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【ファルコンS回顧】ヤンキーバローズは距離適性に幅あり 2着モンドデラモーレらジュニアC組も今後注目

2025 3/24 11:41勝木淳
2025年ファルコンステークス、レース結果,ⒸSPAIA

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先行勢には厳しいレースラップ

3歳重賞のなかでも例年波乱が多く、難解なファルコンSは3番人気ヤンキーバローズが勝ち、2着6番人気モンドデラモーレ、3着13番人気リリーフィールドで決まった。

前走芝1200mで逃げた馬は不在。テン(最初)から突っ込んで入りそうな雰囲気はなかったものの、先行集団は固まって進み、序盤600m12.1-11.1-11.2、34.4という記録以上に前がかりになった。手薄な先行勢と馬場状態を意識し、各馬が位置をとりにいったため、ひしめき合う形になり、結果的にプレッシャーがかかった。

中盤11.6を挟み、後半は11.7-11.5-11.8、35.0。残り400~200mに急坂が待ち構える中京では、勝負所で脚を使い切るケースが多く、ラスト200mで逆転が起こる。このレースはラスト11.8。この時点で前にいた馬たちはふるいにかけられ、それでも踏ん張った2、3着馬は奮闘したといえる。

一方で、直前の古馬2勝クラスの牝馬限定戦、熱田特別では後半600m11.7-11.5-12.1なので、3歳とはいえ重賞らしくラスト200mは踏ん張った。粘る2、3着馬を差し切ったヤンキーバローズもまた最後の苦しい地点で鋭い末脚を繰り出したことになる。


「速攻系」でも味があるヤンキーバローズ

ヤンキーバローズは函館3週目芝1200mデビューのPOGでいうところの「速攻系」(早期にデビューした馬)。函館2歳S4着、京王杯2歳S3着と速攻系としては珍しく距離延長に対応すると同時に、自己条件の万両賞2着と2勝目が遠かった。4戦で上がり最速は3度。残る1回函館2歳Sも2位で、末脚に安定感がある。

母キャンディバローズはファンタジーSを勝っており、伯母ファインチョイスも函館2歳S勝ち、伯父アットウィルも函館新馬勝ち、クローバー賞勝ちを果たした。母の母アフレタータの一族はPOGファンにはお馴染みの血統だ。

速攻一族のヤンキーバローズは戦歴と内容のギャップが興味深い。速攻系はスピードが全面に出ており、3歳になり、末脚のしっかりした本格派が出現すると苦戦を強いられるが、この馬は最初から決め手をもっており溜めが効く。早期デビューながら本格派の気配も漂う。POG的には絶対指名しないといけなかった。

速攻ながら奥がありそうな走りは父エピファネイアの影響だろう。最近のエピファネイア産駒は2、3歳時の成績がよく、ちょっと早熟かもという評価が出てきたが、デアリングタクトやエフフォーリアは早熟だろうか。

確かに古馬になって勝っていないが、3歳で複数GⅠ勝利をあげれば、その後はもうGⅠぐらいしか出走できるレースはない。かなり強い相手と戦っており、勝てなかったことが早熟説を強化するとは思えない。なぜならエピファネイア自身が3歳秋から古馬になって本格化した晩成だからだ。

近年はクラシックでの完成度を競う傾向が強く、総じて早めに仕上げられる。どの産駒も早熟といえば早熟で、だからこそ晩成がひと際目立つ。

速攻系のアフレタータの牝系にエピファネイアという組み合わせは絶妙な中和を生んだようで、ヤンキーバローズもこれで終わりとは思えない。堅実な末脚が武器であり、マイルへの対応力も感じる。距離延長に対応できないのが速攻系の悲しいところだが、この馬は距離適性に幅がある。勝ち時計1:21.0は良馬場としては速くないが、かえって評価できる。


今後もポイントになるジュニアC組

今回2着のモンドデラモーレは前走ジュニアC2着が優秀で、ラストは11.7-11.3-11.4。ジュニアC勝ち馬ファンダムと一緒に動いて2着は価値があった。3着モンテシートは次走2勝目をあげ、5着シンフォーエバーはサウジダービー2着、12着メルキオルは船橋のブルーバードCを制した。勝ち馬ファンダムなどまだ出走していない馬たちも注目だ。

モンドデラモーレの母ヒカルアモーレは優秀で、初仔グランデアモーレはJRA5勝グランデマーレ(3/13大井のフジノウェーブ記念で16着)の母だ。グランデアモーレの産駒はデビューした5頭すべてが勝ちあがった。白老ファームを支える繁殖牝馬だ。

3着リリーフィールドはフィリーズレビュー11着からの臨戦だった。前走は後方からの競馬になり力を出せなかったが、再度先行できた今回はしぶとさを発揮した。GⅠ、GⅡで2戦連続1.1秒差の負けと気持ちが切れてもおかしくなく、精神的な強さを感じる。

初年度産駒のモズアスコットは本馬を含めファウストラーゼンら活躍馬を調べると、フジキセキ、アグネスタキオン、スペシャルウィークとサンデーサイレンス系のパワータイプとの相性がいい。今後の参考にしよう。

1番人気パンジャタワーは4着。最後は差を詰めてきたものの、あと一歩足りなかった。序盤のポジション争いで揉まれる形になり消耗してしまったか、ヤンキーバローズに伸び負けてしまった。

2番人気シルバーレインは6着。上位好走馬たちはみんな内を立ち回っており、後方から勝負所で外へ持ち出し、進路をつくるのに手間取った。もう少し前につけられれば、変わってくるだろう。

2025年ファルコンS、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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