「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【京都牝馬S】距離変更5年目。そろそろ見えてきた新たな傾向とは

2020 2/16 17:00勝木淳
京都牝馬ステークスインフォグラフィックⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

京都競馬場特有のペースとは

京都牝馬Sのインフォグラフィック

2016年から芝1400m、200m距離を短縮された京都牝馬S。この距離変更はレースの特性を確実に変えた。15年までと16年以降の成績で、如実にそれが出ている箇所が勝ち馬自身の上がり3ハロンタイムの順位だ。

マイル戦時代はとにかく切れる馬が強く、ケイアイエレガントが逃げ切った15年を除くと、ほぼ上がり最速の馬が勝利していた。牝馬限定、後半下り坂の軽いレースになりやすい京都らしい結果でもある。とにかく切れる馬が強く、4角10番手より後ろの追い込みさえ決まるレースだった。

京都牝馬S 過去10年成績(2016年から1400m戦に変更)ⒸSPAIA

ところが、16年に1400m戦に距離短縮されると、上がり上位は強いものの、優勢だった上がり1位馬の勝利はなく、2、3位の馬が勝つように。4角順位も10番手以降から勝ち馬は出ていない。1400mは陸上競技でいえば200m、いわば短距離戦。

マイルは究極の無酸素運動といわれる400m走との境のようなところだ。ペースやコース、馬場状態次第では一気に走らなければこなせない400m走になり、落ち着いたペースではひとためが有効になる。

京都牝馬Sは、マイル時代には中距離にあたる800m走に近い傾向だったが、1400mになりためを利かせても勝てないレースとなった。それでも1400m重賞としては道中のペースはやや緩い。これは前半上り、後半下りという京都のコースレイアウトが関わっている。

前後半イーブンだったのは19年デアレガーロが勝った年のみ、後半が遅かったケースは16年クイーンズリングのみで、残り2年は前半が遅く後半が速い、いわゆるスローペースの1400m戦。それでも勝つ馬は上がり2、3位の中団にいる馬。まずこういった競馬に適性がありそうな馬を探したい。

好調馬と巻き返す馬、どちらにも目を光らせるべき

前走距離別成績(過去10年)/前走距離別成績(2016年以降)ⒸSPAIA

前走距離別成績を過去10年でみると、前走1800m出走馬【2-0-0-5】、2000m出走馬【2-2-1-23】、2200m出走馬【1-0-0-3】と、前走マイル【4-6-2-47】を確率として上回っている距離短縮が強い傾向だった。

ところが、1400m戦になった16年以降は距離短縮が機能しなくなっている。前走1800m出走馬【0-0-0-1】、2000m出走馬【0-0-0-4】、2200m出走馬【1-0-0-0】。好走はエリザベス女王杯経由の16年クイーンズリングのみ。それも十分ではあるが、やはり中距離でためを利かせてスタミナと切れ味を発揮するような馬は1400mで不振ではなかろうか。

ただし、前走1600m出走馬は【2-3-1-18】と確率はマイル戦時代と変わらないので、距離短縮はすべてダメではない。これはマイル戦が短距離戦と中距離戦の境、ボーダーライン上にあるカテゴリーであることを示している。

前走競馬場別成績(過去10年)/前走競馬場別成績(2016年以降)ⒸSPAIA

競馬場別成績では過去10年では中京や阪神からも好走馬が出ているが、16年以降になると、中山【2-3-0-19】、京都【2-0-3-15】の2場に集中している。ターコイズS組が浮上し、京都金杯組が落ち込み、スワンS組が上昇傾向にあり、切れ味重視から1400m戦特有の適性にシフトしているといえる。

前走着順別成績(過去10年)/前走着順別成績(2016年以降)ⒸSPAIA

しかし、着順別成績を見比べると、16年以降と過去10年に違いはなく、京都牝馬Sの狙い方を一定傾向示している。前走1着馬と6~9着敗退馬という極端なレンジ、その両方に目を光らせねばならない。

牝馬限定戦らしく好調馬と凡走から巻き返す馬のどちらも正しく評価しなければ、馬券的中には近づけない。これは距離に関係ない牝馬限定重賞特有のスタンスといっていいだろう。

想定馬では(京都金杯経由は近走不振だが)前走1着のサウンドキアラ、ドナウデルタの好調馬とターコイズS5着メイショウグロッケ、同15着モアナ(京都1400mで条件好転)、阪神C5着のノーワンあたりに警戒したい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。