3つのファクターから推奨馬を見つけ出す
今回は11日に東京競馬場で行われるNHKマイルカップについて、下記3つのファクターを組み合わせるコンプレックスアナライズで分析を行っていく。
・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の内容」
・適性と素質を知るための「血統評価」
今回も過去10年のデータを使用し、特別登録のあった22頭のうち除外対象のスリールミニョン、ネーヴェフレスカ、マテンロウサン、ミーントゥビーを除いた18頭を検討対象とする。
重要データ:前走重賞組が馬券の中心

NHKマイルCで取り上げる重要データは、前走クラス別成績。前走重賞以外【0-1-0-15】に対し、GⅢ組【2-3-7-58】にGⅡ組は【3-2-3-50】、GⅠ組も【5-4-0-25】。勝ち馬は全て前走で重賞を走っていた馬だった。
もう少し深掘りすると、負けた馬は着差が重要だ。前走重賞敗戦から巻き返して勝利した馬は9頭いるが、うち8頭は0秒5差以内の惜敗だった。
前走で0秒6差以上の着差をつけられながらNHKマイルCを勝利したのは、2015年のクラリティスカイ(皐月賞0秒7差5着)だけ。重賞組は勝ち馬か、勝ち馬から0秒5差以内で走っていた馬に注目したい。
今回上位人気が予想されるマジックサンズは前走が皐月賞とはいえ、勝ち馬から0秒6差の6着だった。少し割引する必要がある。
【前走重賞勝ち or 0秒5差以内負けの出走予定馬】
・アドマイヤズーム
・アルテヴェローチェ
・イミグラントソング
・コートアリシアン
・パンジャタワー
・ミニトランザット
・モンドデラモーレ
・ヤンキーバローズ
・ランスオブカオス
前走の内容:ニュージーランドトロフィー
今回は勝ち馬イミグラントソングのほか、2着アドマイヤズーム、3着コートアリシアンが出走を予定しているニュージーランドトロフィーを振り返る。
当日の中山競馬場は馬場状態が良好で、内外差がなく時計が出やすかった。ペースは前半4F45秒7、後半4Fが46秒7で前傾1.0秒のハイペース。隊列が縦長だったとはいえ、後方で待機した馬が軒並み上位に顔を揃えており、差し有利のレース展開だった。
勝ったイミグラントソングは道中13頭立ての10番手あたりを追走、自分のリズムを優先してレースをしていた。結果的に展開がハマってGⅠ馬アドマイヤズームに土をつけた。
3着コートアリシアンはイミグラントソングより前々で競馬をしていたが、勝負所では最内を選択してじっくり脚を溜めていた。この日の中山は内からも競馬ができる馬場状態で、ベストな騎乗だったと言えるだろう。
一方、2着に敗れたアドマイヤズームは終始横綱競馬で、先行しながら勝負所の4コーナーも大外を回し、直線を向いてすぐに先頭に立つ形。レース展開や馬場状態とは真逆の競馬で、かなりの不利があった。悲観する敗戦ではなく、川田将雅騎手もアドマイヤズームの成長度合いを確かめることができたはず。前哨戦としては十分な内容だっただろう。
前走で関東への輸送も経験し、大目標であるNHKマイルCへ準備は整った。その点も踏まえ、内容ではアドマイヤズームが最も評価できる。
血統解説:アドマイヤズーム

・アドマイヤズーム
日本での牝祖は3代母プレイヤーホイール。もともと北米で繋がってきた牝系で、スピード性能の高さがファミリーを通して見受けられる。それでいて芝適性とスタミナもあり、日本では目黒記念2着や青葉賞3着などの実績があるハートビートソングがいる。
本馬の兄弟に重賞級の馬はいないが、半兄ヴィアメント(父キングカメハメハ)はダート中距離を中心にJRA5勝、同じく半兄ダノンブレット(父キングカメハメハ)もJRAで4勝を挙げるなど、2頭のOP馬が出ている。牝系の活力としては申し分ないだろう。
父にモーリスを迎えた本馬は同産駒らしい高い心肺機能とスピード性能を有し、芝のマイルが活躍の舞台となっている。前走のようなハイペースを踏ん張れるのは、父モーリスの力だろう。展開不利のなかでも勝ち負けできるような頭一つ抜けた実力を持っている。
今回は初めての東京競馬場になるが、関東への輸送も経験済み。朝日杯フューチュリティステークスの時の様な競馬ができれば、直線の長い東京でも押し切れるはずだ。
Cアナライズではアドマイヤズームを推奨
今回のCアナライズではアドマイヤズームを推奨する。
前走は展開の不利が大きく、イミグラントソングの末脚に屈してしまったが、もう少しペースが落ち着いて前後半フラットくらいで流れてくれれば、本馬が勝利に最も近いだろう。2歳王者として世代No.1の座は譲れない。
《ライタープロフィール》
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。
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