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【弥生賞ディープ記念】甘く見ると皐月賞で痛い目に 今年の弥生賞はレベルが高い!

2020 3/9 12:24勝木淳
弥生賞インフォグラフィックⒸSPAIA

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弥生賞の立ち位置

冷たい雨が降る日曜日。弥生三月、春は今年もじれったい。

皐月賞トライアル弥生賞はこのレースから無敗の三冠馬となったディープインパクトの名を掲げ、今年から「弥生賞ディープインパクト記念」となった。弥生賞から皐月賞を連勝した馬は2010年ヴィクトワールピサ以来出ておらず、近年は皐月賞とのつながりの薄さを指摘されがちなレースだ。

本番と同じ条件で行われるという意味では桜花賞トライアルのチューリップ賞と同じ。ただ、そのチューリップ賞は本番に直結しやすいレースであるのに対して、弥生賞が皐月賞につながらないのは何故なのだろうか。

弥生賞がローテの多様化によって少頭数のスローペースになったことが原因だろうか。様々な要因はあるかもしれないが、今年から無敗三冠馬の英雄ディープインパクトの名前がつくことでその傾向に「待った!」をかけられるだろうか。

サトノフラッグの可能性

ディープインパクトの名を掲げた新生弥生賞を勝ったのはディープインパクトの主戦だった武豊騎手が乗ったディープ産駒のサトノフラッグ。道中は中団待機、4角で一気にスパート、直線は外から一気に抜け出した。今回で弥生賞8勝目、勝ち方を熟知した武豊騎手が理想的な競馬を施した。

レースはウインカーネリアンが先手をとり、ディヴィナシオン、パンサラッサら伏兵が先行集団を形成、離れた中団馬群にオーソリティ、ワーケアらが控え、その直後にサトノフラッグがつけ、それをマークする位置にブラックホールが続く。

前半1000m通過61.1と重馬場にしては遅くはない流れだった。例年スローペースが多いが同じ重馬場だった昨年61.8より速い流れだった。その昨年は今年のダイヤモンドS2着メイショウテンゲンが勝つようなスタミナを問われるようなレースだった。その最後の600mは12.1-12.3-12.6とゴールに向かって失速するスタミナ型が強いラップだが、サトノフラッグは12.5-11.8-12.3と自身が先頭に立った時点で加速ラップを記録している。状況も記録に昨年に近いが、この馬場で一旦加速した点は見逃せない。

弥生賞ディープインパクト記念、ディープインパクト産駒、武豊と揃いすぎていて嫌われそうな予感もあるが、記録的には今年こそ皐月賞に結びついても不思議はない。

ワーケアやオーソリティ、敗退組の巻き返しは

2着ワーケアは、道中はサトノフラッグの前に位置しながら、勝負どころでは先に動いたサトノフラッグに対してワンテンポ遅れて仕掛け、それを追いかけるような競馬で2着。この仕掛け遅れはトライアルらしい乗り方で、サトノフラッグとの脚を測り、自身がどれぐらいの脚を使えるかを試したレースだったようだ。ディープインパクト産駒に対してこちらはハーツクライ産駒で急かすような競馬は得意ではない。本番はこの敗戦を踏まえどう乗ってくるのか楽しみである。

3着オーソリティはヒューイットソン騎手に乗り替わり、芙蓉Sのようなスムーズな先行策から粘り込んだ。ホープフルSはスタート直後の不利で後方に控えたが、今回はスタイルを元に戻し、すんなりした競馬をした印象。だが、これで3着となると皐月賞での逆転は厳しそうだが、それなりに前が飛ばした競馬、道悪の馬場を考慮すると3着に踏みとどまった内容は捨て置けない。いわゆる強い競馬はしているので、皐月賞は状況によっては浮上する可能性はあるだろう。

4着ブラックホールはやはり道悪、遅くない流れという条件が揃うと走る。ゴールドシップ産駒は総じて似た条件下で好走する。よもや3着というシーンもあったほど末脚の迫力は出走馬中ナンバー1だった。しかしながらこの条件で4着と複勝圏内に入れなかったあたり、評価としては過度にできないところだろう。クラシック戦線は?でも今後も道悪、それなりに流れるスタミナ勝負という条件では忘れてはいけない馬だ。

今後も続くトライアルレースの内容にもよる上に超A級が皐月賞直行を予定している現状ではサトノフラッグで皐月賞は決まりとはいえないが、今年は例年のように弥生賞ディープインパクト記念組を軽視しないほうがよさそうである。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「 築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

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