忘れられないナリタブライアンの参戦
1996年の高松宮記念(当時は高松宮杯)は何とも言えない雰囲気が漂っていた。そう、ナリタブライアンが参戦した年である。前走の天皇賞(春)から一気に2000m距離短縮の一戦。誰しもがどのような結果になるのか想像もできなかった。結果は勝ち馬フラワーパークから0秒8差の4着だった。
あの挑戦からすでに四半世紀以上の月日が流れた。時代の移り変わりは早いとしみじみ感じる。今週はそんな高松宮記念が開催される。今年は多くの有力馬が出走予定で大混戦模様だ。
そこで今回は、有力馬の中でも悲願のGⅠ制覇を目指すナムラクレア、昨年の優勝馬マッドクール、昨秋のスプリンターズSを制したルガルに注目。この3頭を比較し、どの馬が今回の舞台に向いているか調べていく。
ドゥラメンテ産駒はOPクラス以上で苦戦
まずは2021年1月5日から2025年3月16日までに中京競馬場の芝レースで行われた種牡馬別成績をみていく。

<中京芝コース 3頭の種牡馬別成績>
ミッキーアイル産駒(ナムラクレア)
【8-15-6-92】勝率6.6%/連対率19.0%/複勝率24.0%
Dark Angel産駒(マッドクール)
【5-1-3-15】勝率20.8%/連対率25.0%/複勝率37.5%
ドゥラメンテ産駒(ルガル)
【28-37-34-264】勝率7.7%/連対率17.9%/複勝率27.3%
集計期間:2021年1月5日~2025年3月16日
ミッキーアイル産駒は全8勝のうち3勝をナムラクレアとメイケイエールが重賞で挙げている。全体でみると勝ち星よりも2着数が倍近くあり、あと一歩の踏ん張りが効くかがポイントになりそうだ。
Dark Angel産駒は直近5年で7頭の出走しかなく、うち4勝はマッドクールが記録している。出走レースの半数以上が特別戦で、少ないサンプルながらコース適性は十分といえる。
ドゥラメンテ産駒は勝ち星では全体9位の成績。上位陣と比べると出走回数が100走以上少なく善戦している。
気になるのは勝利数の半数を未勝利戦と新馬戦で占めており、OPクラス以上では【1-4-3-38】複勝率17.4%と苦戦している点だ。GⅠでの勝負となると気になるデータではある。
中京芝1200mはナムラクレアとマッドクールにはプラス
もう少し掘り下げて、芝1200mに絞って成績をみていく。

<中京芝1200m 3頭の種牡馬別成績>
ミッキーアイル産駒(ナムラクレア)
【3-5-0-23】勝率9.7%/連対率25.8%/複勝率25.8%
Dark Angel産駒(マッドクール)
【4-0-1-5】勝率40.0%/連対率40.0%/複勝率50.0%
ドゥラメンテ産駒(ルガル)
【0-0-0-15】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%
集計期間:2021年1月5日~2025年3月16日
ミッキーアイル産駒はメイケイエールが【2-0-0-3】、ナムラクレアが【1-2-0-0】、その他の馬が【0-3-0-20】と成績の差が激しい。とはいえ今回はナムラクレアのみにスポットをあてており、過度な心配は無用だろう。
Dark Angel産駒はマッドクールが【3-0-1-1】と大半を占めており、それでいて好成績。この舞台は得意とみていい。
ドゥラメンテ産駒は13頭が出走し、全馬が馬券圏外に沈んでおり掲示板も1度しかない。昨年の高松宮記念ではルガルが1番人気で10着、シャンパンカラーも17着に敗れている。全体成績同様、強気にはなれないデータとなっている。
C.ルメール騎手が複勝率40%超え
次に3名の騎乗予定騎手が中京競馬場でどのような成績を残しているのかみていく。

<中京芝コース 3頭の騎乗予定騎手成績>
C.ルメール騎手(ナムラクレア)
【20-13-11-64】勝率18.5%/連対率30.6%/複勝率40.7%
坂井瑠星騎手(マッドクール)
【41-28-32-203】勝率13.5%/連対率22.7%/複勝率33.2%
西村淳也騎手(ルガル)
【37-30-16-200】勝率13.1%/連対率23.7%/複勝率29.3%
集計期間:2021年1月5日~2025年3月16日
ナムラクレアに騎乗予定のC.ルメール騎手は複勝率40%超えとさすがの成績。クラスの偏りもなく重賞から未勝利戦まで勝ち星を記録している。人気に比例して成績も向上しているだけに、当日1番人気に支持されるかにも注目だ。
マッドクールに騎乗予定の坂井瑠星騎手は、集計期間中の全競馬場芝レースで3番目に勝率が良いのが中京競馬場(1位は小倉競馬場18.3%、2位は新潟競馬場15.0%)。勝ち星は全体ランキングでも4位に位置しており、期待できる騎手の一人だ。
ルガルに騎乗予定の西村淳也騎手は勝ち星の全体ランキングで坂井瑠星騎手に次ぐ5位の成績。人気に関係なく好走しており、単勝回収率は177%を記録している。特に1番人気~6番人気で高い勝率となっている。
高松宮記念と同舞台での成績を比較
種牡馬成績と同じく、騎手も芝1200m成績がどうかみていく。

<中京芝1200m 3頭の騎乗予定騎手成績>
C.ルメール騎手(ナムラクレア)
【3-1-1-5】勝率30.0%/連対率40.0%/複勝率50.0%
坂井瑠星騎手(マッドクール)
【6-3-3-23】勝率17.1%/連対率25.7%/複勝率34.3%
西村淳也騎手(ルガル)
【3-1-2-27】勝率9.1%/連対率12.1%/複勝率18.2%
集計期間:2021年1月5日~2025年3月16日
C.ルメール騎手は2021年にレシステンシアと共にセントウルSを制しており、騎乗回数こそ少ないが複勝率は50.0%を記録している。
坂井瑠星騎手は昨年マッドクールとのコンビで高松宮記念を制している。本条件では全体成績でも4位の勝ち星となっており、こちらも心配無用だ。
西村淳也騎手の3勝は未勝利戦で2勝、1勝クラスで1勝。OPクラス以上では【0-0-1-9】で掲示板も2024年の小倉2歳Sの3着のみ。先の2人と比べるとどうしても見劣りしてしまう。
ナムラクレアとマッドクールの争い ルガルは産駒成績がマイナス
ここまで種牡馬と騎手の成績をみてきたが、最後に直接対決を振り返ってみたい。昨年この3頭が顔をそろえたのはGⅠの高松宮記念とスプリンターズSの2戦のみとなる。
まず、3月に行われた高松宮記念。5年連続の道悪決戦となったレースで1番人気に支持されたのはルガル、2番人気がナムラクレア。マッドクールは6番人気だった。
レースは香港馬ビクターザウィナーが逃げ、マッドクールとルガルは好位をキープ。ナムラクレアは中団からやや後方に控える展開だった。
直線に向くと各馬外へと進路をとるなか、坂井瑠星騎手騎乗のマッドクールは最内を選択。これが功を奏し、ラスト200mあたりで抜け出すと同じようなコースを通って伸びてきたナムラクレアの追撃をしのぎ切り、初重賞制覇をGⅠで成し遂げた。ルガルは10着に敗れ、レース後に骨折が判明するなど不完全燃焼の一戦となった。
秋のスプリンターズSはマッドクールが3番人気、ナムラクレアが4番人気、ルガルは9番人気で迎えた。レースは前半600mをピューロマジックが32秒1のハイペースで飛ばす展開。ルガルは早め3番手からレースを進め、マッドクールは中団待機、ナムラクレアは後方に控える形となった。
直線を向くと高松宮記念以来の休み明けとなったルガルが力強く伸びて堂々と先頭に立つと、大外から追い込んできたナムラクレアなど後続の猛追を抑え1着でゴールした。

年が明け今年の高松宮記念で激突する3頭。1着候補はナムラクレアになるだろうか。中京実績はすでに十分。また騎乗予定はこちらも安定した成績を残しているC.ルメール騎手。前走の阪神Cではマッドクールに半馬身差をつけ重賞5勝目を飾っている。今回で悲願のGⅠ制覇を果たしたい。
そこに迫るのは近2走ではナムラクレアに後れを取っているマッドクール。こちらも人馬共に重賞成績は十分。キンシャサノキセキ以来、史上2頭目の高松宮記念連覇に挑む。
ルガルはスプリンターズSとの秋春スプリントGⅠ連覇に挑むが、ドゥラメンテ産駒の中京芝コースでのOPクラス以上の成績と、1200m戦での苦戦ぶりが気になる。
ルガルは昨年のこのレースでは、故障の影響もあり能力を十分に発揮できたわけではないが、ナムラクレア、マッドクールと比べると舞台相性の面で強気には推せない。

《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
サクラローレルの馬体の美しさに魅せられて競馬の世界に惹きこまれる。他に好きな馬はホクトベガ、サイレンススズカ。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。
《関連記事》
・【高松宮記念】「香港スプリント組」「ペアポルックス」「ナムラクレア」に熱視線 ママコチャには気になるデータ
・【高松宮記念】「直近4年で2勝」勢いのある香港スプリント組 ハイレベルの3着から挑むサトノレーヴは戴冠なるか
・【高松宮記念】過去10年のレースデータ