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未出走馬がまさかの重賞参戦 出走理由は「策士」森調教師による戦略か

競馬
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Ⓒゲッティイメージズ

グレード制導入以降初となる未出走馬の重賞挑戦

3月4日(日)、中山競馬場で行われる弥生賞(GⅡ・芝2000m)の出走馬が発表された。以前のコラムでも紹介したGⅠ朝日杯FS優勝馬のダノンプレミアム、東京スポーツ杯2歳S(GⅢ)を制したワグネリアン、シクラメン賞でJRA2歳レコードを更新したオブセッションなどの豪華メンバーの中に1頭、聞きなれない名前の馬がいる。

馬名はヘヴィータンク(栗東・森秀行厩舎)、なんと今まで一度もレースに出走していない馬が重賞レースに登録してきたのだ。未出走馬が重賞レースでデビューするのは1984年のグレード制導入以降初の事例となる。今回のコラムでは、なぜ異例とも言える重賞レースでデビューすることになったのか検証していく。

重賞レースは10着でも賞金がもらえる

なぜ弥生賞をデビュー戦に選択したのかについて見ていくと、大きく分けて2つの理由が考えられる。まず1つ目の理由として、弥生賞で3着以内に入った馬には4月15日(日)に行われるクラシック第一弾の皐月賞の優先出走権が与えられるということが挙げられる。しかし、クラシックに出走するためには「未勝利(収得賞金が0円)、未出走馬は不可」というルールが存在する。ヘヴィータンクが皐月賞に出走するためには2着以内に入り、賞金を加算する必要があるが、今年は例年以上にメンバーレベルは高く、2着以内に入ることは容易ではないだろう。

2つ目の理由として、出走奨励金を獲得するための挑戦が考えられる。重賞レースでは通常の賞金とは別に、6着から10着に入った馬に出走奨励金が付与される。弥生賞の出走馬は10頭のため、仮に10着になったとしても賞金1,511,000円(出走奨励金1,080,000円+特別出走手当431,000円)を手にすることができ、新馬戦に出走して4着となった場合の賞金1,477,000円(本賞900,000円+特別出走手当407,000円+内国産馬奨励金170,000円)よりも高い金額となっている。このことからも、出走に踏み切った理由は後者の可能性が高いと推測される。

幅広いレース選択をする”策士” 森秀行調教師

ヘヴィータンクを管理する森秀行調教師は、2000年の皐月賞と菊花賞を制したエアシャカール、2001年のフェブラリーSで優勝し、12歳で引退するまでに数多くの地方交流重賞にも参戦したノボトゥルーなど多くの名馬を管理した名トレーナー。中央、地方さらに海外を問わず幅広いレース選択をすることで知られている。馬の能力を見極め、オーナーに1円でも多く還元するというスタイルはまさに経営者の鏡であり、弥生賞のレース選択についても理にかなっている。

単にレースを見るだけではなく、調教師の考え方や出走に至った背景を知っておくことで、今までとは違った視点で競馬を楽しむこともできる。あなただけの競馬の楽しみ方を見つけてみよう!