チャンピオン争いはマルケス独走も接近戦増えた2019年
2019年はとにかくマルク・マルケスが強かった。MotoGPクラスで6度目のチャンピオンを獲得、シーズン最多ポイント更新などマルケス1強という印象だ。
ランキング2位のアンドレア・ドヴィツィオーゾはマルケスに151ポイントもの大差をつけられたが、ノーポイントはわずか2回で、常に上位でフィニッシュしていた。しかし、マルケスはリタイアがわずか1回で、それ以外のレースで2位以内に入っているため、これだけの大差になってしまったのだ。
若い世代の台頭も目立つシーズンであった。特にルーキーのファビオ・クアルタラロは優勝こそならなかったが、何度もマルケスを苦しめた。2020年もマルケスと優勝争いを繰り広げるに違いない。
マーベリック・ビニャーレスとアレックス・リンスはドヴィツィオーゾ同様、昨年マルケスから優勝を勝ちとったライダー達だ。優勝したレースではマルケスでも追いつけない圧倒的なスピードを見せつけており、シーズン全体ではマルケスが圧倒したが、2019年を面白くした立役者と言える。
また、ホンダ、ヤマハ、スズキ、ドゥカティが2勝以上挙げたが、これはMotoGPクラスでは初めてのこと。ここからも各メーカーのレベルが拮抗してきていることがわかるが、やはりマルケスの強さが際立つシーズンだった。
2020年は新たに3名のライダーが参戦
今季のライダーラインナップに大きな変更はないが、新たに3名のライダーがMotoGPクラスに参戦する。1番の注目はチャンピオンチームであるRepsol Honda Teamに加入したアレックス・マルケスだ。
昨年のMoto2クラスでチャンピオンに輝いたアレックスはMotoGPクラスの絶対王者として存在する兄、マルク・マルケスとチームメイトになる。RC213Vに適応できるかに注目が集まるが、アレックスはMoto3やMoto2でも時間をかけて成績を上げていくタイプということもあり、今年は徐々にマシンを自分のものにしていくだろう。
Red Bull KTM Factory Racingに加入したブラッド・ビンダーは、昨年Red Bull KTM AjoからMoto2クラスに参戦し、ランキング2位を獲得。同じKTMから昇格した形になる。テストではテストライダーを務めているダニ・ペドロサの後ろを走り、MotoGPバイクの乗り方を学習していた。Moto2でも常に速さを見せてきたビンダーだけに、MotoGPでもその速さが見られることを期待したい。
もうひとりMotoGPクラスにステップアップするのはRed Bull KTM Tech 3から参戦するイケル・レクオナだ。もともとAjo MotorsportからMoto2クラスに参戦することが決まっていたが、KTMがその契約を撤回しMotoGPクラスに昇格させた。
2016年からMoto2クラスに参戦しているレクオナは2018年の最終戦で初表彰台を獲得し、昨年はランキング12位でシーズンを終えている。関係者の間でも高評価を得ているレクオナは将来を期待される逸材で、体力がつけば大化けする可能性もある。
さらなる混戦を予感させたセパンテスト
近年、毎戦接戦が繰り広げられるMotoGPだが、今シーズンはさらに激しいバトルが展開されそうだ。
マレーシアのセパン・サーキットで実施された3日間のプレシーズンテストでは、昨年の勢いそのままにクアルタラロが3日連続でトップタイムを記録した。レースを想定したロングランでペースが良かったのがリンスとビニャーレス。リンスはタイムでも総合3位に入り、ビニャーレスは誰よりも多く周回を重ね、レースと同じ周回を高いアベレージで記録した。
若いライダー達が順調に走行を重ねる中、ディフェンディングチャンピオンのマルケスは、昨年11月末に実施した右肩の手術の影響で100%の状態ではないようだ。しかしシーズン開幕には間違いなく合わせてくるはずだ。
そして昨年低迷してしまったバレンティーノ・ロッシが、テストでトップから0.192秒差の5番手タイムを記録した。来年ファクトリーチームからの離脱が決まっているロッシは、今シーズン前半のパフォーマンスを見て現役を継続するか否かを判断すると話している。つまりシーズン前半から戦闘力を見せつけなければいけないわけだが、テストではまずまずの結果を残した。2月16日に41歳になる生きる伝説が若いライダー相手に勝ち、復活することができるのか。
チャンピオン争いを繰り広げるメンバーに、チャンピオンを虎視眈々と狙う若手、そして復活を賭けて挑むベテランが入り乱れる今シーズンは大激戦になるに違いない。