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「Best Bout Machine VS. 名勝負製造機」石井智弘、初のIWGP王座なるか

2018 9/15 07:00SPAIA編集部
プロレスリング,ⒸShutterstock.com
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意地を見せられるか ケニー・オメガのベルトに挑む無骨レスラー

新日本プロレスでは、世界各国から優秀なレスラーが集まっている。世界で名を馳せている猛者達は、日本人レスラーよりも歓声を浴びることが少なくない。IWGPヘビー級王者として君臨するケニー・オメガもその一人だ。

現在行われている新日本プロレスのPPV「DESTRUCTION」で、そのケニーのベルトに挑もうとする一人の日本人レスラーがいる。

G1クライマックスで、ケニーから3カウントを取った男。石井智宏だ。

華やかなプロレスが主流となっている中、シンプルかつ荒々しい、そしてゴツゴツとした豪快なファイトスタイルで戦う石井。その姿から「昭和プロレスの生き残り」ともいえる逸材である。

9月15日。広島サンプラザホールにて行われるこの試合について、注目すべき点をあげながら、石井智弘の凄さを伝えたい。

「ピットブル(闘犬)」の名を持つ男・石井智弘

闘犬のことを「ピットブル」と呼ぶ。「ストーンピットブル」という異名を持つ石井は、まさに戦うために生まれてきたと言っても過言ではない。天龍源一郎や長州力を師と仰ぎ、ファイトスタイルからも両選手の血をしっかりと受け継いでいるのがわかる。強面であり決して華やかとは言えないファイトスタイルだが、真っ向勝負で対戦相手と戦う姿は実に男らしい。

G1などの大きな大会でも優勝などの経歴は無いものの、強烈な爪痕を残してきた。昨年度のG1クライマックス27では人気の絶頂にいる内藤哲也を下し、今年度はさらにケニー・オメガを破っている。ここぞという時に力を発揮し真正面から敵に立ち向かう姿に、ファンは魅了されている。

ところが新日本プロレスでのタイトル歴は乏しく、IWGPヘビー級王座に挑戦するのも2016年の内藤哲也戦が初めてで、今回は2回目である。実力がありながらも挑戦する機会に恵まれなかった理由は、彼の「身長」にある。

「あと10㎝あれば…」と言われ続けた屈辱を晴らす時

プロレスラーにとって重要な要素である身長。新日本プロレスに所属するヘビー級選手の身長はおよそ180㎝以上が主流だが、石井は170㎝とかなり小柄だ。「あと10㎝身長があれば」と石井自身、何度も言われたという。

かつてのように、ただ身体を大きくするのではなく余計な肉を落とし、筋骨隆々な身体で戦うレスラーが多い現在のプロレス界。だが、石井の信念はそこにはなく、身長が低いからこそウェイトをしっかりとつけ、真っ向から立ち向かうスタイルを信じ貫き戦い続けてきた。今のプロレスには珍しくどこか昭和を感じさせるような彼の戦い方だが、決して古臭いものではない。実際に石井はどの選手と戦ってもうまく試合を運び、数々の名勝負を築き上げてきた。

「凄さ」よりも「強さ」を見せ、身長というハンディを克服してきた彼だからこそ、今回IWGPヘビー級に挑戦する機会を得ることができたのだろう。

Best Bout Machine VS. 名勝負製造機

プロレスを見たことがない人間でも、すぐに理解できるほど華やかなケニー・オメガ。入場からの佇まい、技のチョイスや完成度、一気にプロレスファンを獲得できるほどの十分な魅力がケニーにはある。

それに比べ一見地味に映る石井のファイトスタイルだが、これには他の追随を許さない魅力がある。オーソドックスな技でも使用する人間の技量ひとつで観客を沸かせることができる。それをを教えてくれたのは、間違いなく石井なのだ。

ケニーには「Best Bout Machine」という異名がある。数々の名勝負を繰り広げてきたケニーだからこその異名だ。一方、石井も多くのレスラーと熱戦を繰り広げ、名勝負を築き上げてきた。

「現代プロレスの先駆者 VS. 昭和プロレスの生き残り」もしくは「Best Bout Machine VS. 名勝負製造機」ともいえるこの試合。見どころは「ケニーがチャンピオンの威厳を見せるのか」「石井が貫いてきた信念と意地を見せるのか」といったところだろうか。