短距離も熱い冬のダート戦線
冬はダートがいい。乾ききった馬場をかき分けるように走る馬たちが砂煙をあげる。雲一つない冬空と北風に流されていく砂塵。ダートは冬場がよく似合う。重賞番組上でも冬はダートの季節。チャンピオンズC、東京大賞典、フェブラリーSと続き、春の中東へつながっていく。
それは中距離カテゴリーだけに限らない。短距離もまた熱い。JRA唯一のダート1200m重賞カペラSは翌春につながるだけではない。一貫してダート短距離を歩んできた猛者たちにとって、是が非でもとりたいタイトルでもある。
2008年に第1回を迎えたカペラSは昨年まで17回行われ、フルゲート割れはたった一度しかない。それも15頭立て。テイエムトッキュウが勝った2023年は除外馬が6頭もいた。
みんな、タイトルを獲得するなら、ここが最大のチャンスだ。そんな意気込みが聞こえてきそうだ。もう少しダート短距離の選択肢があってもいい気がするが、その分、カペラSの価値は非常に高い。
ここからは過去10年分のデータを使用し、今年のカペラSを展望する。
まずは人気別成績から。1番人気【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%は取りたてて目立つ数字ではないが、2番人気【3-2-3-2】勝率30.0%、複勝率80.0%など4番人気以内が目立つ。
勝ち馬はすべて4番人気以内であり、5番人気【0-0-0-10】が象徴するように上位4頭が強い。さすがにJRA唯一のダート1200m重賞らしく、衆目一致の短距離上位クラスはそう簡単には崩れない。
伏兵の分布は6番人気【0-0-3-7】複勝率30.0%、7番人気【0-1-2-7】複勝率30.0%ぐらい。GⅠの裏、中山ダート1200mという舞台設定を理由に大振りしたくなるところだが、ここはぐっとこらえ、手堅くいきたい。
年齢をみると、3歳【4-0-1-10】勝率26.7%、複勝率33.3%、4歳【3-3-1-23】勝率10.0%、複勝率23.3%とスプリントらしく若い馬の成績がいい。
とはいえ、5歳【2-3-4-41】勝率4.0%、複勝率18.0%など数字こそ低いが、馬券圏内に入ってくる余地は十分ある。ダート戦はベテランを甘くみると痛い目に遭う。バランスよく配置しよう。
JBCスプリントは距離に注意
昨年覇者ガビーズシスターが連覇を狙う。このレースの連覇は18、19年コパノキッキングだけ。今年はサウジ遠征で3着と結果を残し、その後は2戦して5、4着。少々物足りなく映るが、無理使いはしておらず、ここは狙った鞍だ。
前走クラス別成績では前走地方が【3-4-2-24】勝率9.1%、複勝率27.3%。そのうち、JBCスプリントが【2-3-2-8】勝率13.3%、複勝率46.7%と強力だが、これは前走1200mに限ると【1-2-1-6】であり、残りは1400m【1-1-1-2】。今年のJBCスプリントは船橋1000m。例年のデータをそのまま当てはめていいものか。
もうひとつがテレ玉杯オーバルスプリント【1-1-0-2】勝率25.0%、複勝率50.0%。ガビーズシスターがこれに該当する。戦歴通り、浦和とはいえ、1400mは少々距離が長かった。距離短縮の今回は終いの差し脚が違うはず。前走着順は気にしなくていい。
前走オープン・Lは【4-6-4-74】勝率4.5%、複勝率15.9%。凡走も多く絞りづらい。そこで距離別の成績を出す。前走1200mは【3-5-3-46】勝率5.3%、複勝率19.3%。前走室町S、藤森S組が当てはまるが、これでも絞れない。
そこで1200m組の着順内訳をみる。1着【2-2-0-11】勝率13.3%、複勝率26.7%、2着【0-2-0-5】複勝率28.6%、5着【1-0-1-1】勝率33.3%、複勝率66.7%など掲示板以内は目安になりそうだ。
藤森Sを勝ったタガノミストは有力。重馬場とはいえ、勝ち時計1:09.4は合格点をあげたい。懸念点は未出走の中山コース。極端な前傾ラップへの対応だろう。
昨年のカペラSは前後半600m32.5-37.6。芝と間違えるほど速かった。一昨年は33.5-35.8なので、これぐらいで流れてくれれば、チャンス到来だ。
《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』（中央競馬ピーアール・センター）にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 伝説のグランプリホース』（ガイドワークス）に寄稿。
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