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【ファルコンS】6番人気のシャインガーネットが勝利 好走の要因は厩舎との相性

2020 3/16 13:56勝木淳
ファルコンSインフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

シャインガーネット重賞制覇にみえる栗田徹調教師の戦略

NHKマイルCにつながるファルコンSは6番人気の牝馬シャインガーネットが1番人気ラウダシオンを抑えて勝った。牝馬のこのレース優勝は1200m戦時代のキョウワハピネス以来16年ぶりで1400mになってからははじめてのことだった。

シャインガーネットを管理するのは美浦の栗田徹調教師。今年42歳ながら開業10年目を迎える若き気鋭のトレーナーだ。獣医師の資格を持つ理論派で、将来は美浦を代表するトレーナーになるであろう。その戦略は適度な出走間隔を保ちつつ、かつ馬の能力を上昇曲線に沿って引き出すところにある。基本の調教パターンはウッドコース馬なり4ハロン追い。美浦に多い馬なり主体調教で過度な負担をかけない。休み明けより使いながら成績をあげる馬が多いものの、だからといって中1週など無理な出走間隔はあまり見られない。じっくりと馬を軌道に乗せるような育て方は理論派ゆえであろう。

シャインガーネットは9月デビューから11月、1月とこのレースまでひと月置きに出走して3戦2勝と効率よくオープン入り。前回のフェアリーSを踏まえて1400m戦の重賞に出走させ結果を出した。まずはこのファルコンS出走を選択した点に勝因があろう。2勝馬なので出走レースの選択肢は限られるわけだが、左回り1400mであればラウダシオンが勝ったクロッカスSも間隔的に悪くはないが、あくまで詰めて使わず、ひと月置きという結果を出した出走間隔にこだわったあたりに可能性を感じざるを得ない。

そして、この出走間隔がオルフェーヴル産駒の牝馬にピタリと当てはまった。詰めて使うと気性の難しさを出すタイプが多いオルフェーヴル牝馬は代表産駒ラッキーライラックのように適度な出走間隔が理想的。栗田徹流の計算は見事としかいえない。

また、田辺裕信騎手起用も今後はこの厩舎の馬券において見逃せない。3/8までで通算【25-5-10-87】騎乗依頼をした134名で断トツの数字。勝率は19.7%と2割近く、初重賞制覇となったアルクトスもこのコンビで中京1400m(ダートだが)。

さらに言えば、同馬もシャインガーネットも山口功一郎氏の持ち馬。同氏名義の馬は栗田徹厩舎で【30-14-15-153】(3/8まで)と勝利数はぶっちぎりトップだ(2位は10勝)。今後もこのトリオには目を離してはいけない。今後は距離や出走間隔を栗田徹調教師らしく熟慮するだろうが、パターンでいえばNHKマイルCあたりなら怖い。

敗退組から

シャインガーネットに関する話がいささか長くなったが、このレース全体を回顧すると前半600mは33秒8のハイラップだったが、これは飛ばしたデンタルバルーンのもので、2番手以下はさほど厳しくはなかったようだ。その証拠に中団より前の組での決着であった。シャインガーネットはかなり力んでおり、ラウダシオンやビアンフェも同様だったので、抑えた2番手以下は我慢を強いられるレースとなった。

デンタルバルーンが4角でかなり膨れたためにビアンフェは早めにインから先頭に立たされる競馬になったのは痛かっただろう。目標にもなり、馬場のいい外へ持ち出せなかった。対照的にシャインガーネットとラウダシオンはデンタルバルーンが外に行ったスキを突くようにうまく外のスペースを確保、末脚を十分に引き出すことができた。

ラウダシオンは前走クロッカスSでスローペースの楽逃げで勝っており、その経験がファルコンSでどう出るかと注目したが、今回は勝ち馬よりもスムーズな追走だった点は今後の明るい材料であろう。

2番人気9着のビアンフェはこの競馬では現状は能力を出し切れるようなので、将来を考えると難しいだろうが、勝ち進むにはたとえマークされても思い切って先手をとるべきではないか。競走生活の先は長いが、生涯たった一度の3歳春は短いわけだから。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「 築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

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