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【安田記念】近年は瞬発力重視でサンデー系が好調 久々マイルで期待のシックスペンス

2025 6/5 06:00坂上明大
安田記念に強い血統,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

傾向解説

8日に東京競馬場で行われる上半期の芝マイル王決定戦・安田記念。短距離から中距離、ダート路線からも有力馬が参戦し、各馬の適性評価も非常に重要な一戦です。本記事では血統面を中心に、安田記念のレース傾向を整理していきます。

まず、ポイントとして挙げたいのはトップマイラーのリピート好走が非常に多いということ。芝のマイル路線は中長距離路線とは異なり、国内外を含めても安田記念に有力馬が集中しやすい番組構成にあります。また、他路線組も参戦しやすいスケジュールとなっているため、今年のように短距離から中距離、さらにはダート路線からも有力馬が参戦してくるケースは少なくありません。

とはいえ、適性面に関しては当然マイル路線を歩んできた馬に分があり、さらにマイル路線のライバルが少ない安田記念では前年上位馬のリピート好走が多発する、という構図が出来上がっているわけです。

<安田記念 近年のリピート好走例>
アエロリット:2018年2着→2019年2着
インディチャンプ:2019年1着→2020年3着
アーモンドアイ:2019年3着→2020年2着
グランアレグリア:2020年1着→2021年2着
シュネルマイスター:2021年3着→2022年2着→2023年3着
ソングライン:2022年1着→2023年1着

適性面については、近年のペース変化に要注意。10年程前の安田記念は「ハイペースの消耗戦」というイメージが強くありましたが、近年の安田記念は「平均~スローペースの末脚勝負」というレース質に変わってきています。

これは5年ごとの前後半3F平均を比較すれば明らかで、アルクオーツスプリント(ドバイ)やチェアマンズスプリントプライズ(香港)などスプリンターの選択肢が広がったことにより、徐々に距離延長馬の出走が減ってきている点が影響していると考えられます。

<安田記念 年別の前後半3F平均>
2010~14年:34.1-35.5(前傾1.4秒)
2015~19年:34.4-34.3(後傾0.1秒)
2020~24年:34.5-33.9(後傾0.6秒)

それに伴い、サンデーサイレンス系の好走率も上昇。芝中距離の瞬発力勝負では無類の強さを誇る日本の主流血統ですが、以前のようなハイペースの消耗戦ではなかなか同血脈の良さが活きていない印象でした。

しかし、ペースが落ち着いた近年の安田記念ではサンデーサイレンス系の好走が目立ち、2022、23年連覇のソングラインはサンデーサイレンスの3×4を保持。また、昨年の勝ち馬ロマンチックウォリアーは母がHaloの4×4、2着馬ナミュールはSir Ivor≒Halo≒Droneの6×4・6を保持しており、Halo→サンデーサイレンスの増幅形が今後の安田記念のトレンドになるかもしれません。

父サンデーサイレンス系 年別成績,ⒸSPAIA


<父サンデーサイレンス系 年別成績>
2010~14年【2-1-2-36/41】
勝率4.9%/連対率7.3%/複勝率12.2%/単回収率75%/複回収率56%
2015~19年【2-1-3-41/47】
勝率4.3%/連対率6.4%/複勝率12.8%/単回収率67%/複回収率48%
2020~24年【4-2-2-33/41】
勝率9.8%/連対率14.6%/複勝率19.5%/単回収率183%/複回収率57%


有力馬の血統解説

・シックスペンス
母フィンレイズラッキーチャームはアメリカのダート7FGⅠ・マディソンSの勝ち馬。Cryptoclearanceの4×3やDanzigの4×4などが中心のスピード馬で、初仔の本馬も母譲りのスピードが持ち味のマイラー体型に出ています。

LyphardやDanzigなどからFair Trial血脈を豊富に受け継いだ機動力型で、スプリングSや中山記念を制した中山芝1800mがベストコース。とはいえ、得手不得手の少ないタイプでもあり、Halo≒Sir Ivorの4・6×6を持つ点は近年の安田記念の血統傾向にもフィット。久々のマイル戦が楽しみな一頭です。

・ジャンタルマンタル
母インディアマントゥアナは2018年レッドカーペットH(北米GⅢ、芝11F)の勝ち馬で、父Palace Malice(2013年ベルモントS)はアイアンバローズやジャスティンパレスの半兄。距離適性の幅も広く、手先が強いためダート適性も高そうな北米血統馬です。

日本の主流血統ではありませんが、中距離指向の配合形は近年の安田記念の血統傾向にもフィット。NHKマイルC以降、順調に使えていない点は割引ですが、素質はメンバー中屈指の一頭です。

・ソウルラッシュ
母母キャットアリの快速血統を武器にマイル路線で堅実な走りを見せるルーラーシップ産駒。苦手条件の少ない優等生タイプで、安田記念でも昨年3着と結果を残しています。

7歳馬ではあるものの、昨秋のマイルCSで初GⅠ制覇を果たし、前走のドバイターフでは香港の最強馬ロマンチックウォリアーに勝利。まだまだ元気一杯で、雨馬場ならさらに高いパフォーマンスを披露してくれるでしょう。


2025年安田記念 有力馬の血統と評価,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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