前後半3F32.7-36.0秒のハイペース
23日に中京競馬場で行われた愛知杯(GⅢ・芝1400m)はワイドラトゥールが勝利。接戦の2着争いはシングザットソングが制し、1番人気カピリナは3着だった。
3月中京の短距離戦として装いを新たにした愛知杯。舞台となる中京芝1400mはスタートから300mほどが緩やかな上り坂だが、そこから下りに転じ、直線の急坂を迎えるまで600m以上も下り続ける。
先行争いが長引くと道中でペースを落とすのは難しく、とてつもない激流になることがある。今年の愛知杯は、そんなコースを象徴するような競馬になった。
1200mのオーシャンSで逃げてきたテイエムスパーダがここでも強気に主張。ハナを取り切ったはいいが、リバーラとベガリスがぴったりと追走してきて息を入れられない。
レースラップは12.0-10.1-10.6-11.5-11.9-12.1-12.0(前後半3F32.7-36.0秒)の超ハイペース。テイエムスパーダは直線を待たずして一杯になり、かわって先頭に立ったベガリスも残り300mあたりで脚が上がっていた。
後方勢が有利な展開のなか、じっと脚を溜めて勝機を伺っていたのがワイドラトゥールだ。
スタートで出遅れるも、北村友一騎手いわく「レース前から『速くなりそうだな』という感じはしていた」とのことで、ポジションを上げず、後方3~4番手で進めた。結果から言えばこの判断が大正解。直線は馬場の良い大外に持ち出し、バテた先行勢を一気に飲み込んだ。
これがJRAでの産駒初重賞制覇となった父カリフォルニアクロームは、米国二冠に加えドバイWCも制するなど、ダートを主戦場とした馬。また、母ワイドサファイアの仔には20年のJpnⅠ・かしわ記念を勝ったワイドファラオがいる。血統だけ見ればダートでも、と思わせる。
芝の「キレ味比べ」では見劣る反面、「ペースを維持する資質」に長けるのがダート血統の強み。ワイドラトゥール自身も今回のような展開は大好物だった。
このレースを選択した陣営の采配と、9戦連続の騎乗で絆を深めた北村友一騎手の騎乗がピタリとハマった、実に鮮やかな勝利であった。