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【安田記念】ドバイターフ7着ブレイディヴェーグに好データ 三度目の正直へ、レッドモンレーヴが波乱のカギ

2025 6/1 18:00勝木淳
過去10年のデータから見る安田記念,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

多彩なローテが集結するターミナルGⅠ

近年の安田記念は非常に絞りにくく、難しい。昨年こそ香港の雄ロマンチックウォリアーが参戦し、確固たる軸がいたが、春のベストマイラー決定戦は主役を選ぶのも迷う。というのも安田記念はバラバラな臨戦過程が集約するレースで、過去10年では勝ち馬の前走レースが全部で8レースもある。

今年もサウジやドバイ、香港経由、国内GⅠ、ステップレース、さらにオープン特別と多種多彩。ある程度、前哨戦が絞れるクラシックの直後だけになおさら頭を悩ませる。東京マイルはマイラーも中距離型も、さらにスプリンターすら好走する懐の深いコースであり、春戦線を駆け抜けた馬たちがシーズンラストチャンスに選択しやすいという事情もあるだろう。

多様な路線が集結する巨大ターミナルのようなGⅠ。ここで終着せず、その先へ進めるのはどの馬か。ここからは過去10年分のデータを使用し、安田記念を展望する。

人気別成績,ⒸSPAIA


まずは人気別成績から。1番人気【2-3-3-2】勝率20.0%、複勝率80.0%、3番人気【1-3-1-5】勝率10.0%、複勝率50.0%、4番人気【3-1-1-5】勝率30.0%、複勝率50.0%。2番人気が【0-1-2-7】複勝率30.0%とイマイチも、上位人気はそれなりに好走する。だが、上位も絞れるほどではない。ある程度散らばってくる。

さらに8番人気【2-1-1-6】勝率20.0%、複勝率40.0%など7~9番人気に勝ち星があり、伏兵の激走もある。10番人気以下は【0-0-1-70】複勝率1.4%と厳しいが、上位9頭はどの馬もケアしたいところだ。

年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢別成績を見ると、主力は4歳【5-3-2-30】勝率12.5%、複勝率25.0%。スピードと持続力の総合的な力を問う舞台らしく、充実期を迎える4歳は強力だ。一方で、5歳【2-5-3-39】勝率4.1%、複勝率20.4%、6歳【3-1-3-35】勝率7.1%、複勝率16.7%と年上も奮闘する。

それでも7歳以上となると【0-1-1-24】複勝率7.7%とさすがに分が悪い。ドバイターフを勝ったばかりのソウルラッシュに当てはめるのは気が引けるが、このデータはひとつの壁になりそうだ。

連軸向きはロングラン

今年の登録馬19頭の前走レースは全部で12レース。ターミナルらしくバラバラな臨戦過程であり、単純な比較は困難といっていい。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


クラス別成績を確認していく。まず前走海外組【1-3-1-15】勝率5.0%、複勝率25.0%から。レース内訳は関係なく、ざっくりと前走香港は【1-1-0-8】。それこそ勝ったのはロマンチックウォリアーだけ。

海外からの転戦で計算できるのはドバイ【0-2-1-5】。とりわけドバイターフは【0-2-1-3】と好走確率が高い。1着馬【0-0-1-1】、5~9着【0-2-0-0】。ソウルラッシュもいいが、7着ブレイディヴェーグも注目だ。昨年のマイルCS4着。府中牝馬S勝ちを踏まえると、東京マイルへの適性を感じる。

前走国内GⅠ・レース別成績,ⒸSPAIA


国内GⅠでは直近のマイルGⅠであるヴィクトリアマイルが【2-5-0-10】勝率11.8%、複勝率41.2%と計算できるが、今年は不在。これは痛い。難易度がまた上がった気がする。

高松宮記念【1-0-1-9】勝率9.1%、複勝率18.2%は、2着【1-0-0-1】(2020年グランアレグリア)、10着以下【0-0-1-2】(2022年サリオス)。好走した2頭ともにスプリンターではなく、むしろ適条件に戻っての好走だった。マッドクールはちょっとイメージ的に合わない。

大阪杯は【0-0-1-14】複勝率6.7%。エコロヴァルツ、シックスペンスは決していい筋とはいえない。ただし、毎日王冠を勝ったシックスペンスは流れがスローなら瞬発力を駆使して見せ場をつくれるか。

前走GⅡ・GⅢ・レース別成績,ⒸSPAIA


GⅠ以外ではダービー卿CTが【2-0-0-8】勝率、複勝率20.0%と勝ち馬を送る。しかし、2015年モーリス、16年ロゴタイプとデータとしてはかなり古い。トロヴァトーレを推す根拠としては使いづらい。

前哨戦の京王杯SCは【1-1-1-22】勝率4.0%、複勝率12.0%。日程が動き、昨年までの中2週から中4週にかわり、変化はあるか。とはいえ、該当はレッドモンレーヴ1頭と心もとない。

ただし、前走が京王杯SCで後方だった馬は【1-1-1-7】、それ以外【0-0-0-15】なので、4コーナー10番手だったレッドモンレーヴは評価できる。安田記念は過去2年6着、11着。三度目の正直はあるか。

前走マイラーズC・着順別成績,ⒸSPAIA


前走マイラーズCも【1-0-5-33】勝率2.6%、複勝率15.4%と頼りないが、3着は5頭。3連複など連軸向きのローテーションではある。着順内訳は勝ち馬【0-0-3-6】複勝率33.3%、2or3着【0-0-0-12】、4着【1-0-1-4】勝率16.7%、複勝率33.3%。

前走1着のロングランは東京のイメージが薄く、マイラーズCのレベルも疑問視されそうだが、重賞連勝中の勢いは侮れない。マイラーズCで記録した1:31.7は上々。なにより重賞連勝中はこの馬だけ。データ上不利な7歳だが、充実期にある。

過去10年のデータから見る安田記念,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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