痛恨のダービー
今年のダービーは前半が57秒台で入るハイペース。この数字を見た時は「後ろでも届くかな?」と思ったが、結果は2番手を追走したロジャーバローズが押し切った。
ロジャーバローズの1000m通過タイムは目算で59秒台。これは先々週のオークスとだいたい同じ数字。オークスでは「スローと感じた」とデムーロ騎手がコメントしていたが、要するにロジャーバローズはスローペースで逃げていたのと同じということになる。ある程度の位置にいたダノンキングリーは勝ち馬を追い詰めたが、後方にいたヴェロックスやサートゥルナーリアが並ぶところまでいかなけなかったのは、展開や馬場を考えると仕方がない。
しかし、やっと◎にしたダノンキングリーが来たのに相手が抜け。そもそも、あの足でかわせないとは思わなかった。
勝ったロジャーバローズは断然人気のサートゥルナーリアと同じ角居厩舎。「同厩舎の2頭出しは人気薄」とはよく言ったもの。いつか使う日がくるかもしれないので、心に刻んでおきたい。
それにしてもヴィクトリアマイル、オークス、そしてダービーと3週連続でレースレコードである。当然ながら安田記念も速い時計が出る可能性があるわけで、これでは香港馬が敬遠するのも無理がない。
リピーターが10年中9回で連対
さて、安田記念のデータ分析を行っていく。下表は安田記念の過去10年の1~3着馬を記載したものだが、色が変わっているのは2回以上このレースで馬券に絡んだ馬。こう見ると、続けて同じ馬が来ることが多いことがよく分かる。

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安田記念で馬券に絡んだことがない馬同士で決まったのは昨年だけ。それでも9年連続はすごいのだが、本当に昨年で記録は止まってしまったのだろうか。
それは否である。昨年1~3着以内に来た馬が今年も絡めば、昨年、さらに今年もデータは継続されることになる。
ここまでいえばピンときた人がいるかもしれない。そう、昨年馬券に絡み、今年も出走しているモズアスコットとアエロリットのどちらか、または両馬が3着以内に来る確率が極めて高いということだ。どちらがより軸にふさわしいか、再びデータをそろえて検討していく。
下表は馬券に絡んだ1回目と2回目の前走を表したもの。10年前のウオッカから4頭連続で同じレースに使っていたが、近年はいずれも違うレースを経由している。アエロリットは昨年と同じヴィクトリアマイルを、モズアスコットは違うレースを使って本番に挑んでいる。どちらも可能性はあるが、最近の主流からいえば違うレースを使っているモズアスコットの方が優勢か。
また、1回目より2回目の方が着順を落としている馬がほとんど。これは推測になるが、1回目で馬券に絡んでレース適性を見せたため、2回目は安田記念を最大の目標にして、前哨戦を良化途上で使ったからではないかと思われる。
アエロリットもモズアスコットも同様に着順を落としているが、両馬とも最大の目標をこの安田記念におき、仕上げてきた可能性は大だ。

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続いて安田記念での1回目と2回目の着順。上げたり、下げたり、同じだったりとバラバラだが、1→3着、3→1着と1つ飛びのパターンは皆無。前回2着のアエロリットは1~3着まで可能性があるが、前回1着のモズアスコットは1、2着のどちらかということになる。馬連(馬単)の軸にするならモズアスコット、3連系の軸にするならアエロリットということか。
意外にマイラーズC組が不調
どちらを軸にするかはひとまず置いておいて、相手候補を探してみる。当然ながら今回の注目馬にして絶対的存在はアーモンドアイ。今回は海外帰りということで、過去に帰国緒戦となった馬のデータを調べてみた。

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微妙なところだが、前走1着馬に限れば3戦1勝2着1回と悪い数字ではない。このデータだけ取捨の判断はしづらい。
また、前走距離を調べると、1800mを使って安田記念に挑んだ馬の数字がいい。アーモンドアイの前走はその1800m戦。この馬を切るのはデータ上でも難しいようだ。

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逆に同じマイルを使ってきた馬の数字が意外によくないのは驚き。内訳を見ると、ダービー卿CT、NHKマイルC、ヴィクトリアマイル組は優勝経験があるのに、前哨戦であるはずのマイラーズC組は【0-1-6-35】と散々。
今年は有力馬のダノンプレミアム、インディチャンプ、そして軸候補のモズアスコットがこれに該当。2着が1回あるとはいえ、確率から考えるとかなり悪く、割引が必要だろう。
今年も来るのはアエロリット
モズアスコットが分の悪いマイラーズC組ということで、軸はアエロリットにする。相手だが、アーモンドアイが残っている以上は切るわけにもいかず、かといって来ると配当が期待できない。
幸い、アエロリットは3連系の軸と結論が出ているので、ワイドでも配当が期待できる穴っぽい馬を探してみる。

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上記の表は父、または母の父にナスルーラ系を持つ馬の成績。勝率、連対率ともに悪くないが、何といっても人気。1番人気で勝った馬(ウオッカ)もいるが、あとは軒並み低人気。ナスルーラといえば一時代を築いた大種牡馬で、日本でも我先にとナスルーラの系統が輸入された時期があった。
今ではサンデー系をはじめ、他血統に押されて年々少なくなっているが、今年も無事にその血を引く出走馬がいた。それは、母の父にサクラバクシンオーを持つエントシャイデンだ。サクラバクシンオーはこのレースで2回馬券に絡んだグランプリボスの父でもある。
エントシャイデンは重賞実績もなく人気薄は確定的。しかし、鞍上の田辺騎手はここ5年で3回も馬券に絡んでいる「安田記念男」。さらに、矢作厩舎はエントシャイデンのほかに昨年の覇者モズアスコットも出走。そう、この格言を使う時が早くも来たのだ!
「同厩舎の2頭出しは人気薄」
というわけで、今回は趣向を変えてアエロリットからエントシャイデンへ、ワイド1点勝負をしてみたい。また、安田記念は過去10年で3連複でも万馬券が7回も出ている。この2頭から総流しというのも夢があっていいかも。
《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想や「最終逆転」コーナーを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬などの記事も執筆中。