AC長野パルセイロの女子チーム
専門学校を中心に幅広く運営する大原学園系列の専門学校の1つ、大原スポーツ公務員専門学校サッカー専攻科女子サッカーコースの生徒や職員を中心としたチーム、大原学園JaSRA女子サッカークラブを2000年に設立。2003年からは日本女子サッカーリーグで戦っていたが、そのチームが2009年に当時北信越リーグで戦っていたAC長野パルセイロの女子チームとして移管。AC長野パルセイロ・レディースとなり、女子サッカーリーグの2部にあたるチャレンジリーグで戦うことになる。
しかし、当初は下位を争うことが多く、なんとか残留を果たしたものの、2010年、2012年と入れ替え戦で残留を決めるという厳しい結果が続いていた。
転機となった本田美登里監督の招聘
クラブの転機となったのは、2013年に監督として本田美登里さんを招聘したことだった。
本田美登里さんは日本女子サッカーのパイオニアとも言える人物で、日本代表経験はもちろん、指導者としても岡山湯郷Belleの監督として宮間あや選手を育て、ユニバーシアード代表監督として近賀ゆかり選手、川澄奈穂美選手らを擁するチームを指揮して銀メダルを獲得。さらに女性指導者として初となる、Jリーグの監督にも就任できるS級ライセンスを獲得。2012年にはヤングなでしことして一躍有名になったU-20女子日本代表のコーチとして、U-20女子ワールドカップ3位に貢献。
数々の名選手を育ててきた日本女子サッカーを代表する女性指導者を招聘したことで、チーム力が一気に向上し、3年目の2015年には開幕から圧倒的な強さで1部昇格を達成する。
日テレ・ベレーザとINAC神戸の2強に割って入ることができるか
AC長野パルセイロ・レディースは2016年、昇格チームとしては最高順位となる3位を達成する。その原動力となったのは本田監督が作り上げた、躍動感のある攻撃的なサッカー。
日本の女子サッカーチームとしては異例と言ってもよいほどの展開の速さを武器に、相手ゴール前まで一気に迫りゴールを奪う攻撃は迫力抜群。その分失点も多くなっているが、打ち合いを制する強さを持っている。
なでしこリーグはここ数年豊富なタレントを誇る日テレ・ベレーザとINAC神戸レオネッサの2強が凌ぎを削っているが、そこに割って入る可能性が最も高いのがAC長野パルセイロ・レディース。
攻撃サッカーをベースに、なでしこリーグの勢力図を変えてしまう可能性は十分ある。
ヤングなでしこからなでしこジャパンへと成長を遂げた横山久美選手
チームのエースは、なでしこジャパンにも選ばれている横山久美選手。ヤングなでしこの一員として2012年U-20女子ワールドカップで得点ランキング2位に輝いた逸材で、当時のメンバーからなでしこジャパン定着を果たした数少ない選手の1人だ。
しかし、彼女も当時のその他のメンバー同様、U-20女子ワールドカップ終了後すぐに活躍ができたわけではない。大会後、岡山湯郷Belleに加入した横山選手は、1年目は1得点、2年目は2得点と苦しんでいた。ブレイクを果たしたのは3年目の2014年にAC長野パルセイロ・レディースに移籍してから。
ヤングなでしこのコーチだった本田監督の下で、加入初年度は2部リーグとはいえ21試合30得点という爆発的な得点力を見せると、2年目にはそのペースをさらに上回る35得点を記録し、完全にチームのエースに。昨季も1部で得点ランキング2位となる16得点を挙げている。
攻撃的なサッカーでリーグ1位の集客数を記録
展開が速くダイナミックな攻撃サッカーは、観客数にも現れている。
AC長野パルセイロ・レディースの本拠地は、AC長野パルセイロと同じ長野Uスタジアムだ。トラックがなく、観客席とピッチが非常に近い臨場感あふれる球技専用スタジアムという恵まれた環境ではあるが、これまで5年連続観客数トップだったINAC神戸を上回る平均観客数3647人は素晴らしい記録だ。
強豪INAC神戸を相手に逆転で勝利した第8節には、6733人もの観客数を集め、スタジアムは大興奮に包まれた。
まとめ
魅力的なサッカーのスタイルがあり、若手スター選手が躍動、そしてスタジアムに集まるサポーターと、最もなでしこリーグで可能性が溢れるAC長野パルセイロ・レディース。
その魅力的なチームに、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。