穴は後ろの馬から
10月27日(日)に東京競馬場で行われるのは天皇賞(秋)(GⅠ・芝2000m)。秋古馬3冠競走の第1戦だ。昨年の牝馬三冠など早くもGⅠを5勝している名牝アーモンドアイと、同じロードカナロア産駒で今年の皐月賞馬サートゥルナーリアが雌雄を決する、事実上の「現役最強馬決定戦」だ。この世紀の一戦を制するのはどちらか、また馬券を検討する上で欠かせない第3の馬はどれか、検討していく。
まずはレース展開や馬場傾向、コースの特徴といった点を分析していく。
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以降、歴史的な不良馬場だった2017年は参考外として話を進める。11、12年はともに個性派逃げ馬シルポートが超ハイペースで飛ばしていったが、基本的には平均ペースで入り、中盤以降が厳しいラップになることが多いレース。最近は「時計が出る馬場にしてはスロー」というペースで先行馬が勝っているものの、09年から14年までは差し・追込馬が6連勝。しかも、先行して勝ったのは全て1、2人気馬なのに対し、差し追い込みで勝った馬の人気は5、1、7、5、5、5と妙味もある。単純に人気≒実力と捉えるならば、先行馬は実力上位かつ展開にも恵まれないと勝ち切れない、ということになる。
今年の想定逃げ馬はアエロリット。スティッフェリオは番手で競馬できるし、テンもそこまで速くないので競りかけることはない。アエロリットは前走も1000m通過58.5で逃げているように、後続にも脚を使わせる逃げが身上。近年のように先行馬が楽をできるペースにはならないはずだ。一発の可能性があるとしたら、後方で末脚にかける競馬をする馬だろう。
内枠有利&Bコース替わりで
先週紹介した富士Sの芝1600mとは打って変わって枠順の有利不利が大きいのが東京芝2000m。最初のコーナーまでが100mちょっとしかないため、同じ労力でも内枠の方が断然いい位置をとれる。
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枠順別成績を見るとやはり1枠が勝率トップ。連対率は他と比べて頭1つ抜きん出ている。また、全体的に1-4枠>5-8枠という傾向が出ており、よく言われる通り内枠有利のコースだ。ちなみに8枠は距離ロスこそ大きいものの外から押圧される不利がない分、5-7枠よりはマシなようだ。
続いて馬場傾向を考えていく。今開催は台風の直撃などもあって、見た目には馬場がかなり傷んでいるように見えた。しかし、実際のところ月曜のメインは(スローペースとはいえ)外の2番手を走った馬、インで立ち回った3番手、逃げでの決着。同日の8レースはルイジアナママがあえて内目の馬群に突っ込んでいくような進路取りで勝利。それほど外差し傾向にはシフトしていない。
さらに今週からはBコースに替わり、内ラチから3m分を仮柵で保護する。春にはオークス→ダービーの仮柵移動で一気に馬場傾向が変化したように、今週は内有利に寄ることが想像される。したがって、先述した内枠有利のコース形態や、前章のレース傾向と合わせると「内枠の差し・追い込み馬」がベストと結論付けられる。
2頭の最強馬と左回り無敗馬
東京五輪のマラソン・競歩を札幌開催する案を目にして「ダービーやジャパンカップが札幌芝2600mになったら大変だろうな」などと妄想するくらいに競馬に思考を侵食されている私だが、どんなレースでも「そのコース・条件だからこそ買いたい馬」というのを狙っていくのが馬券を検討する上での基本姿勢。
天皇賞(秋)が左回りの東京で開催されるからこそ買いたいのがユーキャンスマイルだ。菊花賞で武豊騎手がずっと右手にムチを持っていること、新潟記念の正面からのパトロールビデオなどを観てもらえば分かるように、この馬はかなり右にモタれる癖がある。そしてこういう癖を持つ馬はどちらかの回りを極端に苦手(または得意)にすることが多いのだが、これまで左回りのレースに出走した際の成績は重賞2勝を含む3戦3勝と無敗。典型的なサウスポーだ。
そういう馬なので、この際右回りでの成績は無視して、左回りで底を見せていない魅力にかける。3枠6番という絶好枠を引き当てたことで、過去の傾向から推せる内枠の差し馬という点にも合致する。みなぎる闘志を奮い立て、なんとか3着以内に食い込んでほしい。
オッズを度外視して勝ち馬を当てるゲームなら、アーモンドアイを最有力視。前走は久々の敗戦となったが、海外遠征帰り、ベストよりは若干短いマイル、極端な内有利馬場で外枠、スタート後不利という悪条件が重なった。それでも直線は進路を探しながら外に出し、上がり32.4の鬼脚で猛然と追い込んで、完璧に立ち回った上位2頭と小差の3着。「負けて強し」どころか「負けて怪物」と言っていい内容だ。サートゥルナーリア以上に末脚の威力がある馬だし、ルメール騎手が相手の手の内を知っている点も強み。1枠2番という枠がこの馬にとっては内すぎる印象を抱くものの、恐らくは杞憂に終わるだろう。
サートゥルナーリアの能力も例年の相手関係なら間違いなく本命級だと認めてはいる。だが、アーモンドアイに標的にされる以上、勝ち切るには脚を残しつつ引き付け過ぎない絶妙な仕掛けが求められる。いくら名手スミヨンとはいえ、テン乗りに不安ゼロの馬ではないし、ダービーを思うと休み明けの方が気性的には安心して見ていられる。叩いたことがマイナスに出る可能性と騎乗の難易度を考慮してひとつ下げた。
人気を背負う両馬がとんでもなく強いと考えた以上、相手は点数を広げても仕方ないだろう。よってあとは好枠を引いたスワーヴリチャードだけを押さえておくことにする。
▽天皇賞(秋)予想▽
◎ユーキャンスマイル
○アーモンドアイ
▲サートゥルナーリア
△スワーヴリチャード
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