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【京都記念】牝馬ワンツーフィニッシュ!データは状況分析が大切

2020 2/17 10:54勝木淳
2020年京都記念インフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

クロノジェネシスの圧勝

2020年京都記念インフォグラフィックⒸSPAIA

第113回京都記念は4歳牝馬クロノジェネシスとカレンブーケドールがワンツーフィニッシュを決めた。牡馬中距離戦線が手薄である状況を見極められれば、かなり単純な予想をすることが正解だった。

勝ったクロノジェネシスは文句なしだが、2着カレンブーケドールはこの先勝利を挙げるために負けて強しの競馬から脱却するにはどうすべきなのだろうか。悩ましい結果となったレースを分析する。

牝馬不振のデータを見事払拭

戦前、牝馬は15年ハープスター1番人気5着、18年モズカッチャン2番人気4着と不振、勝ったのは95年ワコーチカコ、10年ブエナビスタのみ。過剰な人気な危険視されていた。データを扱うサイトでデータを無視しろとは言わないが、データには裏側があるということは伝えねばならい。というよりデータは掘り下げることが大切であり、当てはめられるかどうか状況分析が肝要なのだ。

今年は4歳牝馬クロノジェネシスとカレンブーケドールが1、2着し、牝馬不振のデータを大きく覆した。だが一週前の記事で示した通りレースの主力は4、5歳勢で、クラージュゲリエの出走取消で4歳はこの2頭のみだった。ついでに言うと、5歳は3着ステイフーリッシュのみでもあった。

これも単にデータを当てはめたにすぎない。問題はここからだ。出走馬の中で2019年1年間に重賞を勝利したのはクロノジェネシスとドレッドノータスしかおらず、GⅠ3着以内はクロノジェネシスとカレンブーケドールだけだった。要点は何かというと、京都記念は113回目を数える伝統のGⅡではあるが、今年の出走馬でGⅡにふさわしい近況の馬はクロノジェネシスとカレンブーケドール、せいぜい前走GⅡ2着のステイフーリッシュぐらいしかいないにもかかわらず、牝馬不振というデータを当てはめていいのかどうかということだ。

牡馬にGⅡ格で勝負していたような実績馬が不在であれば、予想すべきはこの3頭の順位づけのみでいい。牝馬にこだわらず、馬場状態や展開、距離、コース適性を比較すべきだった。

カレンブーケドールが重賞を勝つには?

1着クロノジェネシスは秋華賞と同様に丸い京都のパドックで終始外々を大きな歩幅で歩く姿が目についた。秋華賞は+20キロ、今回は+12キロ、体重以上に大きく見せるように歩くのは好走パターンなのだろう(5着だったエリザベス女王杯のパドックでは外々を歩くも気持ち歩幅が狭い)。5か月ぶりで秋華賞を勝った馬に3か月の休養明けは疑問視する材料にあたらない。

2着カレンブーケドールはジャパンカップ以来で馬体重増減なし。一定の歩幅でリズムある歩きを披露しており、きっちり仕上げてきた雰囲気だった。3着ステイフーリッシュはステイゴールド産駒らしく首を上下に動かす闘志を前面に出す姿。ほかにはノーブルマーズの首を下げ気味に歩くいつものスタイルが目についた。

レースは道悪巧者のアメリカズカップがスタートから後続を離し気味に逃げ、前半は12秒台前半のラップを強気に踏む流れ。番手にステイフーリッシュが取りつき、クロノジェネシスは馬場状態がいい外目の3番手という理想的な位置取り。カレンブーケドールはスタートで遅れて後方2番手。この位置取りの差が結果を左右したといっていい。

1000m通過後は12秒6-13秒1-12秒7とペースダウンしながらステイフーリッシュとクロノジェネシスは十分にスパート前に息を整えることができた。カレンブーケドールは下りにかかる地点から動いている。待っている馬と動いた馬、その差が最後の直線に影響した。クロノジェネシスは荒れた馬場を一切乱れず駆け、3番手から上がり最速35秒8では他馬は敵うはずがない。カレンブーケドールはインで応戦するステイフーリッシュを捕らえるも、2着まで。4角の差がそのまま着差になった印象だった。

そうはいうが、カレンブーケドールは毎度のことながら敗れて強しの競馬。自ら動いたオークスやジャパンカップのようにスタミナ勝負で強さを発揮する。正攻法の競馬をすれば、重賞のひとつやふたつ勝てる力は十分にある。

今後の課題はそのジレンマだろう。理想的な行儀がいい競馬を試みるのか、あくまで結果を出している自分の力を発揮できるスタイルを貫くのか。ではクロノジェネシスのような競馬をすればカレンブーケドールは勝てるのか、そんな単純にはいかないのが競馬の難しさ、もどかしさでもある。

3着ステイフーリッシュは京都新聞杯以来の3勝目が遠い。重賞2、3着はこれで8度目。父ステイゴールドに似なくていい部分が似てしまっている印象。4着ノーブルマーズが接近するとゴール前でまた盛り返すように伸びていた。こちらは父ステイゴールドにいい意味でそっくりだ。

4着ノーブルマーズは頭が下がる(馬はいつもパドックで頭を下げているが)。昨年から重賞に出走し続け、1秒以上負けたのは宝塚記念のみ。差がない競馬をし続けるタフさには敬意を表したい。

予想陣では門田が◎▲△(〇は取消)でズバリ。京大競馬研が印3点で▲◎〇だった。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「 築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。