ハンデキャッパーが評価するベテランに注意
今夏から小倉と中京が開催時期を入れ替える形となり、小倉の重賞は梅雨末期から夏のはじめに集まった。北九州記念も7月1週目に行われ、サマースプリントシリーズの本州編の初戦へと生まれ変わる。アイビスサマーダッシュやCBC賞経由というローテーションは消滅し、レース傾向は大きく変わるだろう。
とはいえ、舞台の小倉芝1200mは例年通り。コース全体でもっとも高い2コーナー奥の引き込み線からスタートし、向正面は400m以上あって最後の直線は平坦。軽い下りで行き脚をつけ、その後はゴールまで平坦が続くため、ハイペースと高速決着を誘発する。
ただ同じくハイペースになりやすい中山とは違い、直線に急坂がないため前が止まるとは限らない。そんなコース形態の特徴を踏まえつつ、傾向を探っていく。データは過去10年分を使用する。

1番人気は【0-4-1-5】で複勝率50.0%も未勝利。大混戦のハンデ戦らしく、主役が主役たる走りを披露する確率は低い。2番人気も【1-0-1-8】勝率10.0%、複勝率20.0%と冴えず、人気馬を疑ってかかるべきレースだ。
3番人気【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%以下はほぼ横一線。10番人気以下も【1-1-3-78】勝率1.2%、複勝率6.0%と目立つ数字ではなく、人気が馬券検討の材料にならない。
ただし、上位人気は危ういものの、大穴がガンガン出現するわけではない。これこそ難解な一戦の傾向だろう。

少数精鋭の3歳は【2-1-2-17】勝率9.1%、複勝率22.7%とまずまず。高速決着とハンデの恩恵は追い風だろう。
一方、主力の4歳も【3-2-4-19】勝率10.7%、複勝率32.1%と高確率だが、5歳【1-6-1-40】勝率2.1%、複勝率16.7%と確率こそ冴えないものの2着6回が目を引く。確率上は3、4歳が優位だが、馬券の肝は2着馬を送る5歳にある。
また、6歳も【3-1-3-37】勝率6.8%、複勝率15.9%と侮れず、スプリント戦では軽視しがちなので気をつけよう。
4、5歳と比べハンデが軽くなりやすいのもプラスに働きそうだが、前走斤量でみると斤量増【1-0-1-3】勝率20.0%、複勝率40.0%に対し増減なしが【2-1-1-17】勝率9.5%、複勝率19.0%で斤量減も【0-0-1-17】複勝率5.6%と不振。むしろベテランでも斤量を見込まれる馬が狙い。ハンデキャッパーのお墨付きととろう。
逃げ残りか差しか極端な傾向
3歳は葵Sの1、2着馬アブキールベイとクラスペディアが目立つも、この2頭は斤量の動向に注意しよう。3歳でも重賞好走はハンデを見込まれる材料になる。

3歳に限った前走着順別成績では、前走1着が【1-1-1-3】勝率16.7%、複勝率50.0%と好成績。たとえ3歳としてはハンデを背負わされたとしても、前走勝利は注目していい。
5着以内【2-1-2-9】と6着以下【0-0-0-8】は明暗がくっきりと分かれ、なかでも葵Sの4着以内は【1-1-0-4】。ちなみに1着は【1-1-0-1】で、昨年逃げ切ったピューロマジックもこのパターンだ。
葵Sを15番人気で制したアブキールベイは父ファインニードル、母は短距離系のアゴベイ。スピード勝負なら互角以上だろう。

ローテーションが大きく変わるので微妙なところだが、古馬の前走1200m組【6-5-7-82】勝率6.0%、複勝率18.0%はサマーシリーズ以外のレースも含まれており、注目する価値はありそうだ。

前走1200mの位置取り別成績では、前走逃げ【1-2-1-4】勝率12.5%、複勝率50.0%が強い。先行【1-1-1-26】勝率3.4%、複勝率10.3%は確率が下がり、差しが【3-2-3-32】勝率7.5%、複勝率20.0%と悪くない。後方は【1-0-2-19】勝率4.5%、複勝率13.6%と落ちるが、10着以下【1-0-1-6】勝率12.5%、複勝率25.0%の穴ゾーンでもある。
スピード上位の逃げか、控えて差しに回る組の成績がいいのはいかにも北九州記念らしい。というのも、スピードに任せて押し切れるか、ハイペースに乗じて差してくるか。小倉芝1200mのコース特徴がよく出ているからだ。
超ハイペースでもあくまで平坦のため、マイペースでさえあれば、逃げ切りは十分考えられる。また、前がやり合ってハイペースになれば、たとえ直線が短くても差し脚が決まる。極端なシナリオが用意されやすい舞台であり、先行した馬はどっちつかずになる可能性が考えられる。展開や馬場をどうとるか。小倉芝1200mはそんな読みが馬券攻略のカギになる。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
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