絶妙なペースで逃げたケリフレッドアスク
秋華賞トライアル紫苑Sはケリフレッドアスクが逃げ切り、重賞初制覇。2着ジョスラン、3着ダノンフェアレディと入り、この3頭が秋華賞の優先出走権を獲得した。
秋の中山は今年も開幕週らしい馬場状態でレースが進んだ。芝では3勝クラス芝1200mで1:07.0が記録され、高速決着が目立った。そんな馬場を踏まえれば、紫苑Sの1:59.1は物足りなくみえる。過去2年が1:58.0(2023年)、1:56.6(2024年)と派手だった分、余計にそう感じる。だが、時計が速くなかったのは理由がある。
逃げ切ったケリフレッドアスクはオークスに出走し、2番手から8着に粘っていた。その後、休み明けは中京芝1600mに出走し、あえて短めの距離で先行させた。
今回はスタート直後、12.1-10.7-11.9の3F34.7と推移したが、先手を奪えたのは前走でマイル戦を使った成果だろう。外から同じくオークスで先行したサヴォンリンナが来ても、動じずにハナをとる。その後は12.6-12.8と進み、1000m通過は1:00.1と速くない。
だが、ポイントは3コーナー手前の残り1000mから800mの13.1にある。向正面でペースを落としながら進み、その最終盤で13.1と十分すぎるほど息が入っていた。ここまで遅ければまくられる危険も孕むが、幸い、そこまで厳しくマークされなかった。
もっとも、残り800m地点手前は、後続もタイミングとしては早く、動きにくい。サヴォンリンナが差を詰めにいくと、そこから11.9-11.7と一気にギアを入れる。乗じて仕掛けた組はかなり速い脚を繰り出さないと、ケリフレッドアスクとの差は詰められない。ここからラスト2Fは11.1-11.2、上がり3F34.0でまとめられては、ケリフレッドアスクの前に出るのは難しい。
向正面のペースダウンと3コーナーでのギアチェンジ、そして4コーナーからの加速と、文句なし。この勝利が重賞初制覇となった西塚洸二騎手は見事なペースコントロールだった。
同時に勝ち時計が速くなかったのも、中盤の12.6-12.8-13.1の影響が強い。単に時計が遅く、レベルが低かったわけではない。事実、ケリフレッドアスクは中山の直線を11秒台前半で駆けており、マイペースを守ったときの決め手は全体時計以上に価値がある。そしておそらく先手を奪わなくても競馬を組み立てられる。
母ディープインアスクといえば、父ロードカナロアのファンタジスト、ボンボヤージ、アスクワンタイムが有名。3頭は短距離重賞の勝ち馬だが、本馬は父が同じキングカメハメハ系でも中距離志向のドゥラメンテになり、その特徴があらわれた。ディープインアスクは父系のよさを伝えるようだ。それにしても、これで重賞ウイナーは4頭目。優秀な繁殖牝馬だ。















