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朝日杯フューチュリティステークスの歴史と傾向

2018 12/11 11:26SPAIA編集部
競馬
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朝日杯フューチュリティステークスの歴史

今年で70回の歴史を数える「朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)」。前身である「朝日杯3歳ステークス」はグレード制導入後にGⅠと格付けされた。のちに、牡馬、牝馬のチャンピオンを明確に決定するとの意図で、1991年からは阪神3歳牝馬ステークス(現在の阪神ジュベナイルフィリーズ)とのすみ分けが行なわれた。

馬齢表記を世界基準に合わせた2001年からは現在のレース表記になり、ここまで様々な変遷をたどりながらも牡馬の2歳チャンピオン決定戦との位置づけで、勝てばJRA賞・最優秀2歳牡馬の座はほぼ確定の重要なGⅠレースとして行なわれていた。

しかし近年の勝ち馬のやや寂しい顔触れをみると、翌年のクラシックにつながっていないように思える。

その要因は多岐に及ぶが、まず挙げられるのは1600mの距離。クラシックでは皐月賞(2000m)、ダービー(2400m)、菊花賞(3000m)と距離を延ばしながら戦うことが求められる牡馬にとって、成長途上の2歳時にスピード重視の1600m戦で目いっぱいの走りを強いることがプラスに働くとは限らない。

まして、長らく行われてきた中山競馬場の1600m戦は、トリッキーで紛れの多いことでも知られるコース。リスクを冒してまで取りに行くタイトルではないと、出走を見合わせる陣営が多く現れても不思議はない。

さらに、牡牝を区別した1991年あたりから東西の実力差が逆転し、関西馬が優勢となり始めると、この傾向に拍車がかかった。

中山競馬場は関東にあるため、輸送をするリスクが関西馬にはある。90年代初めの勝ち馬にこそナリタブライアン、ミホノブルボンのビッグネームが見られるが、その後は暮れの阪神に2000mで行われるラジオたんぱ杯3歳ステークス(GⅢ)に有力馬が流れていく事象を引き起こした。

顕著な例でいまだに語り草となっているのが2000年。朝日杯フューチュリティステークスの優勝馬がメジロベイリーに対して、ラジオたんぱ杯3歳ステークスはアグネスタキオン、ジャングルポケット、クロフネが1~3着。

のちに実績を残す馬がGⅠではなくGⅢに出走するという見事なまでの逆転現象に、格付けは意味を成さないのではという疑問の声が沸き起こった。

是正を目指して番組改編が行なわれたのは2014年。朝日杯の開催場所を中山から阪神へと移し、ラジオNIKKEI杯2歳ステークス(前ラジオたんぱ杯3歳ステークス)(GⅢ)は、東のホープフルSと統合されて近くGⅠへと昇格することが発表された。そして、2017年に正式にGⅠとなった。

牡牝馬のGⅠが2週に渡って阪神のマイル戦で行なわれる形ではあるが、タフで紛れの少ないコース設定に、来期のクラシックを狙う素質馬が集まることが期待された。

ダイナミックにその表情を変えてきた現在の朝日杯フューチュリティSをデータ分析するなら、遠い過去までさかのぼらず、阪神で行なわれた近4年の結果を徹底的に洗い直すことが最優先であろう。

牝馬は2016年に1番人気で敗れているが果たして

戦前からメンバーが小粒に見えた2014年、2016年よりも、とりわけ注目すべきは強い馬が強い競馬をした2015年、2017年のレースだろう。

2015年の勝ち馬リオンディーズは中間の追い切りに騎乗したミルコ・デムーロが抑え切れないくらいに引っ掛かり、競馬は折り合い重視。外を回ってひとまくりの競馬でタイトルをものにした。

2着エアスピネルがクラシック3冠で善戦したことからも決してレベルは低くないレースだった。ただし、ここで長い距離を走るのを教えることができなかったリオンディーズはその後、活躍できずにターフを去ることになる。

対して2017年のダノンプレミアムは1番枠が不利とならないように、テンからポジションを取りに行くことで危なげなく押し切ってしまった。

これは前哨戦で破格のレコードをマークした勝ち馬の強さを他が認めたと推察され、2番枠に入った同じ厩舎のフロンティアが控えたこともあり、ペースが流れず、ほぼ無風での戴冠となった特異なケースだった。

2000mのGⅠホープフルSとのすみ分けが進むと、短距離指向の強い馬が集まることとなり、前半に負荷のかかる展開が多くなると予測される。

すなわち、これまで長めの距離でタフな競馬を経験したことのある有力馬なら、容易に崩れることのない人気サイドの一戦が予想される。たとえクラシックディスタンスを意識した競馬をしようとも、力でねじ伏せる実力馬にむやみに逆らうべきではないだろう。

ただし、予想を難しくするのは牝馬の取捨だ。2016年、1番人気に推されたミスエルテが4着に敗れたことからも簡単に勝てないとの声も上がるだろうが、この敗戦はイレ込みなどで自滅した感もある。阪神ジュベナイルフィリーズの日程が、香港国際競走とかぶることでジョッキー確保が難しくなるので、1週予定をずらすのは、むしろ積極的に勝ちを狙いにきたと捉えることもできる。

2歳時期なら完成度で上回るのが牝馬。牡馬が2つのGⅠレースに分散されてレベルを落とす可能性も低くはなく、牝馬の勝利があれば今後のトレンドとなるかもしれない。