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AJCCは鬼に金棒!ジェネラーレウーノで決まり!

2019 1/17 15:00門田光生
馬群ゴール前,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

内回りと外回りの違い

アメリカジョッキークラブカップ(以下AJCC)で思い出すのは2015年。1.3倍という断然の人気に推されたゴールドシップが7着に敗れたあの年である。

筆者もまずは負けないだろうと思っていた一人で、レースが終わった後は故障でもあったのかと心配したほどだ。確かにゴールドシップは気ムラなところがあって大敗を何度も経験していたが、それはダービー、京都大賞典、ジャパンカップ、天皇賞(春)、そして凱旋門賞と、いずれも苦手とする直線の長いコースでのもの。小回りコースでは抜群の成績を収めていた。

ゴールドシップが中山で崩れたのは、このAJCCと引退レースになった有馬記念だけ。最後の有馬記念は衰えが見えてきた頃で仕方がないと思うが、なぜAJCCだけ見せ場なく圏外に沈んだのだろうか。

外回り内回り,ⒸSPAIA

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直線が同じ距離なので見落としがちなのだが、中山にも京都や新潟と同じく内回りと外回りコースがあるということ。ゴールドシップが中山の外回りを走ったのは、後にも先にもこのAJCCだけ。それが全てではないだろうが、恐らく内回りだったら結果は違ったのではないかと思っている。直線の長さが同じでも、外回りは外回りということを教えられた一戦だった。

格言通りの菊花賞

最強世代とうわさされる今年の4歳勢。2018年は女王アーモンドアイがJCを制し、若きダート王ルヴァンスレーヴはチャンピオンズCを勝ち、さらにマイルCSを制したステルヴィオ、ブラストワンピースまでもが有馬記念を勝って古馬相手にGⅠ4勝を挙げた。これは下記の表にあるように過去10年で最も優秀な成績である。

重賞10勝は昨年と並んで1位タイ。2017年のように抜けた馬はいないが全体の層が厚いパターンと、2011年のように全体の層は薄いが、抜けた馬(オルフェーヴル、ロードカナロア)が出る2パターンのどちらかが基本だが、2018年は両方を兼ね備えていたことになる。その4歳世代は今年も好調で、京都金杯(パクスアメリカーナ)、日経新春杯(グローリーヴェイズ)と2勝を挙げて幸先のいいスタートを切っている。

3歳成績,ⒸSPAIA

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表にはその年の菊花賞馬も併記した。菊花賞は昔から「強い馬が勝つ」との格言があるレース。ここ10年の勝ち馬を見ても、その言葉は生きているといっていいだろう。 2015年度産、すなわち今年の4歳馬が最強世代ならば、菊花賞を勝った馬が最強馬になる資格は十分にあるといえる。

前途洋々フィエールマン

前ふりが長くなったが、2018年の菊花賞を制したフィエールマンがAJCCに登場する。菊花賞ではダークホースの存在でしかなかったが、堂々たる内容で勝利。当時がキャリア3戦、重賞未勝利、しかも休み明け。そんな経歴で菊花賞に挑戦し、先に抜けた2着馬を内から封じ込めるという強い内容で勝ってみせるのだから、ただ者ではない。最強世代の「強い馬」が勝つレースを制した馬として、ここは負けられない一戦といえる。

他世代からは昨年の覇者ダンビュライト。AJCC勝ちの他、皐月賞、弥生賞、そしてオールカマーで3着があり、中山コースとは好相性。昨年走った時より体重が20kg以上も増えているように、まだまだ成長中。今年も好勝負は間違いないだろう。

ミライヘノツバサは2年前の3着馬。全4勝が中山で挙げたもので、日経賞で2着の実績もある。父のドリームジャーニーも現役時代、中山巧者で有名だった。その血をきっちり受け継いでいるといえる。

サクラアンプルールは前走の有馬記念が7着。今年で8歳を迎えたベテランだが、GⅡクラスならまだまだやれそうだ。この馬も4勝中3勝が中山、もう1勝は小回りの札幌(GⅡ札幌記念)でのもの。大駆けがあっても不思議ではない。

メートルダールはひと叩きして状態が上向き。重賞勝ちの実績馬でもあるが、どちらかというと広いコース向きの印象。今回は軽視したい。

1年以上の休養から復帰するシャケトラも楽しみな1頭。前走の有馬記念(2017年)はキタサンブラックをマークする形。4角での手応えがよく「ひょっとすると」と思わせた。この馬も中山で前述の有馬記念の他に日経賞を勝っているコース巧者。地力的にも本来は主役を張れる馬だが、何せ500kgを超える大型馬。復帰緒戦から全開とはいかないか。まずはここを無事に走って次につなげたいというのが本音かもしれない。

中山巧者×中山巧者

フィエールマンと同じく4歳世代ではジェネラーレウーノが出走。菊花賞ではハナへ行ったが、2走前のセントライト記念では大逃げした馬を見る形で運んで勝利。決して一本調子の馬ではない。中山は重賞3勝、3着1回と得意のコース。特に、今回と同じ条件のセントライト記念を勝っているのも強みだ。

田辺成績,ⒸSPAIA

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上記の表を見ると分かるように、鞍上の田辺騎手は冬場の中山を得意としている。また、2014年のヴェルデグリーン、2015年のクリールカイザーと、ここ5年でAJCCを2度制覇。両馬とも中山で4勝しているコース巧者だった。中山を得意にしている者同士がタッグを組めば、まさに鬼に金棒。フィエールマンを負かす可能性があるとすれば、この馬をおいて他にはいない。

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。編集部チーフも兼任。本社予想、「最終逆転」コーナーを担当。現在、サンケイスポーツにて地方競馬の記事を執筆中。