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イタリア、ジョージアとのテストマッチ3連戦に勝ち越したラグビー日本代表の実力は?

2018 6/28 13:00藤井一
ラグビーボール,ⒸShutterstock.com
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それはほんとうに評価に値する結果なのだろうか

6月の9、16、23日に行われたイタリア代表、ジョージア代表とのテストマッチ3連戦を2勝1敗と勝ち越したラグビー日本代表。3戦目は「スクラム世界最強」とも言われるジョージアを28-0と完封したことで、概ね高い評価をされているようだが、この日程が決まったとき、多くのラグビー関係者は「3連勝」を目標どころかマストと語っていた。

加えて、3戦とも戦う前から「高温多湿でスタミナを消耗する後半半ば過ぎからは日本有利」と喧伝されていたし、実際、そうだった。しかし、来年のワールドカップで対戦することが確定しているアイルランドやスコットランドはイタリア、ジョージアより格上。後半バテる可能性に期待するのは難しい。

厳しい言葉になるが、スタミナを消耗した相手からいくらトライを獲ったところで、少なくともワールドカップ本番のシミュレーションにはならない。

イタリアとの2戦目は点差以上の完敗

1戦目、日本のリズム感溢れるアタックに翻弄され34-17で敗れたイタリアはランキングでは日本より下でも、ラグビー界では最高峰のティア1に属している。案の定、2戦目は面子をかけて必勝の覚悟で挑んできた。

日本は前半、一方的に攻められ、後半半ばからなんとか追い上げたが、17-19と2点差に迫った時点で、まだ十分に時間がありながら自陣で反則を繰り返した。その都度PGを決められ17-25と、1トライ1ゴールで追いつける7点以上に差を広げられてしまい、ノーサイド直前に1トライを返しての22-25での敗戦である。これは惜敗ではなく、勝てる可能性をみすみす逃した「スコア以上の日本の完敗」だ。

イタリア2戦目の敗戦後、日本代表のジェイミー・ジョセフHCは「来週のジョージア戦が大事になる」と語った。ワールドカップ前年のテストマッチで大事でない試合などないからこれに異論を唱えるつもりはない。

だが、高温多湿の気候に小さい頃から慣れているホームの日本と、生まれて初めてかもしれない気象条件で戦う選手のいるアウェーのイタリア。日本が有利なのは明らかだ。

悪条件の中でもまなじりを決して挑んでくるティア1の国を返り討ちにできるかどうか。イタリアとの2戦目こそが、来年のワールドカップを考えたらこの3連戦で最も大事だったのだ。

もちろん、収穫もあった

ただ、この3連戦での最大の収穫は、おそらく日本代表キャプテンのリーチ マイケルを始めとする「南アフリカを破った2015年W杯戦士」がチーム状態を理解していたことだ。ジョージア戦の前、リーチが積極的に選手同士でミーティングを行って意思統一を図り、ジョージア戦で80分間強固なディフェンスを続けた点はすばらしいし、それでチームとしての自信を深めたのも大きい。

だが、残念なのはサッカーワールドカップ日本代表が下馬評を覆す活躍を見せている影響か、必要以上の「日本ラグビー強いぞ!キャンペーン」を報道する側に感じることである。

ジョージアは直前の2週間、南国フィジーに遠征してトンガ、フィジーとの過酷なテストマッチ2連戦を戦ってから来日し、しかも前週、フィジーに17-35と一蹴され、心身ともに激しく消耗していた。

さらに追い打ちをかけるように来日後、大阪北部地震の影響で新幹線に長時間閉じ込められるなどコンディションはお世辞にもいいとはいえなかったのだが、それらの事実は一部を除いてほとんど報道されていない。

ジョージアの動きは前週対戦したイタリアより鈍いと感じられたし、もともとBKに決め手があるわけでもないが、FW周辺の単調なアタックに終始した。かつて日本を苦しめた本物のジョージアではなかったのである。

それでも勝負どころの大事なスクラムでは日本にプレッシャーをかけ反則を誘うなど、巧みなところを見せていたが、それもあまり報道されていない。「世界一といわれるジョージアのスクラムとほぼ互角に戦った」などの賛辞ばかりだ。無論、戦った日本代表の選手たちは真実をわかっているだろうが……。

この3連戦のもう一つの収穫は、ジョセフがHC就任以来キックにこだわって、いたずらにピンチを作ってきた戦い方に変化が見られたことだ。1戦目のイタリア戦に比べジョージア戦は無駄なキックが随分減っている。ジョセフHCから選手たちがいい意味で脱却しつつあるのかもしれない。

そんな状況の中、ジョセフHCが腰の手術のため、日本代表と兼務しているサンウルブズのHCを離脱、その間トニー・ブラウン氏がHC代行を務めることになった。ブラウンHC代行は選手時代にパナソニックをトップリーグで常に優勝を争うチームにまで押し上げた実績を持つ。

サンウルブズは今季残り3試合。ワールドカップまでの時間は限られている。秋のニュージーランド代表戦に向け、日本代表強化という意味で、ブラウンHC代行はどんな采配をするのか。今週末からの3試合も注視したい。