技術だけではない世界というレベル
-昨年のインタビューでJuju選手の強みは理屈ではなく、車のポテンシャルを感覚で感じて走らせることができると教えて頂きました。一方で車の知識も必要になってくるとおっしゃっていましたが昨年の12月にセパンサーキットで初めてマシン開発のセットアップを経験されましたね。
英樹さん:年齢に応じて知識も付いてくるし理解度も高まる、ボキャブラリーも増えてくる中で、小学生の頃は感覚を磨くところでずっとやってきました。最近は中学生になって大人の会話ができるようになってきた。そういう意味ではもっと高度で難しいエンジニアリング的な会話も以前のように噛み砕くだいて話すのではなく、普通に話ができるようになってきましたね。
理屈の理解もできるようになってきた。それが今まで感覚だけで走っていたところにプラスα知識が身について、理屈もプラスされるようになってきたことにより安定性や、レース中の強さ、コンディションが変わった時の対応能力、そういうものを自分でコントロールできるようになったと思います。
前は周りが支えてコントロールしてそういう環境を作ってきたけど、自分でできるようになったところが強くなったところですね。
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─Juju選手自身にとってセパンでの経験はどうでしたか?
Juju選手:これまではこのチームとこのサーキットでしか走っていないので、チームの違いもかなり感じました。全部のチームがそうではないですが、自分がいたチームでは同じ年代のレーサーが集まっていました。自分から意見を言わないと動いてくれない、言っても動いてくれないこともありました。結果を出した分応じてくれる環境だったので走りで見せないといけない。口で言うだけじゃダメなんだなと感じました。
あとは同じ10代が向こうにはたくさんいて自分にまだ足りていないところもわかりました。それはセパンでの目的の一つでもあった高速コーナーの経験とか。1位争いをしてる子たちが持っている「ぶつかってでも前に行く」っていう気持ちが自分にはまだ足りないなと感じました。
足りないところにも気付かされたし、岡山国際サーキットは何年もずっと練習してるけど向こうに行ったら少し走ってすぐレースですって感じだから、何周も走ってタイム出してたらいけないんだなと。
チームの全てを味方にしないといけない
―ぶつかってでも前に行くスタイルはヨーロッパの選手がみんな持ち合わせていることですよね。それは日本と海外のレースに対する考え方だったり、ペナルティに対するジャッジの仕方にも違いがありますから、それは海外にいかないとわからないし学べない部分ですよね。
英樹さん:そもそも考え方が全然違う。日本はメーカーの育成でメーカーがお金出して、そのメーカーの枠に入って上に上がっていきます。
チームの中に入って、その敷かれたレースの上に乗っかっていくわけですが、世界ではそういったチャンスが少なく、親のお金であったり、小さいスポンサーをかき集めて、なんとか短時間で駆け上がっていかないといけない。そんな意識をもったドライバーがたくさんいる中で這い上がっていこうとする環境ですので、日本とは雰囲気が全然違いますよね。
日本のレベルは高いですよ。レベルは高いけど小さい時から決まったコースをずっと走って決まった顔ぶれの中で子供の時からずっと中学、高校になってもそのまま成長して行く。同じ顔合わせでやってる日本と海外とは全然違うのかなと。
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サーキットに入った時の空気が違いますよね。どんなことをしてでも俺が前にいく!と思ってる奴ばかりで、それは乗り方だけではありません。今日もここに様々な車やスタッフがいるわけですが、それを全部自分の味方にする必要があります。
例えば海外だとチームにエンジニアが一人で2台、3台見てるところもあります。そのエンジニアをいかに自分の車に集中してもらえるかというところからハングリーさが表れます。
ほっといてもやってくれるだろうではやってくれない、嫌がられるくらいそのエンジニアのそばにくっついて回って、自分の車を速くしてくれとアピールするドライバーもいます。そういうドライバーって日本になかなかいない。
若くして活躍する日本人は小さい時から世界を知っている
-変に充実しているというか、求めなくても揃っている日本独特の環境がありますよね。
英樹さん:求めると嫌われるお国柄なんですよ、日本は。人と違うことをしてしまうと「それは違う」と教育されてしまう環境がある。外国に行くとそれをやらないと周りは付いてきてくれない。だから日本人が最初に出て行った時は苦労したわけですけど、最近は違いますよね。
今若くして活躍する日本人は小さい時から世界を知ってる。その世界の感覚を持ったまま成長してるからだいぶ変わってきたんじゃないかな。昔は日本でずっと育って大人になって外国に行く。それだとそのギャップに気づくまでにいなくなってしまう。成績を出す選手もいるけど気づくまでに時間がかかってしまう。そこそこの結果までしかたどり着けない時代があった。今はだいぶ違うと思う。