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東大HCが徹底分析 「古馬の壁」は果たして存在するのか?

天皇賞秋で敗れた3歳馬サートゥルナーリアⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
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ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

古馬の壁は存在するのか?

今回のコラムのテーマは「古馬の壁」。3歳限定戦を戦ってきた3歳馬が、4歳以上の古馬との初対決で敗戦を喫した際によく耳にするフレーズだ。今年の天皇賞・秋で、アーモンドアイと双璧をなすと目されながら、まさかの6着敗退を喫したサートゥルナーリアの敗因にも挙げられていた。

今週日曜日に行われるエリザベス女王杯も、人気を集めるであろうラヴズオンリーユー・クロノジェネシスなどの3歳馬が古馬との初対決を迎える。果たして本当に「古馬の壁」なるものは存在するのだろうか? データを駆使して検証していく。

まずは「3歳以上」のレース条件において、3歳馬と古馬の対戦成績を確認する(データは断りがない限り2016年6月以降のものを使用)。

3歳以上戦における馬齢別成績ⒸSPAIA

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上の表に挙げた通り、勝率・連対率・複勝率全てで3歳馬が古馬をリードしている。実は斤量面で恩恵を受ける3歳馬の方が好走率が高いのだ。ちなみに回収率を見ても、3歳馬は単77%・複74%、古馬は単67%、複73%と、3歳馬の方が数値が良い。

これを「降級制度」が廃止された今年のデータに限定すると、3歳馬がさらに数値を上げていることがわかる。上級条件で戦ってきた古馬が降級の恩恵を受け、格下相手に好走するケースがなくなったことによる当然の帰結。来年以降も同様の傾向が続くだろう。

一見すると、3歳馬が古馬相手でも互角以上に渡り合っているように見える。では古馬との初対決に限定するとどうだろうか? (「古馬初対決」とは中央におけるものに限定。例としてルヴァンスレーヴのチャンピオンズCは、地方交流競走(=マイルCS南部杯)で古馬と対戦しているが、中央においては古馬混合のレースは初めてとなるため、「古馬初対決」とみなす)。

ダートには古馬の壁が存在する!

古馬との初対決に臨む3歳馬の芝成績を見ると、1勝クラス・GⅠ以外は全て複勝率3割以上、特に2勝クラスでは4割近い数字を残している。「古馬の壁」など微塵も感じさせない。芝ではむしろ3歳馬を積極的に買うべきだろう。

2016年以降、古馬初対決となる3歳馬成績(芝)ⒸSPAIA

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来たるエリザベス女王杯に向けての豆知識だが、古馬初挑戦となる中央所属の3歳馬が1番人気に支持されてGⅠに臨んだ際の成績を見ると、2007年エリザベス女王杯のダイワスカーレット1着以降【6-3-3-0】と全ての馬が馬券になっている。今年1番人気に支持されるのは3歳馬のラヴズオンリーユーかクロノジェネシスになりそう。いずれにしても該当馬の好走率は極めて高い。

2016年以降、古馬初対決となる3歳馬成績(ダート)ⒸSPAIA

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ただ、ダート戦では様相が一変する。1勝クラスでの複勝率は2割にも届かず、2勝クラスでは芝との成績に比べ複勝率で1割程度差をつけられている。 参考として、古馬初挑戦の3歳馬が出走する1勝クラスのレースにおける、馬齢別成績を載せた。興味深いのが、同じ3歳馬でも古馬とのレースを経験したことのある馬は好走率が高いこと。つまり、初対決における「古馬の壁」は確かに存在するのだ。

ちなみに、障害戦において3歳馬が初めて古馬と対決した際の成績は【1-3-7-186】で、勝率0.5%、連対率2.0%、複勝率5.6%。障害戦は適性が未知数かつ経験が大きくものを言うレースであるため、3歳馬の成績がかなり悪いことを覚えておいて損はないだろう。

では「古馬の壁」が立ちはだかる条件、逆に突破しやすい条件を探ってみよう。

3歳馬×古馬初挑戦×堀調教師は驚異の好走率

表は古馬初挑戦となる3歳馬における調教師別成績だ。

2016年以降の古馬初対決となる3歳馬・調教師別成績ⒸSPAIA

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30回以上の出走機会があった調教師の中で、驚異的な数字で勝率トップに君臨するのが美浦の名門・堀宣行調教師。勝利数、勝率いずれも2位に大差をつけている。古馬の壁など関係なしといったところか。

続く松永幹夫調教師とともに単勝回収率は150%を超えており、古馬初挑戦が嫌われるようなら逆に踏み込んで買うと良いだろう。勝率こそ5位に甘んじた藤沢和雄調教師だが、連対率・複勝率では堀調教師から僅差の2位につけており、連軸・3連軸として買うのがオススメだ。他にもゴールドシップ・ジャスタウェイを手がけた須貝尚介調教師、ルヴァンスレーヴ・ノームコアを管理する萩原清調教師をピックアップしておく。

2016年以降の古馬初対決となる3歳馬・コース別成績ⒸSPAIA

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最後に同条件においてコース別成績も調べてみた。同様に30回以上の出走機会があったコース別において勝率順に並べると、トップ10のうち8コースが芝2000m以上だった。2位・3位の中京両コースは単勝回収率がそれぞれ216%、189%をマーク。出走に古馬初挑戦の馬がいれば迷わず買うべきコースだ。全体として芝の中長距離においては3歳馬がいきなり古馬以上の走りを見せることが多く、上々の数字を残している。

反対に勝率が悪い順に並べると、ダート短距離が軒並み低水準にとどまっている。平地におけるワースト5のうち4コースがダート1400m以下で、この条件では古馬の壁が厚そうだ。注目して欲しいのが、本来成績がいいはずの芝の中距離戦である中山芝2000m戦が未勝利に終わっていること。このコースだけは例外的に3歳馬を軽視したい。

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《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」でも予想を公開中。