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【フラワーC回顧】レーゼドラマが見せつけた体力の違い ハナから意識は“オークス”、本番も強気な競馬に期待

2025 3/24 11:55勝木淳
2025年フラワーカップ、レース結果,ⒸSPAIA

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ゆったり流れた後半勝負

桜花賞への最終便であり、オークスへ進む中距離路線の出発地でもあるフラワーCはレーゼドラマが勝ち、2着パラディレーヌ、3着ゴーソーファーで決着した。

桜花賞へ間に合う位置にあるフラワーCは、以前にもましてマイルではなく中距離狙いの出走馬が増えた。個体差を意識する傾向のなかで、桜花賞に出したいという気持ちもありつつ、マイルへの対応力と中距離への適性を考え、早めに舵を切るようになった。

誰もが憧れる道へ進めるわけではなく、その人がもっとも輝く世界を探す。現実的な考えというか、心身ともにベストを見極める生き方は人間の世界と同じ。無理に型に押し込めるのはよくない。

中距離志向が増えたこともあり、フラワーCは近年、以前のようなハイペースが減った。マイルを目指す馬が多ければ、当然1800mとしては速いペースになる。馬は走る距離を知らないから、マイルと同じ感覚で中距離を走れば、オーバーペースになるのは無理もない。

だが、中距離型が増えたことで、みんな中盤でペースを落として息を入れ、溜めが効く走りができる。今年も序盤600m35.5、800m通過47.8と進み、1000m通過は1:00.1とようやく平均ペースといった流れになった。

さらに後半800mは12.3-12.1-11.6-11.7で、牡馬クラシックのトライアルのように早めにスパートし、勝負に出る馬もいなかった。


優秀な母シアードラマ

4コーナーまでペースアップしない展開を動かしたのが、勝ったレーゼドラマだ。

2000mでデビューし、初勝利は年明けの中京芝2000m。そこから東京芝2400mのゆりかもめ賞へ進んだ。ハナから意識はオークスにある。

ゆりかもめ賞は6着に敗れたが、オークスが行われる舞台を経験したことで心肺機能が鍛えられたか、この日は逃げるハードワーカーを残り400mで置き去りにすると、一気にスパートし、大きなリードを保って直線へ。ラストも11.7でまとめており、体力の違いを感じるような競馬だった。自ら動いて勝ちとった価値は高い。

母シアードラマは米国GⅠ3勝の名牝。9~10ハロンのGⅠを勝っており、体力自慢でもあった。米国産特有のスピードと粘りは繁殖入り後、日本で花を咲かせた。初仔サトノルーチェからレーゼドラマまで、産駒は5頭連続でJRA複数勝利をあげている。優秀な繁殖牝馬だ。

1歳上には同じキズナを父にもつルージュアベリア(日曜中山12R3着)がいるが、同馬はダート1800mで2勝と粘る競馬が得意。レーゼドラマがみせた強気な競馬はこの血に合う。

オークスも後ろがそう簡単には動いてこないから、直線入り口で先頭に立つようなら止まらないのではないか。ゆりかもめ賞での経験がいきてくる。


形を崩しても2着だったパラディレーヌ

2着パラディレーヌは展開を考えると、4コーナー12番手は絶望的な位置。スタートでわずかに遅れ、1コーナーまでに接触する場面もあり、内に押し込められ、抑えるために後方追走を余儀なくされた。

後方でも外目につけられれば動けたが、内にいては追いあげも叶わない。だが、直線だけで2着。急坂を上がってからの末脚は光る。力強さもあり、いずれ成長すれば本格派に化けそうな気配があった。

母パラダイスガーデンは短距離で活躍。2019年TVh杯では7歳ながら見事な追い込みを決め、14番人気1着。当時3年目だった横山武史騎手の存在感を高めたレースとしても知られる。ちょっと気性が難しかった母に優等生のキズナを配し、操縦性が高まった印象。それだけに今回は形を崩しており、むしろ2着は力の証だ。

3着ゴーソーファーは芝2000mからの距離短縮。サフラン賞9着できっぱり桜路線から切りかえたことで、出世の足がかりをつかんだ。

今回は終始外を回る形になり、勝負所でもかなり脚を使った。体力が消耗する形になったため、最後の最後でひと伸び欠いたが、このコースのスローに近い展開で外から差し込んでおり、脚力はみせた。

父、母ともストームキャットが入る血統で、前へ行って粘る形がおもしろそう。ゲートなど課題を克服すれば、そんな競馬もみえてくるだろう。

3番人気ジョスランは4着。エフフォーリアの全妹であり、人気を集める血統だが、現状はまだまだ幼さが残るか。

道中も最後の直線もフラつく場面があった。とはいえ、まだキャリア2戦目。新馬戦のラスト400m11.1-11.0が物語るようにスケールはある。デビューも遅く、まだまだ先が楽しみだ。


2025年フラワーC、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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