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電動バイクで行われるレース「MotoE」とは?

2019 11/27 11:00河村大志
MotoE2019年第2戦オーストリアGPレースの様子Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

今年から始まった電動バイクによるレース

2輪ロードレースの最高峰MotoGPの2019年シーズンが終了したが、今年は新たなカテゴリーが生まれた年でもあった。それがFIM Enel(エネル) MotoE World Cup、MotoEだ。

MotoEは、MotoGPをプロモートするドルナスポーツが新設した電動バイクによるチャンピオンシップで、4輪のフォーミュラE同様、化石燃料を使わず電気のみで走る非常にエコなレースである。

MotoEには、イタリアの電動バイクメーカー、Energica(エネルジカ) Motor CompanyのスーパーバイクEnergica Ego Corsa(エネルジカ・エゴ・コルセ)が用いられる。このバイクは完全電動・ゼロエミッションで、さらに走行に必要な電力とバッテリー充電用電力は再生可能資源が使われる。MotoGPと大きく異なるが、最先端の再生可能技術はこれからのモータースポーツに欠かせないものになるはずだ。

この電動バイクEnergica Ego Corsaはワンメイク(同一仕様)でタイヤサプライヤーはミシュラン。つまり、どのチームもイコールコンディションで行われるのがMotoEの特徴だ。マシンもタイヤも同一なので、ライダーとチームはサーキットに合ったセッティングを見つけ出すことが重要になる。

また、電動モーターやバッテリーを搭載しているため重く、約260キロといわれ、MotoGPのマシンと比べると100キロ近くも重い。しかし最高出力は約160馬力、最高スピードは270キロとパワフルなポテンシャルを備えている。

レースは10周、15分と短い。電気の消費を抑えるよう燃費走行、いや「電費走行」を行わなくていいようにこのフォーマットが採用された。つまりライダーはスタートからゴールまでフルスロットルでレースが行えるということだ。

初年度には18名のライダーが参戦

MotoE初年度となる今年エントリーしたのは、MotoGP(最高峰クラスMotoGP、中量級Moto2、軽量級Moto3)に参戦中の12チーム、ライダーは18名。MotoEの競技規則では、最年長50歳、最年少18歳だが、参戦ライダーの最年長はMotoGPで活躍し9勝をマークしたセテ・ジベルナウ46歳で、最年少は2018年にイタリア選手権スーパースポーツクラスで総合4位と新人王を獲得したマッテオ・カサデイで20歳だった。

マイク・ディ・メリオやニコラス・テロルといったチャンピオン経験者も参戦した(共に125cc王者)。注目された要因のひとつには、GPやスーパーストックで活躍したライダーが顔を揃えたこともある。

・主要MotoE参戦ライダー
マイク・ディ・メリオ: 2008年125ccクラス王者
ニコラス・テロル: 2011年125ccクラス王者
エリック・グラナド: 2017年CEV Moto2クラス王者
チャビエル・シメオン: 2006年スーパーストック600/2009年スーパーストック1000王者
ニッコロ・カネパ: 2007年スーパーストック1000王者
ロレンツォ・サバドーリ: 2015年スーパーストック1000王者
セテ・ジベルナウ:元MotoGPライダー
ランディ・ド・プニエ: 元MotoGPライダー
アレックス・デ・アンジェリス:元MotoGPライダー
ブラッドリー・スミス:現MotoGPライダー

また、今年はMotoGPとの併催で年間4戦、6レースが行われた(サンマリノとバレンシアは2レースのダブルヘッダー)。来季はMotoGPと併催で、5月3日のスペインを皮切りに、5ラウンド6レースが行われる予定だ。

表1_MotoE2019年シーズン結果(4戦6レース)ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

MotoEの魅力とは?

MotoGPの強烈な音を感じられないMotoE。聞こえてくるのは、風切り音とモーター音、タイヤのスキール音といったところだ。排気音がまったくしないので、モータースポーツの魅力のひとつである音がないMotoEに対して、違和感を覚えている人々もいる。しかし、エンジン音がないからこそ聞こえてくる音もあるし、音がないからこそスピードを感じることもできる。

たしかにテレビで観戦していると、音がない分、迫力、魅力が伝わりづらいと感じたが、レースの本質である高速域での激しいバトルはMotoEでも繰り広げられている。音がなくてもモータースポーツの本質は何も変わらないと思うし、音が必要不可欠なものというのは、私も含め、すでにモータースポーツを知っている人たちの偏った見方なのかもしれない。

初めてレースが電動マシンで行われているモータースポーツでも、激しいバトルに、圧倒的なスピードに魅せられる方もいるのではないだろうか。

※年齢は最終戦2019年9月15日時点