3歳マイル王決定戦の舞台
今週は東京芝1600mを舞台にNHKマイルCが行われる。3歳のマイル王を決める一戦には、朝日杯FSにて後の皐月賞馬・ミュージアムマイルに2馬身半差で完勝したアドマイヤズームや、そのアドマイヤズームをニュージーランドTで差し切ったイミグラントソング、同じく前哨戦のチャーチルダウンズCを制したランスオブカオスなど、楽しみなメンバーが揃った。
東京芝1600mが舞台の重賞は8レース。グレード順に、GⅠは今週のNHKマイルC、古馬のマイル女王決定戦ヴィクトリアマイル、春の府中GⅠのラストを飾る安田記念。GⅡはマイルCSの前哨戦である富士S、GⅢは初春の伝統重賞・東京新聞杯、牝馬クラシック路線において重要なクイーンC、2歳GⅢにおいては屈指の出世レース・サウジアラビアロイヤルC、同じく2歳戦で牝馬限定のアルテミスSが行われる。
このコースがどのような特徴を持つのか、ここからはデータで分析していく（使用するデータは2020年5月9日〜2025年5月4日）。
まずはコース形態。大箱を生かした綺麗なU字型のコースで、2コーナーをスタートしてしばらくゆるやかに下り、向正面半ばで坂を上る。その後、下りながら3コーナーを回り、4コーナーを出ると500m超の直線へ。直線半ばに待ち受ける高低差2mの坂を上り、最後の平坦な300mを走り切ってゴールを迎える。
外枠有利も1枠が勝率、連対率、複勝率トップ
＜東京芝1600m・過去5年の枠別成績＞
1枠【46-32-36-382】
勝率9.3%/連対率15.7%/複勝率23.0%/単回収率112%/複回収率72%
2枠【30-40-32-417】
勝率5.8%/連対率13.5%/複勝率19.7%/単回収率90%/複回収率70%
3枠【31-47-28-438】
勝率5.7%/連対率14.3%/複勝率19.5%/単回収率35%/複回収率50%
4枠【37-39-40-458】
勝率6.4%/連対率13.2%/複勝率20.2%/単回収率44%/複回収率63%
5枠【44-39-42-482】
勝率7.2%/連対率13.7%/複勝率20.6%/単回収率200%/複回収率82%
6枠【46-64-44-478】
勝率7.3%/連対率17.4%/複勝率24.4%/単回収率54%/複回収率69%
7枠【59-38-63-570】
勝率8.1%/連対率13.3%/複勝率21.9%/単回収率84%/複回収率74%
8枠【62-54-71-571】
勝率8.2%/連対率15.3%/複勝率24.7%/単回収率51%/複回収率90%
まずは枠順別成績について。複勝率は1〜4枠が20.5%に対して5〜8枠は23.0%と、やや外枠有利の傾向だ。ただし、内枠の中でも1枠は例外。勝率、連対率、複勝率が全ての枠の中で最も高く、単回収率も112%とプラス域をマークしている。
基本的には馬群に包まれるリスクの小さい外枠が優勢だが、内枠の中でも1枠だけはロスなく最内を回ってこれるメリットが大きいのだろう。なお、1枠では1人気の単回収率が72%とやや不振。一方、2〜5人気は単回収率140%と好調であり、人気を背負う側にはマイナス、人気馬をマークする側にはプラスであることがわかる。
NHKマイルCでは外枠有利の傾向がさらに強くなる。過去10年での内、外枠それぞれの成績は以下の通り。
1〜4枠【2-4-4-70】複勝率12.5%、複回収率33%
5〜8枠【8-6-6-79】複勝率20.2%、複回収率131%
大きな差が生まれており、穴馬を狙うなら外枠からがオススメだ。
セオリー通り逃げ・先行有利
＜東京芝1600m・過去5年の脚質別成績＞
逃げ【46-51-37-220】
勝率13.0%/連対率27.4%/複勝率37.9%/単回収率276%/複回収率164%
先行【148-124-121-853】
勝率11.9%/連対率21.8%/複勝率31.5%/単回収率109%/複回収率84%
差し【120-135-144-1411】
勝率6.6%/連対率14.1%/複勝率22.0%/単回収率60%/複回収率69%
追込【41-42-53-1310】
勝率2.8%/連対率5.7%/複勝率9.4%/単回収率42%/複回収率43%
次に脚質別成績について。最終直線が長い東京コースということで差し・追込馬を狙いたくなるが、実際はセオリー通り逃げ・先行が有利となっている。どちらも複勝率は30%オーバー、単回収率も100%超で妙味も十分だ。長い直線に惑わされて、逃げ・先行勢の評価を落としすぎないようにしたい。
NHKマイルCでは、過去10年で上がり3F3位以内が【6-6-6-14】で複勝率56.3%、複回収率373%と素晴らしい成績。一方、上がり3F6位以下は【1-3-3-115】で複勝率5.7%、複回収率14%と苦戦が目立っている。前目で粘りこむ器用さよりも末脚の強度が求められる一戦であり、穴を狙うにしても末脚自慢がオススメだ。
イスラボニータ産駒が即買いレベルの好成績
＜東京芝1600m・過去5年の種牡馬別成績＞
エピファネイア【23-18-21-134】
勝率11.7%/連対率20.9%/複勝率31.6%/単回収率175%/複回収率83%
モーリス【20-19-22-129】
勝率10.5%/連対率20.5%/複勝率32.1%/単回収率153%/複回収率104%
イスラボニータ【10-11-5-56】
勝率12.2%/連対率25.6%/複勝率31.7%/単回収率353%/複回収率120%
■エピファネイア
ダノンデサイルやエフフォーリアなど、産駒には中距離が多いイメージだがマイルでも優秀な成績を残している。単回収率は175%とプラス域で、同コースではヴィクトリアマイルをテンハッピーローズが制した。特に2歳戦が【14-4-9-46】勝率19.2%、単回収率136%と狙い目だ。
■モーリス
安田記念を制した父のように東京マイルで活躍する産駒が多く、回収率は単複ともにプラスだ。新馬・未勝利戦といった下級条件での信頼度が高く、新馬【7-7-2-25】複勝率39.0%、複回収率105%、未勝利【6-8-7-42】複勝率33.3%、複回収率168%。平場でこそ積極的に信頼していきたい。
■イスラボニータ
イスラボニータ産駒は単回収率353%、複回収率120%という見かけたら即買いレベルの好成績だ。先行馬が【7-6-2-10】で複勝率60.0%、単回収率1049%、複回収率274%と圧巻。前走先行した馬でも【4-4-3-12】で複勝率47.8%、複回収率116%とベタ買いでプラスになる。
上記3頭の産駒で今年のNHKマイルCに出走を予定しているのは、エピファネイア産駒のミニトランザットとヤンキーバローズ、モーリス産駒のアドマイヤズームとアルテヴェローチェの4頭だ。
ほか、イミグラントソングが該当するマクフィ産駒は【2-1-2-33】で複勝率13.2%、複回収率21%、ランスオブカオスが該当するシルバーステート産駒は【2-1-3-72】で複勝率7.7%、複回収率26%となっている。
”東京マイルの鬼”川田将雅騎手
＜東京芝1600m・過去5年の騎手別成績＞
横山武史【20-20-22-130】
勝率10.4%/連対率20.8%/複勝率32.2%/単回収率125%/複回収率69%
川田将雅【18-9-8-44】
勝率22.8%/連対率34.2%/複勝率44.3%/単回収率149%/複回収率74%
菅原明良【16-13-9-126】
勝率9.8%/連対率17.7%/複勝率23.2%/単回収率105%/複回収率104%
■横山武史騎手
単回収率は125%とプラス域だ。新馬戦での信頼度が抜群であり、【6-7-4-21】で勝率15.8%、単回収率389%と妙味十分。東京マイルのGⅠ勝ちこそないが、信頼していきたい騎手だ。
■川田将雅騎手
勝率22.8%、単回収率149%と素晴らしい成績を残しており、安田記念1勝、NHKマイルC2勝とGⅠ実績も十分。まさに東京マイルの鬼と呼んでも良いだろう。平場よりも重賞で圧倒的であり、【5-2-2-13】勝率22.7%、単回収率333%という驚異的な数字を残している。
■菅原明良騎手
カラテとウォーターリヒトでGⅢ東京新聞杯を2勝している。こちらは1、2勝クラスに強く、1勝クラス【3-3-0-29】勝率8.6%、単回収率186%、2勝クラス【3-3-2-15】勝率13.0%、単回収率173%という成績だ。
＜NHKマイルCの騎乗予定＞
横山武史騎手：マイネルチケット
川田将雅騎手：アドマイヤズーム
菅原明良騎手：コートアリシアン
イミグラントソングに騎乗予定のルメール騎手は複勝率63.8%、複回収率89%、ランスオブカオスに騎乗予定の吉村誠之助騎手は東京芝マイルでの騎乗経験がなかった。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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