「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【阪神JF】数字の比較ならリアアメリア以上 東大HCの本命は山紫水明クラヴァシュドール

2019年阪神ジュベナイルフィリーズに出走するクラヴァシュドールⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

紛れがあるとすれば…

12月8日(日)に阪神競馬場で行われるのは阪神JF(GⅠ・芝1600m)。2頭の無敗馬、リアアメリアとウーマンズハートの対決に注目が集まる一戦だ。この2頭で優先して買うべきはどちらの馬か、そして高額配当をもたらす魅力的な穴馬はどれか、検討していこう。

まずはレース展開や馬場傾向、コースの特徴といった点を分析していく。

阪神ジュベナイルフィリーズ過去10年の前後半3Fと1~3着馬の脚質

過去10年で4角7番手以内から勝ち切ったのはメジャーエンブレムとソウルスターリングの2頭だけ。外差しがズバズバ届くレースで、なかなか紛れることも少ない。 人気薄が来た年に共通点を見いだしてみると、2012年(1~3着の順に5・15・10番人気)、13年(5・1・8番人気)、15年(1・10・3番人気)はいずれもレース上がりが35.5秒以上かかっていた。情報の少ない2歳GⅠということもあって瞬発力勝負で目立つ脚を見せてきた馬が人気になりがちなため、質の異なる展開になった方が荒れやすいのだろう。

今年、逃げが想定されるのはエレナアヴァンティ。前走こそ前半3F33.7というハイペースで逃げているが、その結果大敗を喫している上に、今回は直線に坂のある阪神に替わって距離も延びる。同様のペースをつくるつもりはないだろう。穴党としては飛ばして行ってほしいが、そうはいかない予感もする。決め手のある馬を素直に信用するのが無難だろう。

レコード連発のスピード系馬場

阪神芝1600mの枠順別成績を出すと、1枠(勝率1位、連対率2位、複勝率1位)と5枠(勝率3位、連対率1位、複勝率2位)が好成績を残している。反対に7枠(勝率6位、連対率8位、複勝率7位)と8枠(勝率7位、連対率7位、複勝率6位)は苦戦していて、外すぎる枠は若干の減点材料。

過去3年の阪神芝1600m枠番別成績

続いて先週の馬場傾向を考えていく。先週の阪神では芝1400mと芝2000mで2歳レコードが更新されるなど非常に速い時計が出る水準。土曜は逃げた馬や内を立ち回った馬の好走も目立った。

ただ、日曜までトータルで見ると内外の差はさほど重要ではなく、軽い馬場向きの速い末脚を使えるタイプが上位に来ている印象だった。まだ開催2週目で降雨などもないということなので、大きく傾向が変化することはないだろう。出走馬でいえば特にウーマンズハートにとってはおあつらえ向きの馬場コンディションといえそうだ。

ここまでの内容を整理すると
1.先行馬はわずか2勝で差し有利
2.上がりのかかる展開にならない限り、順当決着
3.1枠か5枠が理想。7・8枠は多少割引
4.今の軽い馬場向きの速い末脚がある馬が狙い目

ということになる。以上を踏まえて出走馬の検討に入ろう。

“2強”へのささやかな抵抗

ここまでの書き方でお察しの通り、今回はウーマンズハート、リアアメリアにケチをつける材料がこれといって見当たらない。強引に粗探しをするのであれば、リアアメリアはアルテミスSの時点で爆発寸前だった気性面。ウーマンズハートは新潟で走った2回ともに直線で左にモタれる面を見せていることだろう。考えすぎだとは思うが、この手の癖を見せる馬は右回りに替わってパフォーマンスが(良くも悪くも)大きく変わるケースがしばしばある。初めての右回りなのでそこだけが少し引っかかる。

そんな強敵2頭を負かす可能性を感じるのがクラヴァシュドール。デビューから2戦続けて上がり3F33.1という非凡な脚を見せていて、どちらもラストから2F目で10.8というラップが刻まれているハイレベルなレースだった。数字で単純比較をするのは好きではないが、サウジアラビアRCの走破時計1.32.9は同厩リアアメリアのアルテミスS勝ち時計より1.4秒も速いし、この時3馬身半離した3着馬アブソルティスモが先日1勝クラスを快勝していることも能力の裏付けと言える。おそらく3番人気なので穴とは言えないが、“2強”という前評判にささやかな抵抗をしてみたい。

対抗にどちらをとるかは好みの問題かとも思うが、ウーマンズハートにした。軽い馬場での末脚勝負なら新潟の2戦で見せたパフォーマンスを素直に信用したい。

3番手はリアアメリア。アルテミスSは「いつでもかわせますよ」と言わんばかりの乗り方で楽々前を差し切ったもので、重賞であれほどの能力差を感じるレースはそうそう見られるものではない。しかし同時に気性面の不安を露呈した一戦でもあったので“崩れる可能性”という意味では先に挙げた2頭より大きいと考える。

4番手はレシステンシア。阪神JFで穴を開ける馬のパターンの一つに、「マイルも問題ない有力馬だが、阪神JF時点では距離経験がなく人気になっていない」→例:11年2着アイムユアーズ、12年2着クロフネサプライズ、というものがある。レシステンシア自身、ハイペースを2番手から抜け出した前走の内容はなかなかだし、200mの延長が特段マイナスに出るタイプでもなさそうだ。

以下、新馬戦のウーマンズハート以外には先着を許していないマルターズディオサ、別路線組からジェラペッシュ、クリスティを押さえる。その他ではロータスランドは新馬戦で追われてからの反応がすばらしい。2着に敗れた前走は極端な不良馬場だったため、良馬場ではまだ底を見せていない魅力がある。

▽阪神JF予想▽
◎クラヴァシュドール
○ウーマンズハート
▲リアアメリア
△レシステンシア
×マルターズディオサ
×ジェラペッシュ
×クリスティ
☆ロータスランド


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」でも予想を公開中。