今年も展開利、インティが連覇達成へ
2月23日に東京競馬場で行われるフェブラリーSはマイルという距離で行われることもあって、いろいろな路線から実力馬がここに集結し、名勝負が生まれてきた。
しかし、今年からサウジアラビアでサウジカップ(2月29日、1800m)が新設。1着賞金が何と1000万ドル(約11億円)という超高額レースで、今年はクリソベリル、ゴールドドリームというチャンピオンズCの上位2頭が招待を受けて出走の構えを見せている。次に控えるドバイもそうだが、招待を受けるのが当たり前になるぐらい日本馬が強くなったのは喜ばしいことだが、肝心のフェブラリーSに有力馬が参戦しないのは寂しい限り。賞金で対抗するのは到底無理なので、時期をずらすなどの対応策が考えられるが、思い切って距離を1400mに短縮するのも一つの手かと思う。
幸い、今年は地方所属の3頭を含め、昨年の覇者インティやダートで再浮上したモズアスコットなど、GI(JpnⅠ)勝ち馬も多数参戦。レースとしては面白くなること、間違いなしだ。
距離短縮が吉


過去10年のデータを振り返って傾向を調べてみる。まず年齢。ダートは高齢馬でも活躍するイメージだが、データ上で勝つ可能性があるのは6歳まで。中でも5歳馬が勝率、連対率とも最もいい。所属別では栗東組が17連対と東を圧倒。地方馬も2011年にフリオーソが2着しているように、交流重賞で勝ち負けできる馬ならチャンスがありそうだ。

前走距離だが、今回と同距離を使ってきた馬は全て圏外。武蔵野Sや南部杯から直線ここへ使ってきた馬は厳しいデータとなっている。最もサンプル数が多いのが前走から距離延長してきた馬だが、これも率がひと息。逆に距離を縮めてきた馬は15連対。やはり東京のマイル戦はスタミナも大事ということだろう。

最後に前走着順。前走勝ちの馬が勝率、連対率ともトップ。2、3着だった馬の連対率も悪くはないが、4着以下になると勝率、連対率ともにぐっと下がる。前走勝ちの勢いを素直に信じてよさそうだ。
モズアスコットは強かったが……
このレースは前が残ることも、追い込み馬が飛んで来ることも可能なレース。よって、展開を読むことが大事となってくる。その意味で今回、幸運だなと思うのはインティ。ここ2走で頭を悩ませていたスマハマがおらず、強力な同型のドリームキラリが賞金順で出走がかなわない現状。ケイティブレイブは緩い流れに慣れて行けるかどうか怪しい。もともと東京のマイル戦というのは、東京1400mに比べて流れが落ち着きやすく前有利の傾向がある。スローは望めなくても、平均程度なら粘り込むのはそう難しいことではない。
インティは前走で控える競馬をして3着。普通なら脚質に幅が広がったと喜ぶところだが、このレベルの馬になると内容だけでなく、結果も問われてくる。そして、勝つにはどの方法が最善かといわれば、やはり積極策ということになる。流れが味方すると予想するなら、インティの連覇達成の確率はかなり高くなる。年齢、前走距離、そして前走着順と、データ上で大きなマイナスがないのも後押しだ。
インティが走った東海Sだが、勝ち馬のエアアルマスは残念ながら故障で戦線離脱。インティのほか、追い込み馬のヴェンジェンスとキングズガードがここに駒を進めて来た。ヴェンジェンスはある程度位置を取って攻めの競馬をしたのに対し、キングズガードはいつもの直線にかける形。結果はヴェンジェンスが2着、キングズガードは5着。
ヴェンジェンスは早めの仕掛けでも競馬になることが分かったのは大きな収穫だが、ワンターンである東京のマイル戦であの戦法は通用しない。幅が広がったことで逆に競馬が難しくなる気がする。逆にキングズガードは今回もいつもの競馬をするだけ。人気薄が突っ込んでくるパターンは、まさにこんなタイプの馬だ。
有力な前哨戦の根岸Sはモズアスコットの一人舞台。スタートで後手を踏んだ時は、そのまま後方でもがくという初ダートにありがちなパターンかと思ったのだが、直線半ばまで馬なりで上がって来た姿を見た瞬間はちょっと震えがきたぐらい。日本で走っているFrankel産駒はモズアスコットを含めダートで5勝しているのだが、全て母の父がStorm Cat系。血統的な観点からダート適性はあると気付くべきだったが、それでも初ダートは砂をかぶるなどして、適性以前に全く力を出せずに終わるケースも少なくない。不利な条件をハネ返して勝利するのだから、能力の高さはもちろん、よほど芯が強いのだろう。ほかの馬は全てこの馬の引き立て役に回ってしまった印象だ。
チャンピオンズCからはタイムフライヤーが参戦。これもモズアスコットと同じく芝のGI馬。今回の舞台で2着があるものの、母の父ブライアンズタイムが強く出ている馬で、本質は中距離で力の要るダートの方が合うはずだ。
武蔵野S、南部杯を使った組だが、データ上は前走で同距離を使った馬は苦戦と出ている。南部杯はサンライズノヴァが優勝。毎年南部杯は外へ出した方がよく伸びる傾向にあり、サンライズノヴァは内枠で出遅れたが、結果的に4角で外を回せたのが大きかった。同枠のアルクトスはスムーズな競馬はできたが、最後まで外へ出せず。勝ち馬とはその差が出ただけで力の差はないとみていい。
武蔵野Sにも出走したサンライズノヴァは一転して先行策を取ったが、展開が向かず結果的にそれが裏目に出た。ただ見せ場は十分で、あの競馬が今回の布石になるとすれば怖い存在になりそう。
地方から最多タイの3頭が参戦。東京大賞典、川崎記念で結果を残したことにより、JRAのGIでもやれる手応えをつかんだのだろう。過去にトーシンブリザード(2002年)、フリオーソ(2011年)が2着となっているが、正直今回の3頭はそこまでのレベルに達していない。ただ、地方重賞にJRA勢が出走するのが当たり前になっているように、地方馬の挑戦もまた当たり前となることが、中央、地方両方のレベルアップにつながると信じたい。
今回は前有利と考えインティが本命。対抗はモズアスコット。Frankel産駒は人気すると天邪鬼な面を出すところがあるので、今回は楽勝するか、それとも大敗かのどちからかではないかと思っている。データ上は厳しい前走同距離組からはサンライズノヴァの方をチョイス。アルクトスはレース上手な半面、上にいくにはもうひと皮むけないと厳しい。あとは無欲の追い込み馬キングズガードと、前に行けた時のワイドファラオ、デルマルーヴルの食い下がりにも注意したい。
◎インティ
○モズアスコット
▲サンライズノヴァ
△キングズガード
×ワイドファラオ
×デルマルーヴル
《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。