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【ユニコーンS回顧】一線級の資質示したカナルビーグル リアルスティール産駒から今年もスター候補誕生

2025 5/5 11:14勝木淳
2025年ユニコーンS、レース結果,ⒸSPAIA
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東京ダービーという目標

東京ダービーのステップレースでもあるユニコーンSはカナルビーグルが勝ち、2着クレーキング、3着メイショウズイウンで決着した。吉村誠之助騎手はチャーチルダウンズCに続き、早くも重賞2勝目。今年3月に開業したばかりの佐藤悠太調教師は重賞初出走で初制覇。この日は37歳の誕生日であり、忘れえぬ一日となった。

ダートもその先にダービーがあるとなると、モチベーションが段違いになる。ダート三冠創設は様々な形で議論の的になるものの、JRAの陣営にとっては間違いなくプラス。初年度である昨年からダート競馬のレベルは明らかに上昇した。

その東京ダービーへつながるユニコーンSは今年もハイレベル。ダート界が一歩前に進んだといえる。稍重馬場でいくらか軽い馬場だったとはいえ、勝ち時計1:56.8は古馬3勝クラスに値する。3歳春の段階で古馬3勝クラスレベルは芝ダートどちらでも上位ランクに評価できる。

1000m通過は推定1:01.8と馬場を考えると平均的な流れで、中盤手前で12.9-12.9とペースが落ちる区間もあったが、残り1000mラップは12.3-12.3-12.2-12.2-12.2とロングショットを決めないと上位進出は叶わない。心肺機能を試すようなラップだった。いかに一定のリズムで長く走れるか。馬の集中力と体力、そして持続力とダートA級が備えるべき資質が詰め込まれた競馬といっていい。


ダート大物の血リアルスティール

勝ったカナルビーグルは好位で流れに乗り、抜け出すという危なげない競馬を展開した。ダートA級としての資質は申し分なし。このまま順調にいけば、東京ダービーとその先がみえてくる。

父リアルスティールは昨年、フォーエバーヤングというワールドクラスを送り、評価を一変させた。ダート大物を出す種牡馬として確固たる地位を築きつつある。リアルスティールはダート未出走だったが、ちょっと一本調子な面もあり、ダートで化ける可能性を残していた。

母の父ストームキャット、母の母の父ミスタープロスペクターと米国血統にキングマンボの母ミエスクの血。ミエスクも活躍したのは欧州だが、米国産であり、アメリカで殿堂入りした名牝。母系を固めるアメリカの血が産駒を覚醒させる。

カナルビーグルの母ソブラドラインクはアルゼンチン3歳牝馬チャンピオンで、芝2000mGⅠを2勝した。兄ドゥレイクパセージは父ドゥラメンテで、芝中距離が主戦場。リアルスティールのダート適性と母の距離適性をかければ、東京ダービーの舞台である大井ダート2000mは望むところだ。

鞍上の吉村誠之助騎手は2年目の今年、早くも重賞2勝目をあげた。序盤のポジション争いでは出たなりで内から3、4頭目を頑として主張し、インに押し込められすぎないように進めた。意図を感じる騎乗ができる。

メイショウズイウンが外から押し上げ、クレーキングに外から被されるなど進路取りがタイトな場面もあったが、直線では冷静に内のスペースに切り返して末脚を伸ばした。武豊騎手やレーン騎手相手に堂々たる内容。カナルビーグルとともに一気に頂点に駆けあがってほしい。


世代上位は揺るがないクレーキング

2着クレーキングはスタートがすべて。出遅れて後方追走を余儀なくされ、1コーナーを回る映像ではこれは厳しかろうと思わせたが、メイショウズイウンが早めにレースを動かしてくれた分、追いあげ態勢をつくりやすかった。

ライバルのアシストがあったにせよ、自身も捲って上がり最速36.2を記録しており、地力をみせた。第一冠目の羽田盃覇者ナチュラルライズに敗れたカトレアSも上がり3Fは同馬と互角。世代上位という評価は揺るがない。

父ナダルのJRA産駒成績は4月27時点で芝3勝、ダート44勝という戦歴。とりわけダート中距離の勝率が高く、京都の主要距離ダート1800mは【7-5-2-8】勝率31.8%もある。決して平坦向きではなく、万能なのも心強い。

ナダルは現役時代、アーカンソーダービーを快勝し、ケンタッキーダービー有力馬に推されるも、ケガで現役を退いた。その父は名牝ゼニヤッタをブリーダーズCクラシックで破ったブレイムで、母の父プルピットと米国中距離血脈。まだ種牡馬として若く、ダート三冠常連種牡馬になるだろう。

3着メイショウズイウンは中盤入り口、12.9-12.9の区間で武豊騎手が遅いと判断し、早めに動き、3着を確保した。ダートはたとえ前が苦しくなろうとも、待っていてはチャンスは巡ってこない。好位をキープしたカナルビーグルには完敗も、クレーキングとはタイミングひとつ。伏竜Sでルクソールカフェの2着まで押し上げた脚力はダテではない。自力で動いた経験が今後につながる。

2025年ユニコーンS、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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