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禁止薬物「テオブロミン」とは? グリーンカルを摂取した競走馬156頭が競走除外に

2019 6/17 15:00三木俊幸
競走除外馬が多数いた函館SSⒸ三木俊幸
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Ⓒ三木俊幸

競馬界に衝撃が走る

6月15日未明、衝撃が走った。JRAからの緊急のアナウンスがあり、飼料添加物のグリーンカルに一時的に競走馬の能力を高める効果がある禁止薬物「テオブロミン」が含まれていたことが判明した。

週末に東京、阪神、函館の各競馬場で出走予定だった156頭については、禁止薬物影響下にある可能性が否定できないため、競走から除外すると発表したのだ。

この禁止薬物「テオブロミン」とは、カカオの主成分である、カフェインに似た成分で、覚醒効果や血管拡張の効果があるとされている。副作用の影響で、死に至るケースもある。一般的に、犬にチョコをあげてはいけないとされているが、競走馬も例に漏れない。

これに伴い、重賞の函館スプリントSはシュウジ、ライトオンキュー、リナーテ、ダノンスマッシュ、トウショウピスト、タマモブリリアンの6頭が除外となり、7頭立てに変更。もう一つの重賞、ユニコーンSはサトノギャロスとロードグラディオの2頭を除外して13頭立てとなった。

これら除外となった多くの馬は栗東所属の馬(栗東21厩舎、美浦6厩舎)で、特に阪神開催と函館開催で大きな影響が見られた。当該厩舎の次週出走予定馬については15〜16日の間に薬物検査用の採血が行われた。

問題となったグリーンカルはJRAファシリティーズでも紹介されている一般的なサプリメントだった。通常サプリメントを販売する際には、競走馬理化学研究所の検査結果が出てから販売されるが、今回は検査結果が判明する前に販売していたという。在庫品については速やかに回収が進められたが、まさか禁止薬物が混入されているとは誰も想像すらしていなかっただろう。

岩手競馬では開催が中止に

今回のケースでは、該当する可能性のある馬のみが競走から除外される形となったが、それは意図して混入させたものではなく、正式に販売されていたサプリメントで、長年にわたり使用してきたものから突然禁止薬物が検出されたため、厩舎側は被害者と言ってもいい。

地方の岩手競馬では、昨年の7月以降複数回にわたって禁止薬物の「ボルデノン(筋肉増強剤)」が検出。主催する岩手県競馬組合では「故意的なもの」と判断し、合計14日間、147レースが中止になるということもあった。

その後再発防止策を強化し、今年の3月23日から再開されているが、いまだに実態は解明されていないのが現状だ。

今回JRAとしては、何者かが故意に混入させたものでないと判断し、開催を行ったのだろう。厩舎側としても、正式に許可されているものを使用していただけに、レースに向けて必死に調整を続けてきた陣営の気持ちを考えると、いたたまれない気持ちになる。

レースで全力を発揮する競走馬にとって、疲労回復効果が期待されるサプリメントの摂取は今後も欠かすことはできない。それだけに今後二度とこのような事態を引き起こさないよう厳重に、かつ徹底した管理が求められる。