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【NHKマイルC】”マツクニローテ”生みの親が最多5回の馬券圏内 3歳マイル王決定戦の「記録」を振り返る

2025 5/5 17:24緒方きしん
NHKマイルCに関する記録,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

馬券圏内での上がりタイム歴代1位は33.4

今週はNHKマイルCが開催される。過去にはエルコンドルパサーやクロフネといった外国血統馬が勝利してきたことでも知られる一戦で、昨年も北米血統馬のジャンタルマンタルが勝利をあげた。一方でアエロリットやピンクカメオといった牝馬の活躍も多い。

今回は3歳マイル王を決める当レースについての「記録」を振り返る。

快速自慢が集うNHKマイルCだが、馬券圏内に食い込んだ馬たちの中で上がりタイムのランキングをつくると以下のようになった。

1位 33.4 コティリオン(2011年2着)
2位タイ 33.5 マテンロウオリオン(2022年2着)、ダノンシャンティ(2010年1着)
4位タイ 33.6 ケイデンスコール(2019年2着)、ラインクラフト(2005年1着)

全くの偶然ではあるが、鋭い上がりを繰り出したトップ5の馬たちは、いずれも馬名に「ン」が入っている。なお、最も上がりがかかっていたのは35.9で粘った3頭で、ウインクリューガー(2003年1着)、ザカリヤ(1999年2着)、レッドチリペッパー(1999年3着)だった。

美しき馬体を煌めかせたコティリオン

最も鋭い末脚を繰り出したコティリオンは、2008年セレクトセールにて7350万円で落札された良血馬。デビュー前からの評判馬であり、ラジオNIKKEI杯では3着ながらもウインバリアシオン、ショウナンマイティらに先着している。

毎日杯では最強セン馬の1頭とも言われるレッドデイヴィスに敗れたものの、トーセンレーヴ、スマートロビンらに先着する2着で賞金を確保。NHKマイルCでは重賞未勝利ながら2番人気に推されると、最後方から猛然と追い込んで2着に食い込んだ。

コティリオンはそのままダービーにも参戦。しかし11月に2戦してから12月〜翌3月まで毎月走り続けたコティリオンの脚は相当な疲労が溜まっていたようで、屈腱炎を発症。結局、2勝目を挙げることなく引退となってしまった。引退後は相馬野馬追で活躍するなど、人々から愛される名馬であった。

無念のダービー回避となったダノンシャンティ

2位タイのダノンシャンティもまた、毎日杯からの参戦。共同通信杯(2着)、毎日杯(1着)、NHKマイルC(1着)と3戦連続で上がり最速を繰り出した快速馬で、NHKマイルCでは2着のダイワバーバリアンに1馬身半差をつけた。NHKマイルCでダノンシャンティが叩き出した1:31.4は今もなおレコードとして輝いている。

ダノンシャンティはNHKマイルC後にダービーを目指したが、本番前日に右後脚の骨折が判明。復帰を果たしたものの右前浅屈腱炎を発症し、残念ながら引退となった。

引退後は種牡馬としてスマートオーディンらを輩出。そのスマートオーディンも種牡馬入りし、今年の3歳世代が初年度となるが、早くも未勝利、さざんか賞(1勝クラス)を連勝したルクスレゼルヴァらが活躍している。

最も馬券圏内に送り込んだのは松田国英調教師

ダノンシャンティを管理したのは松田国英調教師。マツクニローテとして知られるNHKマイルC→ダービーのローテーションで数々の名馬、名種牡馬を送り出してきた。3着以内の馬を管理する調教師をランキング化すると以下の通り。

1位 5回 松田国英調教師
2位 4回 橋口弘次調教師
3位タイ 3回 昆貢調教師、手塚貴久調教師、浅見秀一調教師、藤原英昭調教師、藤沢和雄調教師、矢作芳人調教師

1位はその松田国英調教師。ダノンシャンティ、キングカメハメハ、クロフネで3勝をあげ、ブラックシェルで2着、タニノギムレットで3着となった。ダノンシャンティとキングカメハメハは安藤勝己騎手、クロフネとタニノギムレットは武豊騎手とのコンビだった。

小牧太騎手×橋口弘次調教師の黄金コンビ

2位の橋口弘次調教師は2006年にロジックで勝利を挙げている。こちらも武豊騎手とのコンビだった。橋口弘次調教師はハーツクライやダンスインザダーク、スリープレスナイトといった名馬を次々と送り出したが、小牧太騎手とともにローズキングダムやツルマルレオン、リディルやカノヤザクラといった馬たちを活躍させた人でもある。

上述のコティリオンもその1頭。そしてリディルの弟であるクラレントもまた、小牧太騎手×橋口弘次調教師で3着と好走した。

クラレントは新馬戦から小牧騎手が乗り続けた馬。デビューから2連勝でデイリー杯2歳Sを制し、続く東京スポーツ杯2歳S、朝日杯FSでいずれも2番人気となった。しかしどちらも惨敗すると弥生賞でも12着と敗北。NHKマイルC時には15番人気にまで人気を落としていた。

だが、小牧騎手は中団で追走させると勝負所で力強く追い始め、見事に3着に食い込ませた。この騎乗ぶりでようやくクラレントの強さに気がつけたというファンも多かったのではないだろうか。

小牧騎手はその後、7歳になっても現役を続けていたクラレントを、今度はマイラーズカップで11番人気3着へと導いた。まさに調教師・騎手・馬の一体感を感じる好走であった。

今年は果たして、どのようなドラマが見られるだろうか──。

《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、ドウデュース。

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