「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【朝日杯FS】「前走4着以下はマイナス」「早生まれが有利」データ的に1、2月生まれの3頭で勝負

2019 12/11 11:00門田光生
2019年朝日杯フューチュリティステークスの有力馬タイセイビジョン
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

阪神JFと求められるものが違う

阪神JFは1番人気のリアアメリアがまさかの圏外。外枠だったので、前走と同じように外をぐるっと回って来れば勝てるだろうと思っていたし、実際にそのような競馬をしたのだが、前が止まらない流れもあって不発に終わった。やはりGIは甘くないということか。勝ったレシステンシアにしても完全に実力を見誤っていた。競馬の難しさを改めて思い知らされた1日だった。

今週は朝日杯フューチュリティステークス(朝日杯FS)。このレースは2014年に中山から阪神へ場所を移行。小回りの中山から外回りの阪神へと変わったのだから、求められるものも当然変わってくる。また、同じ年にホープフルSがGⅡへと昇格。朝日杯FSとそん色のない賞金となったことにより、中距離馬が無理に朝日杯FSを使う必要がなくなった。

過去3年の朝日杯FS上位馬の前走ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ここ3年の1~3着馬の今を調べてみたが、それを裏付けるような結果が出た。それは、全馬が前走でマイル以下のレースを使っているのだ。2017年の勝ち馬ダノンプレミアムは能力の高さで中距離でも走れているが、マイルCSで好走したように本質はマイラーだろうし、2017年の3着馬タワーオブロンドンなどは古馬になってスプリンターとして大成した。先週の阪神JFの時はクラシックにつながるレースと書いたが、同じ阪神1600mでもこのレースは完成度が高く、スピードのある馬が活躍する傾向にあるようだ。

早生まれに注目

前述の通り、阪神で行われてからまだ5年しか経っていないので、今回は過去5年分のデータを中心として傾向を調べることにする。

過去5年の朝日杯FS出走馬の前走着順ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

まずは前走着順。5頭の勝ち馬は全て前走1着だった。ここ5年の出走頭数の半分近くが前走1着馬だったはいえ、勝ち馬を探すとなるとほぼ必須条件。少なくともここ5年で連対ゼロの4着以下に負けていては話にならない。

過去5年の朝日杯FS出走馬の生まれた月ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

続いて生まれた月。完成度で思いついて調べてみたが、何と生まれが早いほど成績がよくなっている。ここ10年に範囲を広げても、連対率1位は1月、2位は2月、3位は3月となっていた。阪神JFでは早生まれが有利という傾向はなかったので、やはり同じマイルのGⅠでも性質が違うのだろう。

血統はディープインパクトを中心として、切れるマイラー系が活躍の傾向。1番人気が予想されるサリオスだが、父がハーツクライ、母はディアナ賞(独オークス)など2200mの重賞を2勝したサロミナ。ドサージュ(配合理論)的にも中距離血統のはずだが、現時点ではマイラーとしか思えない走り。現時点でまだ良化途上だとすれば、将来は父の代表産駒になり得る存在かもしれない。

タイセイビジョンの父タートルボウルの代表産駒はトリオンフ(小倉記念)やアンデスクイーン(レディスプレリュード)と中距離で活躍する馬だが、タートルボウル自身はマイル前後で活躍した馬。タイセイビジョンが産駒のモデルケースだと思われる。

タイセイビジョンを信頼

前哨戦を振り返っていく。前走でレコード駆けした馬が3頭も出走しているが、こんなレースはあまり記憶にない。 まずはサウジアラビアRCを勝ったサリオス。直線で一瞬2着馬に出られそうになるのだが、そこから再加速して突き放した。早生まれ(1月)ではあるが、まだまだ奥がありそうな馬だ。

京王杯2歳Sをレコード勝ちしたのはタイセイビジョン。中団の馬ごみで行きたがるのを我慢し、直線半ばから追いだすと一気の伸び足。短距離馬らしい回転力とバネが凄い。こちらは2月生まれだが、サリオス以上に完成している印象を受ける。マイル経験がないのはマイナス材料だが、馬ごみで我慢できるのは分かったし、あとは名手に委ねるだけだ。

未勝利戦なので前哨戦とは言えないが、もう1頭レコード勝ちしたのはメイショウチタン。ただ、未勝利勝ちからこのレースに挑んだ馬はここ5年で連対がなく、10年に範囲を広げても同様の結果。データ的には苦戦の傾向なので見送り。

有力な前哨戦であるデイリー杯2歳Sを勝ったのはレッドベルジュール。出遅れて位置取りが悪くなったことを思えば見事な差し切り勝ちなのだが、直線でインを突く好騎乗があったのも事実。データ的なことをいえば、勝率、連対率ともによくない4月生まれでもある。このレースで気になる馬といえば、追いだしを少し待たされながらも外から伸びて来た4着馬トリプルエースぐらいか。

あと挙げるとすればラウダシオン。重馬場もあって勝負どころでモタつくところはあったが、前をとらえる足が抜群に速かった。その前の小倉2歳Sではかなりのコースロスがあっての追い上げ。これもタイセイビジョンと同様にマイル経験がないのがどう出るかだが、それで人気を下げるなら「買い」だろう。ちなみに、これも成績のいい2月生まれだ。

本命候補はサリオスとタイセイビジョン。どちらを取るかだが、今回の焦点は「スピードと完成度」。今回はキャリアと速さに勝るタイセイビジョンの方が上とみる。そこにラウダシオンがどこまで迫れるか。1、2月生まれの3頭で勝負したい。

◎タイセイビジョン
○サリオス
▲ラウダシオン

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。