「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

高知スポーツツーリズムの新たな可能性

2019 4/5 15:00藤本 倫史
ラフティング,Shutterstock.com
このエントリーをはてなブックマークに追加

おもてなし課からのスポーツツーリズム

先日、高知へ行き、スポーツツーリズムについて可能性を感じたので、今回は高知県について述べたい。

高知県はご存知のように、四国の南部に位置している。新幹線は通っておらず、本州に面していないため、アクセスには非常に難がある。ゆえに観光には向いていないとされてきた。

ただ、情報化が進む中で、逆に何もないことや不便な事に価値がつき、ありきたりの観光では満足できないディープな層に注目されている。映画化もされた有川浩原作の「県庁おもてなし課」の舞台は高知県。この小説は何もないと思われた地域を広大な自然を活かして活性化させる一大プロジェクトを成し遂げるというものだ。

劇中ではリゾート計画だったが、実際の高知県庁ではこちらはスポーツとグリーンツーリズムを組み合わせた面白い取り組みを行っている。

スポーツ×グリーンツーリズムは地域を変える?

高知県は自然を活かしたスポーツ・グリーンツーリズムを全面的に押し出している。高知駅を訪ねるとまず目に入ってきたのが、「リョーマの休日」というポスターである。2019年2月1日~2020年12月31日までの高知県をあげた自然体験の一大キャンペーンで「すべての人に、特別な時間が待っている。 さあ、高知でパワーチャージ!」をコンセプトに推進している。

海外でも人気のあるシーカヤックやSUP、ラフティングはもちろんのこと、マラソンやトライアスロンなどの大会に、地域のグルメや文化体験も組み合わせて付加価値を高めている。

高知県は県庁の文化生活スポーツ部の中にスポーツ課スポーツツーリズム担当をおいており、複数部署にまたがる取り組みで新たな観光産業を掘り起こそうとしている。

黒潮町の取り組み

そんな中で、スポーツキャンプ誘致に力を入れる幡多郡黒潮町という町がある。スポーツキャンプというとプロ野球やJリーグチームのイメージが強いが、黒潮町が積極的に呼び込んでいるのはアマチュアスポーツチームだ。

この町内には土佐西南大規模公園があり、運動利用を主目的としたスポーツゾーンが整備されている。天然芝、人工芝のサッカー場や、野球場、陸上競技場、テニスコート、体育館、パークゴルフ場などが充実し、その施設が徒歩5分圏内にまとまり、黒潮町自慢の4kmに渡る「入野の浜」もスポーツゾーン内。気軽に「砂浜トレーニング」が行えることも売りにしている。

黒潮町はスポーツツーリズムとグリーンツーリズムを組み合わせ、ただの合宿地ではなく観光地としても楽しめる工夫をしている。本格的に取り組み始めた2011年から、観光収入は40倍増の約3,000万円になるなど大きな経済効果が得られた。 高知県も県全体のスポーツツーリズム推進のため、年間を通じて切れ目のないイベントやコンテンツの充実を図っており、黒潮町と土佐湾をはさんで対岸に位置する室戸市でもスポーツ施設の整備が行われ、同様の取り組みが進められている。

県のビジョンを達成するには、プロジェクトの体系化や施設、サービスの充実など課題は多くある。ただ、日本中でインバウンドの取り込みが叫ばれる中、都市にはない広大な自然とスポーツの組み合わせは大きな魅力だ。ないものを欲しがるのではなく、あるもので勝負する地域活性化の王道を行く高知県独自のスポーツツーリズムを今後も注視していきたい。