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【阪神JF】「対牡馬の1400m以上重賞好走馬」は複回収率145% データで導く穴馬候補3頭

2025 12/11 17:00鈴木ユウヤ
阪神JF2025 データで探す穴馬,ⒸSPAIA
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データで見る「穴候補3頭」

今週は阪神競馬場で2歳女王決定戦・阪神ジュベナイルフィリーズが行われる。野路菊Sを勝ったアランカールを筆頭に世代の有力馬が揃ったものの、アルテミスS勝ち馬フィロステファニは故障で引退、ファンタジーSを制したフェスティバルヒルも骨折で回避。アインブライドが勝った1997年以来となる重賞馬不在のメンバーとなった。

その97年は7→6→8番人気での決着。今年もひと波乱あっておかしくない。様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴候補を導き出した。

「対牡馬の1400m以上重賞好走馬」は複回収率145% タイセイボーグ

1頭目はタイセイボーグ。今夏の新潟2歳Sではリアライズシリウスに4馬身離されたものの2着と健闘した。


阪神JF 牡馬混合JRA重賞の実績別成績,ⒸSPAIA


阪神JFでは「牡馬相手の重賞好走歴」がひとつの手掛かりとなる。「牡馬混合のJRA重賞で3着内歴がある馬」の成績は【3-2-6-23】複勝率32.4%、複回収率109%(過去10年)。函館2歳Sや小倉2歳Sといった1200m重賞を除外すると【3-2-5-14】同41.7%、複回145%までアップする。

新潟2歳Sや札幌2歳S、あるいはサウジアラビアRCなど、牡馬の強豪が使ってくるレースで結果を出してきた馬には要警戒だ。

今年はスターアニスとタイセイボーグが該当するが、マイルの経験と適性を考慮して後者を推す。展開利もあったとはいえ新潟2歳Sではフェスティバルヒルに先着、アルテミスSは伸びない内目を突いて上がり最速だった。ここでもチャンスは十分だ。


「1~2月生まれのキレる馬」を狙え ショウナンカリス

2頭目はショウナンカリス。勝ち上がりに3戦を要したが、その後すずらん賞、ファンタジーSで連続2着。そのファンタジーSは上がり33.5秒をマークして勝ち馬とタイム差なしだった。


阪神JF 生まれ月と前走上がり別成績,ⒸSPAIA


「2歳重賞では早生まれが有利」とよく言われるが、この阪神JFでも確かにそういう傾向が見られる。過去10年で「1~2月生まれ」は【5-6-4-45】複勝率25.0%、複回収率77%。「3月以降生まれ」【5-4-6-103】同12.7%、複回37%とは好走確率でだいたい2倍の差がついている。

また、上がり勝負になりやすい阪神外回りが舞台とあって、前走でも速い上がりを使えていた馬が好成績。具体的には「前走上がり33.9秒以下」の馬が【6-6-5-41】複勝率29.3%。同34.0秒以上の【3-3-4-92】同9.8%を圧倒していることが分かる(※京都代替の昨年除く)。

上記の「1~2月生まれ」「前走上がり33.9秒以下」を両方満たせば【4-4-4-13】複勝率48.0%、複回収率144%。今年はまず1番人気想定のアランカール、ギャラボーグ、そしてショウナンカリスが該当する。

ショウナンカリスはおそらく、これまでの戦歴から距離を不安視されて人気にならないパターンだろう。しかし母ロシアンサモワールは1800mで新馬勝ち、父がリアルスティールなら別に短距離特化の血統ではない。1ハロン延長がプラスとは言わないが、致命的なマイナスでもないはずだ。ファンタジーS最先着の馬が想定オッズ10番人気付近なら狙ってみても面白い。


「牝馬の国枝」最後の牝馬限定GⅠ ヒズマスターピース

最後は赤松賞を逃げ切ったヒズマスターピース。管理するのは「牝馬の国枝」こと国枝栄調教師だ。


国枝栄厩舎 牝馬限定GⅠ成績,ⒸSPAIA


異名に違わず、国枝厩舎の牝馬限定GⅠ成績は優秀そのもの。JRA通算で【12-10-4-39】複勝率40.0%で、うち2歳か3歳の世代限定GⅠなら【10-9-1-25】同44.4%、複回収率は109%と黒字域に入る。ダメ押しで「前走4着以内」の馬に限ると【10-9-1-19】同51.3%、複回収率126%。半分以上が馬券に絡んでいた。

このデータを使えるのも今回が最後。来年2月末で定年のため、これが国枝厩舎にとって最後の「牝馬限定GⅠ」となる。ラストに好結果を期待したい。

赤松賞当時の東京芝は非常に速い時計が出るコンディションだった。よって下記の数値的評価は参考程度にすぎないが……。

ヒズマスターピースの勝ち時計1:33.6は同厩舎の先輩ステレンボッシュと、のちにマイルCSを勝つナミュールの1:33.8を上回るレースレコード。2歳の東京芝1600m戦を「勝ち時計1:33.9以下」かつ「レース後半5F57秒台」で勝った牝馬は、現2歳を除くとグランアレグリア、チェルヴィニア、マピュース、ナミュールの4頭しかいなかった。

大幅な馬体減だった前走から中2週での関西遠征、逃げる形しか経験していない点など不安要素も色々あるが、前走の数値そのものはGⅠでも期待が持てるレベルと言っていい。

《ライタープロフィール》
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Xなどで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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