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このレースに相性のいいディープ産駒はグランアレグリアただ1頭 朝日杯FS展望

2018 12/13 11:00門田光生
グランアレグリア,ⒸJRA
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ⒸJRA

先週を振り返る 想像を超えたダノンファンタジー

朝日杯FSを展望する前に、阪神JFを少し振り返ってみる。

正直なところレースが始まる直前は、ダノンファンタジーは厳しいと思っていた。それは能力的な問題ではなく、この日の馬場は外枠にはいかにも不利だったからだ。

阪神JFまでに外回りコースで行われたレースが3つあった。

1つ目は5Rの新馬戦(芝1800m)。3角手前で先頭に立った馬が直線で差し返し気味に伸びて勝利。

2つ目は8Rの3歳以上1000万下(芝1600m)。こちらはポケットで我慢した馬がインを突いて抜け出し、外を回った差し馬は伸びそうで伸び切れなかった。

3つ目は9RのオリオンS(芝2400m)で、2番手から運んだ馬とインぴったりを回ってきた馬での決着だった。

ところが、11Rの阪神JFは大外を回した2頭の差し馬で決着した。当然ながらペースうんぬんの問題はあるだろうが、上位2頭の力が抜けていたということだろう。

ここ2年の連対馬4頭は全て桜花賞で馬券圏内に来ており、直結するレース。1着馬ダノンファンタジー、2着馬クロノジェネシスともに明るい未来が約束されたといっても過言ではない。

そのほかで気になったのは5着のプールヴィル。直線で前をふさがれてブレーキを踏んだにもかかわらず、立て直してしっかり伸びていた。日本ではほとんど見かけないルアーヴル産駒ということもあり、今後どんな風に成長していくか楽しみだ。

コース変わりで恩恵を受けたのは?

それでは、今週行われる朝日杯FSを展望してみよう。

このレースが中山から阪神に場所を変更したのが2014年。中山も阪神も同じ右回りで直線に坂のあるコース。そう書けばあまり変わらないように思えるが、実は全く性質が違うレースになってしまった。分かりやすい例がディープインパクト産駒だ。まずはディープインパクト産駒の12月における中山、そして阪神の芝実績を比較してみる。

ディープ12月成績,ⒸSPAIA

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勝率も連対率も阪神の方が圧倒的に上。何より出走回数が示す通り、陣営もディープインパクト産駒は冬場の中山は合わないと感じて出走を控えているのがよく分かる。

次は朝日杯FSの産駒成績。ディープインパクト産駒は2010年に初年度産駒がデビューしている。そこから阪神に移る前の2013年までは勝ち馬が出ていないのだ。

中山、阪神勝ち馬,ⒸSPAIA

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対して、阪神で行われた2014年以降は4年で3回も優勝馬を出している。 ディープインパクト産駒の特徴は何といっても切れ味。冬場でより力の要る中山より、上がり勝負になりやすい阪神外回りの方が合うのは間違いない。

今年の出走登録馬でディープインパクト産駒はグランアレグリアただ1頭。前走のサウジアラビアRCでは出負けをして、向正面で進出に足を使ったにもかかわらず、牡馬をねじ伏せる完勝だった。阪神JFは同厩舎のシェーングランツ(4着)に任せて牡馬相手のこちらに回って来たが、それは強かったここ2走の内容からくる自信の裏返しだろう。

何より、阪神に変わった2014年以降、ディープインパクト産駒が出走した年は必ず勝っている。このことからも、信頼度はかなり高いとみていい。

進撃のロードカナロア

ディープインパクトと同様に阪神変わりの恩恵を受けた種牡馬がいる。それはディープインパクト産駒が出走しなかった2015年にワンツーを決めたキングカメハメハだ。

キングカメハメハはディープインパクトより多彩なタイプを輩出しているが、根っこは同じで軽いスピードと上がりの速い決着を好む。残念ながらキングカメハメハ産駒は今回出走していないが、その孫であるロードカナロア産駒のケイデンスコール、ファンタジストの2頭に注目したい。

ロードカナロアの代表産駒といえば、今年牝馬三冠やジャパンカップを勝った現役最強馬アーモンドアイ。いろいろな距離を勝っていることを考えると万能型に思えるが、自身の現役時代の成績、そして重賞勝ちした産駒のステルヴィオ(マイルCS芝1600m)やダノンスマッシュ(京阪杯芝1200m)から考えてもベストはマイル以下だろう。

これは個人的な感想だが、アーモンドアイも一番衝撃的な勝ち方をしたのは桜花賞だったと思う。ロードカナロア産駒は今年も2歳馬が大活躍。ディープインパクトの連勝に「待った!」をかけられるのか、要注目である。

あとは同じくキングカメハメハの血を引く種牡馬を父に持つソルトイブキとニホンピロヘンソンを加えた4頭を相手候補に推したい。

ディープインパクト産駒が1頭しかいないなら、自然と軸が決まって買いやすいレース。発走は15時40分。

《ライタープロフィール》門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。晩年は編集部チーフも兼任。本社予想、「最終逆転」コーナーを担当。現在、サンケイスポーツにて執筆中。