新型コロナ感染拡大で判断期限は5月?
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京五輪・パラリンピックの開催を危ぶむ声が広がっている。海外メディアによると、国際オリンピック委員会(IOC)の最古参、ディック・パウンド委員から開催の是非を問う判断期限は5月がリミットとの意見も出ているが、これまで感染症など疫病蔓延が理由で大会が中止となった例はない。
5月に行われるロンドン市長選の主要候補が2012年五輪を開催したロンドンで代替開催の準備があると訴える中、開催地変更は準備が短く、分散開催も現実的には難しい。数カ月延期するとしても米プロフットボールNFLや米プロバスケットボールNBAのシーズンと重なるため、巨額の放映権料を支払う北米のテレビ局が大きな壁になるのは目に見えている。
過去に開催中止となった「幻の五輪」はどれぐらいあるのだろうか―。
日中戦争拡大で1940年東京、札幌五輪が幻に
日本では過去の五輪招致初挑戦で実施が決まった1940年東京大会が「幻」に終わった。当時は夏冬両五輪の一国開催が可能で札幌での冬季大会も内定したが、1937年7月に勃発した日中戦争が拡大した影響で返上に追い込まれ、代替地も決まらなかった。
講道館柔道の創始者で初の日本人IOC委員だった嘉納治五郎も推進役として招致に尽力したが、アジア初の東京五輪は1964年大会まで持ち越しとなった。
ベルリン、ロンドンは世界大戦で中止
1916年、ベルリン(ドイツ)で開催予定だった第6回大会は第1次世界大戦のため中止。1944年ロンドン大会は第2次世界大戦で中止に追い込まれたが、4年後にロンドンで開かれている。
新型コロナと過去の戦争を比較はできないが、世界反ドーピング機関(WADA)の元委員長でロシア陸上界の組織的なドーピング問題を調査した責任者でもあったパウンド氏は「私たちが直面している新しい戦争」とも表現している。
今後世界的に感染が拡大して事態の収拾が遅れ、国際公約だった「安心、安全な東京五輪」が確約できないとなれば、中止の判断を検討することも視野に入ってくるだろう。
異例の1年延期案もアスリートには酷
最悪のシナリオを考えると延期や代替開催が厳しいとすれば、開催時期を変えずに「1年延期」というのが現実的な選択肢との意見もある。7、8月の開催時期はIOCも求めており、米テレビ局の意向にも沿う。巨額の資金を投入した競技会場もそのまま使える利点もある。ただこの1年に全てを懸けてきたアスリートから見れば、それも非現実的な判断だろう。
大会エンブレムの盗用騒動、白紙撤回となった国立競技場のデザイン、マラソンと競歩の札幌移転…。トラブル続きの東京五輪は新型コロナウイルスでどうなるのか-。まさに世界中がその動向を注視している。
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