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【オーシャンS】タワーオブロンドンの取捨は?合言葉は中山から中山へ!

2020 3/1 17:00勝木淳
オーシャンステークスのインフォグラフィック
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ⒸSPAIA

高松宮記念に向けて注目の前哨戦

オーシャンステークスのインフォグラフィック

高松宮記念の前哨戦であるオーシャンSは設立から15年目を迎える。06年に行われた第1回の勝ち馬はオープン特別時代の03年に石崎隆之騎手で勝ったネイティヴハートだった。設立からしばらくは高松宮記念につながらないレースだったが、データ集計期間にあたる過去10年で17年を除く9年で高松宮記念3着以内馬を送るように変化してきた。

今年は出走予定馬に前年スプリンターズS勝ち馬タワーオブロンドンやダノンスマッシュが名を連ねる。年々、前哨戦としての注目度を増しているレース、それがオーシャンSだ。

中山芝1200mの特異性

オーシャンS過去10年

過去10年でみると、前半600mが34秒台だったのは15年のみ。馬場の影響で全体時計がかかる状況であっても33秒台は当然という傾向がある。前半600mがもっとも遅い15年は前半600m34.0、後半600m34.7で重賞としてはスローに近く、上がり最速のサクラゴスペルが切れ味を発揮して勝っている。これは例外と考えるべきだろう。

というのは、中山芝1200mは他場のスプリント戦とはひと味違うコースだからだ。前半がもっとも速い芝1200m戦といえば小倉である。どちらも2角の頂上から一気に駆け降りる 構造になっており、前半はひたすら下るためペースアップする。

小倉との違いはそのあとにある。それが最後の直線にある急坂。最後までスピードで一気に駆け抜けることができる小倉とは対照的に中山はこの坂が厄介。最後に待ち構える急坂を力任せに駆け上がることができるパワーがなければいけない。究極のスピード比べからパワー勝負という、ある種の矛盾するような適性が求められる舞台なのだ。

勝ち馬をみると、後方一気はほぼなく、4角10番手以内、かつ上がり3ハロンが5位以内、それが理想といえるだろう。昨年のモズスーパーフレアのような例もあるが、スピード一辺倒でもなく、末脚自慢でもない、スプリント戦におけるバランスを重視した総合力型が強い舞台なのだ。

それぞれの勝負度合い

前走クラス別成績

総合力となると、やはりA級スプリンターが強いイメージがあるが、じつは前走クラス別成績は必ずしもそうではないことを示している。

前走GⅠ組はなんと【0-1-0-6】であり、タワーオブロンドンにとってやや気になるデータだ。ただ、過去10年ではスプリンターズS1着馬の出走はなく、タワーオブロンドンがこれに該当するとは断言できない。GⅡ組【1-2-1-10】、GⅢ組【2-6-4-60】と重賞組は複勝圏には多く来るが(2着は10回中9回は重賞出走馬)、勝ちきれない。

要因は色々あるだろうが、オープン特別組【6-1-3-33】と合わせて考えると、やはりここを勝たなければ出走権もしくは賞金加算ができないという事情を抱えたオープン馬でも格下感がある組の勝負駆けに負けていると考えるべきではないか。頭にすえて勝負するのであれば、断然前走オープン特別組である。重賞常連組には高松宮記念への始動戦的なニュアンスが強いといえるだろう。

ではオープン特別といってもどんなレースからここに出走する馬がいいのか。ラピスラズリSは【3-0-0-10】、一発の魅力はあるが、リスキーでもある。カーバンクルS【1-1-1-2】は頭数は少ないが、勝率、複勝率とバランスがいい。見かけたら注意したい組だ。また正月の京都で行われる名物レース淀短距離Sは【1-0-1-6】数字としては悪くはないが、やや落ちる印象がある。 ここにも中山芝1200mの特異性が隠されているのだ。

カギは連続して中山に出走する馬

前走競馬場別成績

前走競馬場別成績をみると、さらにそれがはっきりする。前走が中山だった馬は【5-2-1-28】と頭数も多いが、10年で5勝は見逃せまい。京都は【4-5-5-71】で悪くはない数字だが、中山と比較すると確率では分が悪い。同じ急坂がある阪神【1-2-2-12】も強調できるような数字ではない。関西主場はどちらも芝1200m戦は設定されていて、レース数もそれなりに多いのだが、コース形態が中山とは異なる。前半がのぼり、もしくはスタートからコーナーまでが短いといった事情で前半600mがハイペースになりにくいのだ。一気に下る中山とのペースの違いは忘れないでおきたい。

オーシャンSは前走中山芝1200m出走馬を狙う。これはオーシャンSに限らず中山芝1200戦で多くみられる現象ので、覚えておこう。中山から中山へである。

これら分析を踏まえると、タワーオブロンドンをバッサリ切り捨てるのは怖いが、ラピスラズリS2着ハウメア、カーバンクルS3着レジーナフォルテ、同4着キングハートあたりは出走してくればオッズ的にもおいしいので、要警戒だ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「 築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。