東京五輪中止は否定、リオ五輪はジカ熱で辞退続出
肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大が猛威を振るう中、国際スポーツ界でも発生源の中国を中心に大会中止や延期が相次いでいる。
開幕まで約半年に迫った東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は2月14日に「中止や延期はない」と予定通り大会を開催する方針を強調し、国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ調整委員長も「日本の衛生当局を信頼している」と開催に自信を示した。日本政府も国内での感染拡大防止に向けた対策を強化し、影響を最小限に食い止めようと懸命だが、この段階で懸念される課題の一つはトップ選手参加辞退の連鎖だろう。
2016年リオデジャネイロ五輪では中南米で感染が拡大したジカ熱への懸念を理由にトップ選手の辞退が相次いだ。ジカ熱は蚊を介して拡大し、妊娠中に感染すると胎児が小頭症になる危険性があると指摘され、112年ぶりに復活したゴルフでは男子で当時世界1位のジェーソン・デー(オーストラリア)や2位のダスティン・ジョンソン(米国)、3位のジョーダン・スピース(米国)、4位のロリー・マキロイ(英国)らトップ4人が「健康上のリスク」を理由に辞退する異例の事態に。日本の松山英樹も不参加を表明した。
テニスにも波及し、当時世界7位のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)や女子で世界5位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)らが辞退。今回も収束までの時期が想定以上に長引くと、こうした動きが広がりかねない事態に直面している。
国内最大の東京マラソンは一般参加中止に
3月1日に開かれる国内最大の東京マラソンは新型肺炎の拡大で約3万8000人がエントリーしていた一般参加者の出場を全面的に取りやめ、車いすの部を含めて招待選手らエリートランナーのみで争う異例の緊急措置に追われた。感染の広がりが深刻となり、出場資格を持つ中国在住者に対しては既に来年の出場権を与えて参加自粛を呼び掛けていたが、それだけでは収まらなくなった形だ。
レースは残り1枠の東京五輪男子代表の選考会を兼ねており、日本記録保持者の大迫傑(ナイキ)や前日本記録保持者の設楽悠太(ホンダ)らが出場予定。しかし大規模イベントの規模縮小の流れが他の大会にも波及する危機感が漂う。
「無観客試合」否定、聖火リレーやテスト大会も
新型ウイルスの感染拡大は選手だけでなく、観客にも影響を及ぼす。五輪やパラのチケット売れ行きは絶好調だが、さらに拡大すれば「無観客試合」を不安視する声も関係者の間で上がっている。しかし組織委の森会長は現時点で「無観客試合」の可能性を否定した。
IOCは世界保健機関(WHO)と緊密に連携して情報を共有し、情報発信に努める構えだ。準備状況を監督するコーツ調整委員長は「入国の可否は日本当局のルールで判断される」と指摘し、中国選手は多くが国外を拠点にしていることを踏まえて直接来日するのは問題ないとの見方も示したが、事態は刻々と変化しており、先行きは不透明と言わざるを得ない。
宮内庁は皇居で2月23日に行う予定だった天皇誕生日の一般参賀も中止を発表し、人気グループの嵐が今春に開催予定だった中国・北京公演も中止となった。
五輪開幕は7月24日とまだ時間もあるが、3月26日から聖火リレーの国内リレーが福島県からスタート。五輪運営をチェックするテスト大会や代表選考会を兼ねた大会も数多く予定され、選手が安全な形で大会準備を進めるために難題が次々とのしかかる。
自粛ムードが国内全体に広がると、リオ五輪と同様に海外トップ選手の辞退を誘発する可能性も出てくる。適切な情報発信を含めて感染防止対策に細心の注意が必要となりそうだ。
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