東京マイルらしい道中ラップ
直近2年でリスグラシュー、インディチャンプが勝ち、出世レースの印象が強くなった東京新聞杯だが、それ以前にもキングヘイロー、アドマイヤコジーン、ハットトリック、スズカフェニックス、ローレイルゲレイロなどのちのGⅠウイナーがズラリ。厳冬期であっても東京マイルの重賞は力がなくては勝てない舞台。瞬発力だけ長けても通用せず、スピード型が押し切れるほど甘くはない舞台。また、スタミナだけでも乗り切れない。それらの中間にあるスピード+持続力+スタミナ、これらをバランスよく配置した総合力が問われる舞台なのである。
勝ったプリモシーンは昨年のヴィクトリアマイル2着馬で東京マイルの適性があった。昨年のマイルチャンピオンシップは大敗だったが、東京マイルで見事に巻き返してみせた。確かにプリモシーンは昨年の中京記念では最後は3歳2頭に捕まった。しかし、中盤に11秒4-11秒3-11秒4という厳しいラップを踏んだ展開を自ら外を動いて勝ちに行っていた戦歴がある。若い頃のためて末を生かす競馬から、経験を重ねるごとに勝ちに行ける競馬を身につけてきた、その成果が出たレースだった。
レース内容は、スタートでは先行勢にダッシュ力で見劣ったが、そこで出たなりの競馬ではなく、ミルコ・デムーロ騎手が馬を促して劣勢を挽回、好位を取りいったのは結果的に大きかった。折り合いを欠く不安より勝てる位置に行く方を選択する、デムーロ騎手の勝利への姿勢も賞賛したい。道中はモルフェオルフェが途中から後続を離しにいく逃げで、レースラップは一切落ち込みがなく、11秒台後半が続いた。ためたくても脚がたまらない、東京マイル戦らしく言い訳無用のレースだった。プリモシーンは1番枠を利して好位のインを追走、直線に向くと前に進路をカットされまいと外を意識する。多頭数、前が止まらないレースにおいて理想的な形で抜け出した。
道中ラップ
12秒4-10秒9-11秒4-11秒6-11秒8-11秒5-11秒6-11秒8
結果的に差してきたのは2着のシャドウディーヴァのみで、3着クリノガウディー、4着サトノアーサー、5着クルーガーと掲示板はすべてプリモシーンより前に位置した馬たちで、やはり多少厳しい流れでもDコース施行の東京マイル重賞となれば先行勢は簡単には止まらない。上位馬はスピードでマイルに対応できなかったシャドウディーヴァ、スタミナを欠いたクリノガウディー、スピードを欠き、スタミナを奪われたサトノアーサー、スタミナはあっても道中でスピードに脚を削られたクルーガー、いずれも条件次第で好走できる力は今回示せたが、東京マイルを乗り切るにはどれかを欠いていた。
逆を言えば、いずれかの長所を生かせる舞台に出走すれば狙いは立つ。東京マイルは能力を如実に表す舞台でもある。その意味ではプリモシーンはスピード+持続力+スタミナと三拍子そろっていた。まして1番枠という絶好枠、ツキまで味方していては敵うはずがなかった。順調にヴィクトリアマイルを迎えたい。
1600mを全て11秒台後半で走り切らなければ勝てない。東京新聞杯が出世レースになる根拠はこのあたりにある。