1番人気は勝つか負けるか半々
昨年は京都で行われた阪神JFは5、8、7番人気で決まった。1番人気ブラウンラチェットは16着と大敗し、GⅠの1番人気の難しさを改めて感じた競馬だった。
その原因は関東からの輸送で馬体を12キロも減らしたことがあげられる。輸送慣れした馬が増え、長距離輸送の不安を感じる場面は昔に比べると格段に減ったものの、やはり2歳牝馬に長旅は負担になる。
当日もイライラしており、翌年の三冠は9、7、18着。一度、乱れた歯車を元に戻すのは難しい。陣営とて細心の注意を払い、全力で1番人気に応えようと必死に取り組んだ。それでも結果が残せない。これが競馬の難しいところ。だれも責められない。
今年は登録26頭のうち11頭が出走枠を確保し、抽選対象の1勝馬は7/15の抽選に回る。出走できるかわからない。半数以上が除外になる。幸運を結果に結びつけられるか。陣営の祈りの日々が続く。
ここからは過去10年分のデータを使用し、今年の阪神JFを展望する。なお、データは2024年京都開催を含む。

人気別では、1番人気が【5-0-0-5】勝率、複勝率50.0%。勝つか負けるか半々。いかにこのレースが難しいかを物語る。以下、2番人気【1-3-1-5】勝率10.0%、複勝率50.0%など勝ち馬は5番人気以内から出現。外回りで競われるようになり、桜花賞に直結するGⅠらしく、大波乱は減った。
10番人気以下は【0-2-1-85】複勝率3.4%。伏兵激走の機会はなくはないが、期待できるほどの数字は残せていない。上位混戦ながら、ある程度絞れるレースだ。

キャリアの目安は2戦【6-4-3-40】勝率11.3%、複勝率24.5%、3戦【4-4-6-51】勝率6.2%、複勝率21.5%と絞られる。1戦【0-1-0-10】複勝率9.1%、4戦【0-1-1-29】複勝率6.5%なので、やはり新馬、重賞ないし特別戦で2勝という理想的なローテ―ションで駒を進められるかどうかはカギを握る。
収得賞金900万円組の取捨とは
登録馬のなかでは、アランカール、マーゴットラヴミーが2戦2勝。アルテミスSを勝ち、2戦無敗としたフィロステファニが登録抹消となり、今年は例年以上に混戦模様になりそうだ。

前走クラスをみても、前走GⅢが【9-2-6-62】勝率11.4%、複勝率21.5%と目立ち、さすがにGⅠとなると、重賞で揉まれた経験はアドバンテージとなる。一方で、前走1勝クラスも【0-5-1-47】複勝率11.3%と2着馬の半数を占める。重賞組だけで馬券を固めるのは止めた方がよさそうだ。

重賞でも目立つのはアルテミスS【5-2-2-21】勝率16.7%、複勝率30.0%。その着順内訳は、1着【3-1-0-5】勝率33.3%、複勝率44.4%、2着【2-0-1-4】勝率28.6%、複勝率42.9%と勝ち負けした馬が基準となる。
今年はミツカネベネラが候補。母ナスカザンの一族は地方14勝のルースリンドなどダートに強いイメージ。ナスカザンの産駒も父はヘニーヒューズ、パイロとダート色が濃い。
だが、モーリスを交配されたミツカネベネラは血統の傾向とは異なる。前走は好位から上がり34.0を記録し、2着。モーリスらしいしぶとさが身上。混戦向きだ。
前走ファンタージSは【2-0-2-30】勝率5.9%、複勝率11.8%。3着以内【2-0-2-15】に対し、4着以下は【0-0-0-15】。こちらも好走が条件だ。今年から中5週と1週間間隔が長くとれる点も見落とせない。
2着ショウナンカリスは5戦を消化しており、少し消耗は気になるところだが、前走は馬体重を10キロ増やしており、下降線をたどるとは思えない。

穴馬も該当する前走1勝クラスについて。前走1着に絞って距離別成績を出すと、1600mが【0-4-1-16】複勝率23.8%と強い。
延長【0-0-0-14】、短縮【0-1-0-0】であり、1600m以上の勝利が必須だ。アルバンヌ、ヒズマスターピース、マーゴットラヴミーが合致する。収得賞金900万組にも注目しよう。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 伝説のグランプリホース』(ガイドワークス)に寄稿。
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