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【スポーツ×地域】第1回 スポーツの未来を明るくするためには?①

2018 12/14 15:00藤本倫史
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土壌が整っていないスポーツビジネス産業界

今回より最終章に入っていきたい。

スポーツビジネスを様々な角度から見ることで、『スポーツビジネスを活性化するには、地域を活性化することが重要』ということが導き出された。そもそも地域活性化の定義自体、人それぞれ違うものだし、異論を唱える人もいるだろう。

現在、日本最大の課題は少子高齢化社会における経済や、社会の低迷である。特に地方都市ではそれが顕著になっている。都市圏にヒト・モノ・カネが集中し、反対に地方ではその3つが流出している。

また、プロスポーツ界も岐路に立っている。クローズドリーグで12球団から増やすことができないプロ野球に対して、J1~J3までオープンリーグであり53クラブもあるJリーグと、拡大路線を取り過ぎるあまりリーグ運営やクラブ経営が上手くいっていない。そして、2016年にプロバスケットボールリーグとして誕生したBリーグも昨年度と比べ、微減であるが観客動員数が減っている。

その他にも卓球のTリーグが誕生するなど、今後は個人競技であるテニスやゴルフ以外にもプロアスリートが増えていくと見込まれている。このような現状で問題なのは、プロスポーツ産業を受けいれるための土壌が整っていないことではないだろうか。

アルビレックス新潟の事例

2020年東京オリンピックを目指してプロスポーツ産業は盛り上がり、競技に集中するため選手たちはプロの道へ進む。現在は、国も民間企業のスポンサーらもサポートをしてくれているが、東京オリンピック以降もそれが続くのかと言えば疑問だ。

やはり、チームやアスリートをサポートし続けるためのシステム『継続力』が必要なのではないだろうか。継続力に必要なのが、地方都市の資源を活用したシステム作りである。それを組織で実現しようとしているのが、新潟県にあるアルビレックス新潟の総合型スポーツクラブの運営だ。

アルビレックスと言えばJリーグのアルビレックス新潟が有名だが、他にもなでしこリーグアルビレックス新潟レディースや、海外サッカーリーグに所属するクラブも保有している。シンガポールのSリーグにアルビレックス新潟シンガポール、スペインのカタルーニャ州サッカーリーグにアルビレックス新潟バルセロナと日本のリーグ所属も合わせれば、計4つのプロサッカークラブを運営していることになる。

バスケットボール関連では、Bリーグに所属する新潟アルビレックスBB(新潟アルビレックス バスケットボール)、女子のWリーグ新潟アルビレックスBBラビッツを運営。また、プロ野球にも参入しており、独立リーグである「ベースボール・チャレンジ・リーグ」(BCリーグ)に「新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」も所属している。

主に、このプロスポーツチームの応援サポートを行っているアルビレックスチアリーダーズも、独立組織として積極的にチアリーディングスクールの事業運営を行っている。

地方都市のスポーツ文化形成

スキー・スノーボードの競技者によるチーム「チームアルビレックス新潟」には、冬季オリンピックで活躍した藤森由香などが所属しており、個人競技も支援している。また、スーパーFJに参戦するモータースポーツチーム「アルビレックスレーシングチーム」もある。

このように単一種目に限った運営ではなく、多種目多世代型で総合型としてスポーツクラブを運営している事例は海外、特にヨーロッパで見られるが、国内には無い。確実に、新潟でスポーツ文化が根付き始めているといえる。

アルビレックス新潟の創始者である池田弘氏は、NSGグループという学校法人グループを経営し、スポーツの不毛地と言われた新潟に新しいイノベーションを起こした。このプロセスは著書などに多く書かれているので今回は割愛するが、大切なのは一過性ではなく、長期にわたって地域がいかにスポーツと向き合っていくことができるかということだ。

まだまだ横のつながりが残る新潟。アルビレックスは、無料券をつけた回覧板を回すことで、サッカーに関心が薄かった高齢者層へアピールした。地道な戦略を立てることで、スタジアムに足を運んでもらうことに成功した。現在はJ2に降格し苦しい立場であるが、根強いサポーターが支えている。本気で戦略を立てて、取り組めば、不利な要素があっても克服ができる。

次回は、その部分をふまえて、アルビレックス新潟の特長あるクラブ運営を見ていく。

《ライタープロフィール》 藤本 倫史(ふじもと・のりふみ) 福山大学 経済学部 経済学科 講師。広島国際学院大学大学院現代社会学研究科博士前期課程修了。大学院修了後、スポーツマネジメント会社を経て、プランナーとして独立。2013年にNPO法人スポーツコミュニティ広島を設立。現在はプロスポーツクラブの経営やスポーツとまちづくりについて研究を行う。著書として『我らがカープは優勝できる!?』(南々社)など。