異例ともいえるGⅠ馬の参戦
タワーオブロンドンとダノンスマッシュの参戦により、オーシャンSはこれまでとは異なるスタンスに立たなければならないだろうか。前者は重賞連勝中の昨秋スプリントチャンピオンであり、主役不在、大混戦、超難解、上位人気拮抗というパターンからは外れてしまうのは確実である。
そうはいっても今回は5か月の休み明け緒戦、使いながら確実にターゲットレースを仕留める藤沢和雄調教師がどこまで仕上げて出走させるのか。そこについては予想する側は想像するよりほかはなく、つけ入るスキありというスケベ心を抱きたくなる。競馬は馬が主役であるが、興味深いのは人間である。調教師の思惑、予想する側の欲望、競馬を取り巻く人間の業は深い。

中山芝1200m戦は山の頂上から一気に駆けおり、最後に急坂を駆けあがるという独特な形態である。オーシャンSも例外ではなく、過去10年でみても前半600m33秒台は当然、昨年のモズスーパーフレアは32.3というラップを踏んでいる。
前後半のラップは33秒台-34秒後半がデフォルトといっていい。前半は速く、後半はコーナーと急坂で若干時計がかかる、中山特有なラップ構成といえる。
中山から中山へ
中山特有なコースゆえに前走中山出走馬が強いという傾向がある。

前走が中山だった馬は過去10年で【5-2-1-28】。勝ち馬の半数は前走中山だった馬である。それに次ぐのが京都【4-5-5-71】だが、こちらは分母が大きく、やや確率的には低い。
であれば、阪神【1-2-2-12】だが今年の出走馬で前走阪神組はグランドボヌールのみ(阪神C16着)。ここは中山と京都に絞って考える。

ラピスラズリS【3-0-0-10】
有力ステップはラピスラズリS【3-0-0-10】だが、こちらは2、3着ゼロでギャンブル感満載。今年はハウメアが該当する。
だが、昨年のラピスラズリSは前半600m35.1-後半33.4、ナックビーナスがまんまと逃げきったまさかの超スローペース。ハウメアがオーシャンSに適性アリとはいえないのではなかろうか。
カーバンクルS【1-1-1-2】
もうひとつの冬の中山オープン特別がカーバンクルS。こちらは前半600m33.8-34.6とラピスラズリSよりはペースが速く、勝ち馬は4角11番手のライラックカラー。なんとなくオーシャンSに合致しそうだが、こちらもやや前半が物足りない。
このペースで最後まで踏ん張れなかったエスターテより3着レジーナフォルテだろう。4着キングハートは1、2着馬と同じような位置にいただけに評価しにくい。今年は主要ステップレースがやや頼りない印象がある。
シルクロードS【1-4-2-45】
では京都はどうだろう。シルクロードS組がデータ上は有力だが、勝ち切るというより2、3着という評価が妥当。
それを踏まえなければいけないが、今年のシルクロードSは前半600m33.9-後半600m35.1。京都芝1200mは中山とは真逆の構造。前半のぼりで後半はくだりから最後は平坦。それを考慮すればかなり厳しいペースだ。
10着ダイメイプリンセス、13着ティーハーフ、16着ラブカンプーが出走するが、北九州記念2着1着のダイメイプリンセスにハイペース耐性がありそうだが。
タワーオブロンドンンに対抗できる穴馬は……
主要な3レースを分析するにつれ、浮上するのはタワーオブロンドン。昨年のスプリンターズSは野芝オンリーの高速馬場で単純な比較は危険ながら、32.8-34.3は超A級。
この流れを4角8番手から33.5の末脚を駆使したタワーオブロンドンに凡走の絵が浮かばない。もちろん、5か月ぶりの出走が与える影響はないわけではなかろう。藤沢和雄調教師の仕上げは9分にも満たない可能性だって捨てきれない。
だが、今年のメンツであればダノンスマッシュ以下のなかに先着できそうな馬は見当たらない。前走スプリンターズS組は【0-1-0-3】だが、大半は10着以下であり、1着馬の出走は過去10年でゼロ。ゼロはあくまで危険でもなければ有力でもなく、未知の領域。やってみなければわからぬのなら、賭けてみる価値もまたある。この馬だって中山から中山というローテーションでもある。
◎タワーオブロンドン
〇ダノンスマッシュ
▲ダイメイプリンセス
△レジーナフォルテ
×ハウメア
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。