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競馬の魅力 再発見(2)魅惑のナイトレース

2017 3/21 14:22うまじろう
競馬
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最近増えている、女性の競馬ファン

 競馬の魅力の1つは年齢や性別、経験の有無に関わらず、あらゆる人が気軽に参加できることにある。20歳未満の未成年は馬券を買うことができないが、子どもであっても競馬場には入場できる。また以前は20歳以上であっても学生・生徒の馬券の購入は禁止されていたが、2005年の法律改正で、20歳以上の学生・生徒も馬券を購入できるようになった。


 より広くオープンになった競馬だが、いまだに競馬というと「新聞と赤鉛筆を片手におじさん方が集まるタバコ臭い場所」というイメージを持つ人も少なくない。たしかに場外馬券場はそうした雰囲気がある一面も否定できないが、最近の競馬場は随分ときれいかつおしゃれになり、女性の姿も珍しくなくなった。


 筆者の周囲にいる女性(多くは社会人)は競馬を知らない人、やったことがない人が多いが、私が競馬の話をすると、彼女らは「一度行ってみたいです」「ぜひ今度連れて行ってください」と興味津々に反応する。どうやら、競馬場は若い女性たちにとって「1人では行きにくいが1度は行ってみたいスポット」のようだ。


 競馬に興味を寄せる彼女たちを実際に競馬場に連れて行くと面白いかもしれない。筆者はそう思いつき、競馬場デートを実行することにした。記念すべき第一回の場所に選んだのが、大井競馬場で開催される「東京シティ競馬」だ。


 土日に開催される中央競馬と違い、地方競馬である東京シティ競馬は「トゥインクルレース」と銘打ち、平日の夜間にもレースが開催されているのが最大の特徴だ。2016年4月から12月の期間は、第1競走は14:55にスタートするが、メインレースの発走はおおむね20:15。最終レースは20:50。会社員が仕事帰りに行っても十分に間に合う時間帯なのがありがたい。


 2016年8月3日19時、筆者はJR浜松町駅で会社員の女性・Mさんと待ち合わせた。Mさんは競馬に行くのは今回が初めてという。


 浜松町駅でモノレールに乗り換え、電車に乗ること10分弱で大井競馬場前に到着。駅から歩くこと5分ほどで、競馬場の入口にたどりついた。


スタート前にやるべきこと

 この日のメインレースはSⅢのサンタアニタトロフィー。ライトアップされたパドックは幻想的な雰囲気さえ醸し出していた。

 パドックでどのように馬を見たらいいか。見方は人それぞれだが、筆者が着目するのは、馬の歩き方、毛艶、そして気性である。


 馬の歩き方は、しっかりと両足を前に踏み込んで力強く歩いているかどうかをみる。毛艶は適度に汗をかいて、つやのある毛並みをしていると良い。気性は適度に気合が乗っているかどうかがポイント。のんびりしすぎていたり、逆に気合が乗りすぎて入れ込んでいたりするような状態はあまり好ましくない。


 この日は競馬新聞を買う時間がなかったため、馬券はパドックとオッズを見て判断することにした。Mさんにパドックの見方を一通り説明。続いて馬券の買い方を教えた。


 Mさんに薦めたのは「普通馬複」という馬券だ。中央競馬で言う馬連、1着2着の組み合わせを予想する最もポピュラーな馬券である。この日はなんとなく1番人気の13番の馬が固そうな予感がしたので、Mさんには「13番を軸にいくつか好きな馬に流してみては」とアドバイスした。


 本馬場入場を経て、レース前にファンファーレが流れる。大井競馬場では、白と青のユニフォームを身にまとった女性たちが現れ、間近でファンファーレの演奏を見ることができる。ファンファーレが終了すると大きな拍手が起こり、競馬場のボルテージは最高潮に達する。

初心者だからこそできること?

 そしてレースがスタート。1番人気の13番テムジンは道中は中段に付け、レースを進めた。しかし、勝ったのは4番人気、4番のリアライズリンクスだった。3着には3番人気、5番のアメージングタクト。筆者は辛うじて、5番と13番のワイド馬券を買っていた。ワイドとは、1着から3着までに入る2つの馬のペアを選ぶ馬券である。1着・2着の組み合わせを当てる馬複(馬連)よりは配当は低いが、的中確率が高い。


 ワイドの5―13の配当は360円だった。もうけはわずかだが、当たりは当たりである。筆者がほっと胸をなでおろしていると、Mさんは「もしかして当たったのかも」と聞いてきた。Mさんの馬券をみると、なんと、1着2着の4-13をずばりと当てているではないか。


 注目の配当は980円で、しかも1点あたりの賭け金が2000円。Mさんは見かけによらず勝負師だったようだ。100円単位でチマチマ賭けている筆者とどちらが初心者かわからないぐらいだ。


 そういえばMさんからは「いくらぐらい賭けたらいいのですか」とは聞かれなかった。もし聞かれていたら「とりあえず、100円からでもいいのでは」と答えていただろう。

券売機

 払戻金の1万9600円を受け取ったMさんはうれしそうだった。私たちは最終レースを待たず、足早に大井競馬場を後にした。モノレールに乗って浜松町駅で降り、その日はMさんのおごりで乾杯したのは言うまでもない。


 ビギナーズラックとはこういうことを言うのか。競馬は長くやっている人も初めてやる人も、男性も女性も分け隔てなく楽しめるエンターテイメントであることを改めて実感した1日となった。