朝日杯フューチュリティステークスの歴史
今年で70回の歴史を数える「朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)」。前身である「朝日杯3歳ステークス」はグレード制導入後にGⅠと格付けされた。のちに、牡馬、牝馬のチャンピオンを明確に決定するとの意図で、1991年からは阪神3歳牝馬ステークス(現在の阪神ジュベナイルフィリーズ)とのすみ分けが行なわれた。
馬齢表記を世界基準に合わせた2001年からは現在のレース表記になり、ここまで様々な変遷をたどりながらも牡馬の2歳チャンピオン決定戦との位置づけで、勝てばJRA賞・最優秀2歳牡馬の座はほぼ確定の重要なGⅠレースとして行なわれていた。
しかし近年の勝ち馬のやや寂しい顔触れをみると、翌年のクラシックにつながっていないように思える。
その要因は多岐に及ぶが、まず挙げられるのは1600mの距離。クラシックでは皐月賞(2000m)、ダービー(2400m)、菊花賞(3000m)と距離を延ばしながら戦うことが求められる牡馬にとって、成長途上の2歳時にスピード重視の1600m戦で目いっぱいの走りを強いることがプラスに働くとは限らない。
まして、長らく行われてきた中山競馬場の1600m戦は、トリッキーで紛れの多いことでも知られるコース。リスクを冒してまで取りに行くタイトルではないと、出走を見合わせる陣営が多く現れても不思議はない。
さらに、牡牝を区別した1991年あたりから東西の実力差が逆転し、関西馬が優勢となり始めると、この傾向に拍車がかかった。
中山競馬場は関東にあるため、輸送をするリスクが関西馬にはある。90年代初めの勝ち馬にこそナリタブライアン、ミホノブルボンのビッグネームが見られるが、その後は暮れの阪神に2000mで行われるラジオたんぱ杯3歳ステークス(GⅢ)に有力馬が流れていく事象を引き起こした。
顕著な例でいまだに語り草となっているのが2000年。朝日杯フューチュリティステークスの優勝馬がメジロベイリーに対して、ラジオたんぱ杯3歳ステークスはアグネスタキオン、ジャングルポケット、クロフネが1~3着。
のちに実績を残す馬がGⅠではなくGⅢに出走するという見事なまでの逆転現象に、格付けは意味を成さないのではという疑問の声が沸き起こった。
是正を目指して番組改編が行なわれたのは2014年。朝日杯の開催場所を中山から阪神へと移し、ラジオNIKKEI杯2歳ステークス(前ラジオたんぱ杯3歳ステークス)(GⅢ)は、東のホープフルSと統合されて近くGⅠへと昇格することが発表された。そして、2017年に正式にGⅠとなった。
牡牝馬のGⅠが2週に渡って阪神のマイル戦で行なわれる形ではあるが、タフで紛れの少ないコース設定に、来期のクラシックを狙う素質馬が集まることが期待された。
ダイナミックにその表情を変えてきた現在の朝日杯フューチュリティSをデータ分析するなら、遠い過去までさかのぼらず、阪神で行なわれた近4年の結果を徹底的に洗い直すことが最優先であろう。