いということだ。柏レイソルの大谷秀和選手、清水エスパルスの六平光成選手、ガンバ大阪の遠藤保仁選手、ヴィッセル神戸のニウトン選手の4人がそれにあたる。
世界的に7番といえば、ヨーロッパ、南米問わず右サイドのアタッカーがつける番号だ。もちろんJリーグにも鹿島アントラーズのペドロ・ジュニオール選手やアルビレックス新潟のホニ選手など世界的な7番のイメージにピッタリのスピードあるアタッカーもいるが、これだけ守備的ミッドフィールダーが多いのは珍しいだろう。
日本で7番のイメージを変えたのは中田英寿氏と遠藤保仁選手、そしてジュビロ磐田では7番を付けていた名波浩氏の3人ではないだろうか。
この3人により7番にプレーメーカータイプのイメージがつき、守備的ミッドフィールダーでありながら7番をつける選手が増えたのだろう。これは日本独自の進化と言っても良い。
6番、8番をつける守備的ミッドフィールダー
Jリーグでは多数派となる6番と8番の守備的ミッドフィールダー。この2つの番号はそれぞれルーツが異なる。
6番が守備的ミッドフィールダーを表す番号として使われているのは、スペインやフランスなどのヨーロッパ。そして8番が使われているのは主にブラジルだ。
ただ、この2つの番号に共通しているのは、どちらの国でも2人いる守備的ミッドフィールダーのうち攻撃的な選手がつける番号であるという事である。
Jリーグで6番をつける守備的ミッドフィールダーは、鹿島アントラーズの永木亮太選手、セレッソ大阪のソウザ選手、サンフレッチェ広島の青山敏弘選手、サガン鳥栖の福田晃斗選手。
8番は、FC東京の高萩洋次郎選手、アルビレックス新潟の小泉慶選手、ジュビロ磐田のムサエフ選手、ガンバ大阪の井手口陽介選手。
6番の選手で意外なのは、ブラジルサッカーが脈々と受け継がれている鹿島アントラーズの永木選手と、ブラジル人でもあるセレッソ大阪のソウザ選手。その中でも鹿島アントラーズは初代6番の本田泰人氏が守備的ミッドフィールダーだったことからの伝統、
またソウザ選手は本来8番の選手だが、セレッソ大阪では8番は特別な意味を持つ番号となっているからだろう。
4番と5番の守備的ミッドフィールダー
世界的な動向から考えると、意外と言っても良いのが4番と5番を付ける守備的ミッドフィールダー。4番は鹿島アントラーズのレオ・シルバ選手とサガン鳥栖の原川力選手の2人。5番は横浜F・マリノスの喜田拓也選手ただ1人である。
しかし4番はスペイン、イタリア、イングランド、フランス、オランダなどのヨーロッパの多くの地域で、5番はブラジル、アルゼンチンなどの南米の多くの地域で守備的ミッドフィールダーがつけるポジションとして認められる番号である。そしてこのどちらの地域でもポジション・役割を番号で表現することが、特に多いポジションでもある。
ただ、共通しているのはこのどちらの地域でも2人いる守備的ミッドフィールダーの中で、より守備的な役割を担う選手がつける番号であるという事だろう。
これは守備的ミッドフィールダーの攻撃的な役割を担う選手がつける6番や8番とは対象的な結果だと言える。
ここから考えられるのは、日本では本来攻撃的な選手だった10番や7番を付ける選手が守備的ミッドフィールダーへとポジションを移した事で、本来4番や5番をつける守備力に定評がある守備的ミッドフィールダーがはじき出された、という事が起こっているのかもしれない。