格上げされると傾向が変わる
重賞の格付けには不思議なことがある。近年、GⅠ好走馬を立て続けに輩出したGⅢは有力ステップレースとしてGⅡに格上げされることが多いが、格上げ後にその勢いがピタリと止まるケースが多い。
たとえば紫苑Sも2016年にオープン特別からGⅢに格上げされると、秋華賞で【3-4-0-26】と好成績をあげ、ヴィブロス、ディアドラ、スタニングローズがGⅠ馬に昇りつめた。重賞になったことで有力関西馬が遠征し、ここをステップにGⅠへ向かうという流れができた。ところが、23年にGⅡに格上げされると、その後2年間は秋華賞で【0-1-0-9】と今のところはかえって不振に陥っている。
競走馬のローテーションにはトレンドが存在する。これが最有力ローテだと確立されたころには、もうそのローテは過去のものとなる。トレンドの最前線をつかみ続けるのは難しい。方程式が存在しない競馬の世界ならではの現象でもある。ここからは重賞昇格後の過去9回分のデータを使用して今年の紫苑Sを展望する。

人気別成績では、1番人気【3-1-2-3】勝率33.3%、複勝率66.7%、2番人気【3-2-0-4】勝率33.3%、複勝率55.6%と上位人気は堅い。本番とのつながりが希薄になったとはいえ、やはり賞金が高いGⅡとなると、実力馬が出走してくる。
基本は春の既成勢力が強く、夏の上がり馬はトライアルでも苦戦傾向にある。これは総じて秋のトライアルで多くみられる現象だ。これも酷暑の影響だろう。夏を戦い抜き、そこからギアをさらに上げていくのは簡単ではない。
伏兵は5番人気【2-0-1-6】勝率22.2%、複勝率33.3%、6番人気【0-2-1-6】複勝率33.3%が目立つぐらい。ポツポツと複穴は散見されるが、穴から入るのは筋が悪そうだ。

上記の通り、関西の実績馬が多く参戦してきたレースだが、所属別成績をみると、栗東所属馬【2-3-3-26】勝率5.9%、複勝率23.5%に対し、美浦所属馬は【7-6-6-90】勝率6.4%、複勝率17.4%と勝率や3着以内の占有率をみても、関東馬が目立つ。
GⅡ昇格後は関東馬【2-2-1-16】勝率9.5%、複勝率23.8%、関西馬【0-0-1-7】複勝率12.5%と傾向はさらに顕著に出る。関西馬優勢のイメージは改めたほうがよさそうだ。

















