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無敗同士の一騎打ち!那須川VS堀口 日本最強はどちらか

2018 9/29 15:00鈴木善勝
さいたまスーパーアリーナ,ⒸShutterstock.com
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日本最強を決める戦い 那須川天心VS堀口恭司

1990年代後半~2000年代前半。K-1やPRIDEといった格闘技が大いに盛り上がっていた時代だ。空前の格闘技ブーム。大晦日の番組は紅白歌合戦と格闘技が人気を二分、多くの有名選手達の勇姿に誰もが酔いしれた。だが、いつしかその熱気はすっかりなくなり、格闘技はお茶の間から姿を消した。

2018年、いま格闘技ブームに再燃の兆しが見える。

その先駆けとなるべく日本格闘技界の天才同士の対戦が実現した。戦いの舞台は9月30日さいたまスーパーアリーナで行われる総合格闘技イベント「RIZIN.13」だ。

“キックボクシング史上最高の天才” 那須川天心

“史上最強のMade In Japan” 堀口恭司

このマッチメイクに、格闘技ファンは大いに名勝負の期待を膨らませている。間違いなく「日本最強を決める」戦いとなるこの試合の見どころを、二人のバックグラウンドとともに伝えていきたい。

「キックボクシング無敗」「MMA無敗」の男 神童・那須川天心

キックボクシングが生んだスーパースター・那須川天心。現在の日本格闘技界を賑わしている張本人。格闘技を知らない者でも、彼の存在を知る者は多いのではないだろうか。

16歳でRISEとBLADE王座、17歳でISKA世界王座を獲得。18歳でムエタイ二大殿堂ルンピニー・スタジアム現役王者に1ラウンドKO勝ち、19歳で2階級上のムエタイ王者に勝利した実績を持つ。

キックボクシングがバックボーンの那須川は、プロ転向後キックのリングで負けたことが一度もない。そして、MMA(総合格闘技)の試合でも無敗を誇り、RIZINに参戦してから勝ち星をほしいままにしてきた。立ち技でも、グラウンドでも、彼は負けていないのだ。

現在20歳。この若さで日本の格闘家はおろか、海外の格闘家をもってしても彼には歯が立たないのである。まさに「神童」。日本格闘技界でトップスターに躍り出た彼は、これからの格闘技界の未来そのものだ。

彼を止める者は誰か?

名乗りをあげたのが、RIZIN参戦時から「無敗」を誇るMMAファイター、堀口恭司だ。

さすらいの”KARATE KID“ 堀口恭司

世界最高峰の格闘技団体「UFC」に参戦し、数々のファイター達としのぎを削ってきた堀口。舞台を日本のRIZINに移してからも、その快進撃は恐ろしい物がある。まるで、水を得た魚のように、RIZIN参戦後の全試合で勝利を手にしている。

現在27歳。海を渡って数々の試合をこなしてきた”メジャーリーガー”は、ターゲットを神童に定めた。

今回の試合は、那須川のバックボーンであるキックボクシングルールで行われる。堀口としては不利となるルールだが、本人はおかまいなし。「相手の土俵で叩き潰す」「言い訳を作らせないで勝つ」「ジャンル(キックボクシング)ごとぶっ壊す」と、彼の発言からも自信がうかがえる。

堀口はMMAを始める以前に、幼い頃から伝統派空手の稽古を積んでおり、試合中もその技術が光る。伝統空手独特の遠い間合いからの突きは、驚異的なリーチを誇る、堀口の得意技だ。まさに、居合のように放つパンチは、一瞬で相手をリングに沈める。

たとえキックボクシングルールであっても、彼の間合いで勝負ができるならば、神童と謳われる那須川も歯が立たないかもしれない。

最強同士の戦い。予測できぬ一戦

「努力する者が、楽しむ者に勝てるワケがない」
(知之者不如好之者、好之者不如樂之者『論語・雍也第六』)

まさに今回戦う二人にふさわしい言葉だ。リング上で、対戦相手を目の前にすることの恐怖は、我々には計り知れない。その恐怖の中、那須川と堀口は、まるで遊んでいるかのように戦う。

那須川は、毎回の試合で「必殺技」を引っ提げてくる。今回も「新必殺技」を開発してきたと言う。バックスピンキックや真空飛び膝蹴りなどを、口だけでなく実際に決め勝利を収める。そんな那須川だからこそ、今度はどんな技を繰り出すのかと期待が高まる。

一方、堀口はアメリカで念入りに練習を重ねている。那須川の得意とする蹴りへの対策をアメリカントップチーム(堀口の所属する総合格闘技チーム)のコーチ陣が付きっきりで指導している。だが、キックボクシングで戦うことはせず、あくまでMMAを貫く姿勢を堀口はとっている。

脅威のKO率を誇り、新必殺技を引っ提げた那須川か。経験豊富で、独自のMMAでの戦い方を貫く堀口か。

結果は誰も想像できない。だが、楽しむようにリングに立つ二人の戦いが、格闘技界の歴史を作る一戦となることは間違いない。

師匠・KIDに勝利を捧げられるか

14年前、K-1 PREMIUM 2004 Dynamite!!で行われた一戦、魔裟斗vs山本“KID”徳郁は、多くの人々に感動と興奮を与えた。空前の格闘技ブームが巻き起こる中で、堀口はKIDに憧れ、KIDが主宰する総合格闘技ジム「KRAZY BEE」に入り、MMAの世界に飛び込んだ。

先日、師匠であるKIDは癌により、この世を去った。

この試合は、単純に強者同士の戦いとして楽しむことができる。しかし、これまでの格闘技史やお互いが築き上げてきたものを紐解くと、決して見逃してはいけない一戦である。

キックボクシングで名を馳せた魔裟斗とMMAで世界を渡ったKID。那須川VS堀口は、かつての両者の試合を彷彿とさせる。

那須川がキックボクシングの強さを見せつけるのか、堀口が師匠KIDに勝利を捧げるのか。

9月30日。14年の時を経て、あの感動と興奮がさいたまスーパーアリーナでよみがえる。