傾向バラバラも4角5番手以内の機動力
古馬牝馬の重賞中山牝馬Sは近5年の勝ち馬は3、4、5、6、5番人気となっており、1番人気の勝利は過去10年で14年フーラブライトのみ。多くの有力クラブ馬の引退レースに選ばれるレースでもあり、取捨選択に頭を悩ます。
女心と秋の空。秋の牝馬限定戦も難解だが、春もまたしかり。永遠にわからないのが女心というものか。

なお最初に断っておくが、2011年は東日本大震災の影響で中山競馬は開催中止となり、代替として阪神でこのレースは開催されている。前半1000m通過タイムは年によって大きく異なる。58秒台という厳しいラップも出れば、61秒~63秒台という超スローペースまで振れ幅が大きい。
つまり出走メンバーによって展開が変化しやすいレースである。共通項としては4角で半分より前にいる馬、とかく5番手以内にいる馬が抜け出して勝つケースが目立つ。ここ10年で唯一10番手以下が勝ったのは阪神で行われた11年のみ。中山芝1800m戦らしく好位、少なくとも4角では先頭集団にとりつける機動力を身につけていないと勝つのは難しいといっていい。
狙いは前走GⅢ組
次に前走クラス別成績をみる。この手のデータで強い前走GⅠ組は【1-1-0-19】と奮わない。格上のレースを経由する経験が生きない、これも難解なゆえんだろう。出走馬が多く絞りにくいが、前走GⅢ組は【5-5-6-65】と10年で半数の勝ち馬を出している有力ステップ。数も多いのでそれなりに絞らなければいけない。

愛知杯組有力も警戒したのは……

前走レース別でさらに詳細に掘り下げると、前走愛知杯組【3-2-3-26】と成績はいいが、こちらも分母が大きく絞りづらい。
そこで着順別にみると、GⅢ組の傾向通り、ギリギリ掲示板以下の組が有力。とくに愛知杯組では前走6~9着が【2-0-0-9】と穴の気配を漂わせる。とにかく中山芝1800mに条件が変わって一変するような馬には警戒すべきだろう。
さらに前走レース別成績をよくよく見ると、牡馬相手のレースを使ってきた馬の好走が目立つ。前走日経新春杯組【1-0-1-0】、2頭出走でともに馬券圏内だ。洛陽S組【1-0-0-2】東京新聞杯【0-1-0-1】、中山金杯【0-1-0-1】と数は少ないが確率は高く、今年の出走想定馬ではAJCC7着ウラヌスチャーム、洛陽S2着カリビアンゴールド、同6着ハーレムライン、東京新聞杯16着モルフェオルフェらが該当。男馬相手にしのぎを削った経験が牝馬限定戦では強みとなる、これもまた牝馬限定戦あるあるだ。
意中の女性を射止めるのは容易いことではない。なんとか事前に傾向と対策をしっかり練り、女性の気分を損ねないようなアプローチを心がけたいものである。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。